#6いない距離
※理解できない相手と、離れられない話です。
ハルモンの足音が消えると、部屋の中は静まり返った。
近くに人の気配がないのは、久しぶりだ。
ベッドに、そのまま仰向けになる。
天井を見上げても、特に考えることはない。
——痛い。
意識を逸らすと、かえってはっきりする。
手がずきりと疼いて、鼓動に合わせて主張してくる。
手の中に心臓があるみたいだった。
体勢を変える。
少し楽になるかと思ったが、そうでもない。
結局、動かないのが一番ましだと分かる。
じっとしていると、今度は時間がやけに長く感じられる。
俺は無言のまま、ただハルモンの帰りを待った。
部屋の外から聞こえてきた足音で、俺は目を開けた。
コツ、コツ、と近づいてくる。
体を起こして扉の方を見ると、ドアノブが回り、扉が開いた。
「お待たせー。傷どう?」
ハルモンは部屋に入ると、持っていた荷物を机に置き、外套を脱いだ。
「……変わらずだ」
「どれどれ。ちょっと見せてね」
ハルモンは傷口を確認すると、瓶から軟膏を掬って傷口に塗り込む。
それだけでなんとなく、痛みが和らいだ気がした。
ハルモンは傷口に清潔な布を当てると、その上から包帯を丁寧に巻いてくれた。
「……これでよし。寝る前にまた塗り直すね。……お腹空いてない?そろそろ食べよう」
そう言われてみると、確かに空腹を感じた。
食事をするため、俺とハルモンは部屋を出た。
食堂に入ると、煮込みの匂いが鼻をついた。
すでに何組か客がいて、皆黙々と食事をしている。
ハルモンは空いている席を見つけると、迷いなく腰を下ろした。
席につくと、店の女将が無言で器を置いていく。
湯気の立つシチューと、切り分けられたパン。
俺はそれを見て、内心ほっとした。
——これなら、無理に手を使わずに済む。
ハルモンは、切り分けられたパンを、食べやすいよう一口台の大きさにちぎり、シチューに浸してくれた。
スプーンを、怪我をしてない利き手側の、取りやすいところに置いてくれる。
俺がスプーンでパンを食べると、ハルモンは何も言わずに、次の一口を用意した。
俺は一瞬だけ迷い、そのまま受け取った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。
……ところで、みなさんはライ君派?それともハルモン派でしょうか?
作者は今のところ、ハルモン派が多いんじゃないかと予想しているのですが……。
よければ、コメントで教えてくれたら嬉しいです!




