大阪は、アメリカ海兵隊の協力で踏みとどまった
いずもへ戻った高橋総理は最新の状況報告を受けていた。
突破された場所は、大阪環状線と阪神高速3号線が交差する場所近くの高架下パーキングで起こったらしい。
封鎖済みのパーキングから車両を移動させる、させないで反社グループと揉め、一部の者が暴れだしたところへゾンビ集団が集まってきて、無謀にもグループ内の喧嘩自慢の数人が素手や鉄パイプでゾンビ集団にも向かっていったが、あっけなくその集団の一部になったらしい。
「馬鹿じゃないの?」
思わずゾーイが口走った。
総理も同じ感想を漏らした。
「ホンマかいな……って感じやね」
「そんな奴は映画やドラマの中にしか居ないと思っていたが、実際にも居たらしい」
俺も呆れた。
その駐車場から漏れ出したゾンビは、その先の大きな交差点を封鎖していた人員を背後から襲いだしてパニックになり、周辺の阻止戦は崩壊していったらしい。
「それで、初期の阻止線は放棄。現在は43号線まで後退し、その高架を利用した阻止戦の構築と域内の避難に全力をあげているところです」
「状況はわかりました」
「それと、アメリカ海兵隊の協力を取り付けてきました」
「指揮権はこちらに頂いておりますで、ゾンビの対処は海兵隊に任せて、自衛隊は避難民の誘導に全力で当たってくださいな」
「この状況では野党も反対のしようがありませんな」
「もっともどれだけの野党が生き残っ……」
「官房長官!今のは聞かなかった事にします!」
「し、失礼しました」
佐藤俊夫は話題を切り替えた。
「総理、梅田から武装したサラリーマンや主婦たちが引っ張って行った群れは結局どうなりました?」
「あれは、十三大橋の検問が間に合っていなかったため、天神橋筋の長柄橋まで引き連れて行って河川敷の公園まで誘導し、佐藤さんの言った通りに川へ流し込んだわ」
「川岸まで借り上げたプレジャーボートを近づけて、あの…なんでしたっけ…マイケルジャクソンのアレを鳴らしてましてね」
「どれくらいの群れでした?」
「そうですね、推定ですが、一万強といったところです」
幕僚長が説明してくれた。
「その一万強を川へ落とした後は、しばらく街中のゾンビは少なかったのではないですか?」
「それはどういう事でしょう?」
「初期に人を追いかけて来た集団とを第一波とすると、閉鎖できなかった建物や地下へ広がっていたゾンビが街中へ溢れてくるのが第二波なんです」
「殲滅するには、街中にいるゾンビをおびき出して纏めて殲滅しても、しばらくするとまた彷徨い出してくるんです」
「私たち家族が新橋の雑居ビルから浜離宮まで市街地を無事に抜けられた理由ですね」
「まあ、少数だったのも大きいですけどね、あはは」
「ゾンビ達が無限湧きしてくるわけでは無いと?」
「そうですね、やつらがスマホで連携を取りながら襲ってくるとは思えませんので」
「つまり、騒ぎを起こして引き付けられるゾンビは見える範囲だけと言う事?」
「まあ、見える範囲と聞こえる範囲で反応できたゾンビってところですかね」
「実際のところは判りませんが、経験上そのように感じましたって話です」
「その情報は大阪だけではなく、東京でも使えるかも知れませんね!」
「細かい作戦は専門家にお任せいたします、なにぶん素人の民間人なので。えへへ」
この指揮所にいる誰も佐藤俊夫が素人の民間人だとは思っていなかった。
「ふ~ん、どこに居ても、幾つになっててもソルはソルだった~!」
ゾーイが嬉しそうにそう呟いた。
「佐藤さんはいつもこんな感じだったの?」
「そう聞いてます、当時の軍上層部のだれも気付かない方法を何気なくボソッと呟いて、それで作戦が立てられて、それが成功して、復興が早まったって」
「ゾーイ、それは言い過ぎってもんだよ、ぐふふ」
(やはり鼻の穴は広がっている)
43号線に沿って防衛線の構築と並行して、続々と海兵隊が投入されて群れの先頭の足止めで時間を稼ぎつつ数を削っていった。
日が暮れる頃にはなんとか防衛線が出来上がり、夜は視界確保の問題もあって危険と判断し、海兵隊も一時下がって作戦は休止、夜明けを待って再開となった。
「アメリカ軍には助けられたわね」
「人手不足のところ、助かりましたな」
「現在のゾンビの数はどれくらいを見積もってるの?」
「推定ですが、およそ十万程度かと思われます」
「多いのか少ないのか判らないわ」
「淀川に落とした作戦をあと十回実行すれば解放できるって事?」
「そう上手くは行かないですね、毎回一万程度が集まるとは考えにくいですから」
「そうね、甘い見通しを持っちゃダメね」
「あの~、笑って聞き流して頂いても構わないのですが......」
「なになに?何でも聞くわよ」
「え~っと、1996年のハワイでは使えなかったのですが、2026年の今なら使えそうなモノがあるんです......」
「それは?」
「それはですね......」
「早く言いなさい!」
「はひぃ!それは、ドローンを使うんですっ!」
佐藤俊夫の素人作戦は、封鎖範囲内で徘徊しているゾンビを騒音で引き付けて育て、集団が大きくなったところを纏めて殲滅するのが基本であるとの事。
ハワイではその役目をバイクだったりピックアップだったりした。
しかし、現代ではドローンという人的被害を考慮せずに囮としてつかえるモノがあったりする。
ソルが当初考えていたのはドローンで空から監視と道案内でゾンビに囲まれない道順でゾンビ集団を引き連れて川に落とす事を考えていたが、いっそドローンを手の届かない空中から音源を吊り下げて鳴らせば何度でも繰り返し使えるのでは?と進化していったのだった。
大量に集まったゾンビの処分方法は、東京の人工島を解放した際に実証済みだった。
橋の中央にコンテナを斜めに置き、欄干を取り除いておけば、ゾンビはそのまま川へダイブしていく、というものだった。
「ドローンですか!それはまた......」
「人手不足の我が国にピッタリで、試す価値はありそうに思えてくる作戦ね」
「ま、これも素人考えなので専門家で検討してみてください」
この作戦は、幕僚監部にて詳細が詰められて実行に移されることとなった。
「状況は一旦落ち着きを見せていますので、交代で食事をとってくださいね」
「我々も食事にしましょう。ゾーイさんが日本に向かって出発した理由からでしたね!その続きも聞きたいし、私は何と言っても日付変更線の謎の解明をしなくては!」
「それは私も米軍を代表して当然混ぜて頂きますよ!ふふふ」
ゾーイの事情説明の続きが士官室で食事をとりながら始まった。
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次回も、生き残れたらまたお会いしましょう




