表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

消えた少女と歪んだ沈黙

朝の学園は、いつもと変わらない顔をしていた。


けれど、その“変わらなさ”が逆に不自然だった。


(……嫌な感じだ)


私はカテリーナとして教室にいる。


この姿は変身魔法で作った偽装。


モルガン・ユ・ユースフォードであることは誰にも知られていない。



「レン・バートル?」


その名前を出した瞬間、空気がわずかに止まる。


教師は資料を一度見下ろし、淡々と口を開いた。


「昨夜から行方不明だ」


「現在は失踪扱いだ。異常性が確認され次第、正式な調査案件に移行する」


まだ「行方不明」としか扱われておらず、失踪か事件かも含めて何も確定していない状態だった。


教室の空気はそのまま戻る。


誰も大げさに騒がない。


それが逆に、引っかかった。



教室を出る。


廊下は静かだった。


掲示板には小さく一文だけ貼られている。


「行方不明者:レン・バートル」


それだけだ。


(ただの行方不明、か)


「随分と気にしているようですわね」


冷たい声。


ヴェルサイユ・コーネリアが壁にもたれていた。


「ただの行方不明にしては、真剣ですこと」


わざとらしい笑み。


「お友達想いですのね」


(軽い)


本気で心配しているわけではない。


ただ面白がっているだけだ。


「関係ない」


そう返すと、ヴェルサイユは肩をすくめて去っていく。



その後も学園は変わらない。


授業、訓練、日常。


レン・バートルという存在だけが、少しずつ日常から抜け落ちていくようだった。



夜。


家の窓から外を見る。


静かな学園。


何も変わらない灯り。


「王女様」


背後から声。


ベルが立っていた。


普段はメイドとして仕えているが、王宮直属の護衛・監視役でもある存在だ。


「本件は学園規定に従い、通常の失踪案件として処理されています」


「現時点では事件として断定されていません」


(まだ確定していない)


事故か、失踪か、外的要因か。


どれも決められていない。


だから動けない。


窓を開ける。


冷たい風が入る。


(レン)


あの距離感。


あのまっすぐさ。


“消えていい存在”には思えなかった。


胸の奥に、説明のつかない違和感が残る。


(なぜ、何も進まない)


(ただ時間だけが過ぎている)



窓を閉める。


静かな夜が戻る。


カテリーナとしての生活は続く。


だがその裏で。


モルガンとしての意識が、初めて外側へ向いた。


(レン・バートル)


その名前を心の中で繰り返す。


(取り戻す)


まだ理由は整理できていない。


それでも、その結論だけは動かない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ