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#5触れる距離

※理解できない相手と、離れられない話です。


今日も、歩きながらパンを食べるつもりだった。


パンを取り出して割ろうとしたところを、ハルモンに止められる。


「実は、今日は良いものがあるよ」


そう言って、鞄から何かを取り出した。


「それは……肉か?」


「そう! 塩漬けのやつ。昨日お客さんからお礼でもらったんだ。炙ってパンに挟んだら美味しそうだよ」








肉を焼くのに、早めに休むことにした。


乾燥した木の枝を集めてきて、火種を入れて焚き火にする。


ハルモンの大きな鞄からは、ナイフやら金属製の串やら色々出てきた。


「……一人で王都と街を行き来していた時は、よく料理していたのか?」


「よく……ではないな。たまにね。それに、この道具は薬作る時にも使ってるやつだよ。ついでついで」


ハルモンが焚き火に枝をくべてくれているので、俺はナイフで肉を切ろうとしたのだが。


「あ……」


力加減を間違えて、自分の手を切った。


「えっ、ライ君大丈夫!?」


焚き火を見ていたハルモンが、すぐに駆けつけて傷を覗き込む。


「少しだから平気だ」


「けっこうザックリいってるよそれ。ちょっと待ってね」


ハルモンは傷口にワインをかけ、俺の手をギュッと抑えて止血する。


少しすると、出血が収まってきた。


ハルモンは鞄から薬瓶を取り出し、傷口に軟膏を塗りつけていく。


「……とりあえずこれで大丈夫かな。これ、切り傷によく効くやつだからすぐ良くなるよ」


「すまん。できると思ったんだが」


「いいって。……ライ君って戦いでは強いのに、不器用なんだね」


その後、ハルモンは慣れた手つきで肉を切り、串に刺すと焚き木で炙って、焼けたものをパンに挟んで渡してくれた。


硬いパンは肉から染みた油で、昨日よりずっと食べやすくなった。


水筒の水を飲むと、口の中に少しだけ酸味が広がる。


「……うん! これはおいしいね。……ライ君、もう一個食べる?」




食事にすっかり満足した俺とハルモンは、少しの休憩の後、使った道具を片付け、次の街を目指してまた歩き始めた。








街に着いた俺とハルモンは、まずは宿を確保した。


さっきの怪我は、すぐに手当てしてもらったものの、傷口が深く、俺は片手が使えない状態となっていた。


「そのままだと不便だし、傷口を覆えるものがあった方がいいよね。僕、買い物に行ってくるよ。ライ君は休憩してて」


ハルモンはそう言うと、扉を開けて部屋を出ていった。


扉が閉まる音を聞きながら、俺はベッドに腰を下ろす。


傷口がずきりと疼いた。




















ここまで読んでいただきありがとうございます。

この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。

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