#3観測される存在
※理解できない相手と、離れられない話です。
昼食の後、ハルモンの部屋に戻った。
「お腹いっぱいになったら眠い。昼寝しよっかな」
欠伸しながらハルモンが言う。
「ライ君も一緒に寝る?」
「……いや、いい」
「そう?」
「……寝ている間、家の中を見てもいいか」
「もちろん。……あ、でも父さんの部屋は仕事道具があって危ないかも。そこ以外ならいいよ」
許可を得て、部屋を出る。
二階はハルモンの父親の部屋だそうなので、そのまま一階へ降りる。
手近な扉を順に開ける。
応接室。客間。食堂。厨房。
食堂と厨房では、アグネスともう一人の女中が片付けをしていた。
アグネスから声をかけられる。
「お客様。もしよろしければ、洗濯物をお預かりしますよ」
「……構わないのか」
「ええ」
「……後で持ってくる」
「かしこまりました」
次は、外に出てみることにした。
玄関から出て、家の裏に回る。
庭に温室があり、その手前に広い空間があった。
「……ここなら振れるな」
一度、ハルモンの部屋に戻った。
部屋に入ると、ハルモンはすでに寝息を立てていた。
音を立てないように、荷物の中から洗濯物を取り出す。
……ふと思いつき、ハルモンのものもついでに鞄の中から回収した。
部屋の隅に立てておいた剣を持つ。
部屋を出て一階へ降り、アグネスに洗濯物を預け、再び外へ。
庭の温室の前に立ち、剣を抜く。
一振り。
風を裂く音。
――もう一度。
踏み込み。
振り抜く。
足が止まらない。
呼吸を合わせる。
吸う。
振る。
吐く。
一定の間隔で、刃が空を切る。
地面に、同じ軌跡が刻まれていく。
ぶれない。
音だけが、残る。
乾いた風切り音が、繰り返される。
ふと、視線を感じる。
(……誰か来たな)
そのまま続ける。
汗を流す。
井戸で水を汲み、頭から被る。
気配に振り向くと、ハルモンがこちらに歩いてきていた。
後ろには、アグネスともう一人、女中が控えている。
ハルモンの背後で、なにやら二人の視線が交差していた。
「ライ君の動きって、無駄がなくてとても安定してるね。興味深かったよ」
「そうか」
「……お使いになります?」
アグネスに布を手渡される。
「……悪い」
受け取って、頭と体を拭いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。
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