#10曖昧な距離
※理解できない相手と、離れられない話です。
有り合わせのもので軽く朝食を済ませると、俺とハルモンは次の街へ出発した。
歩き出すと、二人は自然と横に並ぶ。
「昨日の雨、すごかったね」
「ああ」
「でも、思ったより寒くならなくてよかった」
ハルモンはこちらを向いて笑った。
「ライ君がいるから、野宿も平気になったかも」
俺は即答できず、少し間を置き、
「……慣れただけだ」
前を向いたまま答えた。
しばらく、無言で歩く。
「……無理はするな」
俺がそう言うと、ハルモンは一瞬きょとんとしてから、
「うん」
と頷いた。
会話が終わっても、二人は離れない。
肩が触れるか触れないかの距離で、横に並んで歩き続けた。
しばらくして、またハルモンが口を開いた。
「ねぇ、王都に着いたら、まずうちに来るでしょ?」
俺は、ハルモンの顔を見た。
ハルモンは、そのまま前を見ながら話し続ける。
「僕の家、客間空いてるよ」
少しだけ間を置いてから、
「……まあ、使わないと思うけど」
ハルモンはそう言うと、こちらを見て笑顔になる。
「王都にも市場があるんだ。君と行ったら早そうだなー」
俺は、すぐには答えられなかった。
でも、ハルモンの話を否定する必要もないと思った。
「ああ」
口から出た声が、思っていたよりも小さかった。
次の街に到着した俺とハルモンは、食事を済ませ、宿を取った。
ベッドで横になって休んでいると、いつの間にか眠っていたようだ。
目を覚ますと、窓から差し込む光の色が変わっている。
ハルモンの姿を探すと、机に向かい、紙の束に何かを書いていた。
俺が起きたことに気づき、顔を上げてにこりと微笑む。
「よく寝てたね。……お腹空いてない?そろそろ食べに行こう」
そう言って、紙の上にペンを置くと立ち上がる。
俺もベッドから降りて、一緒に部屋から出た。
食事を終えて部屋に戻る。
もう、外は暗くなってきていた。
ランプの明かりを灯し、二人でベッドに横になる。
少し沈黙の後、ハルモンが口を開く。
「王都、久しぶり?」
「……ああ」
少し間を置き、
「前に、一度来たことがある」
と言った。
「へぇ。誰かと?」
「……まあな」
俺がそう言うと、ハルモンはわずかに視線を落として、
「そっか」
とだけ言った。
少しの沈黙の後、ハルモンが寝返りを打ってこちらに顔を向ける。
「その人も、君と一緒に歩いたの?」
「……ああ」
「楽しかった?」
長い沈黙の後、
「……さあな」
とだけ返した。
そのまま寝ることにしたのだが、俺はハルモンがいつもより静かで、少しだけ距離を詰めてこないことに気づいてしまった。
そのことがなんとなく気に掛かり、その夜は落ち着かず、なかなか寝付けなかった。
隣にいるはずなのに、どこか遠い気がした。
俺は、一瞬だけ手を動かしかけたが、すぐに、枕の上で握り直した。
目を覚ますと、もう部屋の中は明るくなっていた。
ハルモンの姿を探すと、窓際で紙をめくっていた。
ハルモンは顔を上げると、
「おはよう。よく寝てたね」
と言った。
俺は、昨夜の自分を思い出し、言葉に詰まってしまった。
だが、ハルモンは何も言わない。
手元に視線を戻すと、少ししてまた紙をめくる。
俺は少しほっとすると、ベッドから降りて支度することにした。
その後、食事を済ませて荷物をまとめていると。
「王都、もうすぐだね」
ハルモンは、そう軽く言った。
俺は少しの間を置き、
「……ああ」
とだけ言った。
その後、宿を出た二人は王都へ向かって歩き出す。
しばらく歩くと、遠くに城壁が見えてきた。
だんだんと周りに人が増え、音が増え、賑やかになる。
俺は、無意識にハルモンの近くへ寄っていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。
次回からは王都での話になりますが、明日は一旦、本編の補足となる番外編(ライ過去)をアップする予定です。
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