のんびりハワイアンのゾーイは、日本の時間の速さに付いて行けるのか
翌朝、早くから目を覚ましたゾーイは溜まった洗濯物を抱えて基地内をウロウロしていた。
「グッモーニン!」
「あのぉ、どこか洗濯できるところありませんか?」
「おはようございます、ここの宿舎の洗濯機使ってもらって構いませんよ、こちらです」
「ありがとう、なんせすぐに溜まっちゃうんで、あはは」
「洗濯機に放り込んだらシャワーなんかどうですか?」
「シャ、シャワーですか!それはぜひ!」
シャワーと聞いてゾーイは飛び上がって喜び、すぐにヨットに引き返して着替えを持って持ってきた。
「シャワーは逃げませんよ」
「温かいお湯は久しぶりなんで嬉しいです!」
「ここです、存分に楽しんでくださいね」
「ありがとうございます」
そこへ、ソルも起きてきて、コーヒーを飲みに食堂に入ってきた。
「おはようございます、早いですね隊長」
「もう習慣ですね。さっきゾーイさんは洗濯とシャワーに駆け込んでいきましたよ」
「いやあ、ヨット乗りならそうなっちゃいますよ、あはは」
「ゾーイさんのヨット拝見しましたが、電子機器が古いGPSくらいしか積んでないんですね」
「まあそうでしょうね、1996年に世界的にゾンビ騒動が始まって、電子機器の製造どころか、燃料の確保にも一苦労する世界に戻ってしまいましたからね」
「報告書では読みましたが、そのあたりで文明が止まったままということでしょうか?」
「どうでしょうか、それよりも後退してるかもしれませんね」
「私もハワイを出る時にできる限りのデータを残してきたんですが、それを生かせるインフラがね」
「唯一化石燃料によらない地熱発電所が確保できたのは良かったですが」
「限定された地域だけなら復興も早かったんですが、世界規模で発生したので、太平洋上に取り残されたアメリカ軍の空母や艦艇、クルーズ船や貨物船、タンカーなども集まってきていました」
「南の島々は早くからロックダウンしてて、入港できなかったそうです」
「それでもハワイまでの燃料が残ってた船だけですけどね」
「いったい世界人口はどこまで減ったのかはわかりません」
「大変な世界だったんですね」
「ハワイは人口密集地が少なかったのも幸いでした」
「ゾーイの家族には大変お世話になり、彼らが居なければ俺も戻ってこれたかは判りませんでしたね」
「そんな世界にさせるわけにはいかないと思ってます」
「まったく同感です」
「今のところ、自衛隊と高橋総理が大阪と東京でなんとか抑え込んでますので、このまま順調に行けばいいですね」
「他国の状況どうなんでしょう?」
「それがまったく情報が入ってこないんです」
「ほかの国にまで広がってないことを祈るばかりですね」
そこへスッキリとしたゾーイが乾燥機にかけた洗濯物を抱えて現れた。
「お、見違えるほどの美人が登場した!どこのレディかな?ははは」
「もっと言ってくれても良いのよ、うふふ」
「今、ゾーイが出港したころのハワイの状況は、どうだったんだろうって話をしてたところだ」
「で、どうなんだ?俺が残してきたあれやこれやは役に立ったのか?」
「役に立つどころか、あれが無かったらハワイはパンクしてたかもって感じかな」
「ソルが日本に旅立った後、太平洋上からあらゆる船が集まってきたの」
「確かに人は増えたわ、でもどうしたら良いのか判らない人ばかりだったから、ソルの残してくれた参考書?手引書?があったから各島への人材の振り分けが上手くいって復興のスピードが早まったのよ!」
「みんな日本の技術はすごい!20年は先行ってるって」
「今なら言えるけど、2026年と繋がってたから、残してきたのはいろんな分野の技術書を写した物だったんだよ」
「あの場で2026年から来ましたって言ったら、間違いなく撃たれるか精神科の病院に閉じ込められる未来しか見えなかったしね、あはは」
そこへキャスリン中佐も現れた。
「モーニン、もう皆さんお揃いだったんですね」
「横須賀から連絡が来て、詳しい話を司令部で聞きたいって話が進んで、これからUS-2で厚木まで飛んでもらうことになったわ」
「え、私のヨットは?」
「それは安心して!我がUSSボイジャーにも経験豊富なヨッティいてね、横須賀まで無事に回航してくれるわ」
「見られて困るものや貴重品、身の回りの物だけは持って行ってね」
「はい、すぐに纏めます」
「US-2の準備はすでに完了しています」
「俺はバッグ一つだからすぐに行けるよ」
「え、のんびりしてたの私だけ?」
ゾーイは慌てて飛び出していった。
「あはは、慌てると転ぶぞ~」
すぐに大きなダッフルバッグを肩にかけて戻ってきた。
閉まりきってなかったジッパーから着替えが覗いていたのは気づかない振りをしておいた。
基地のすべりから入水し、湾内の所定の位置に着くとエンジンが唸りを上げ始めた。
わずか三百弱でメートルほどで水面から離れた。
「こんなに短い距離で浮かぶのね」
「厚木から乗ったときは普通の滑走路だったから気が付かなかったけど」
三時間後、厚木基地に到着し、そこからヘリで横須賀まで移動し、海軍司令部の作戦室に案内された。
「この辺りはとても賑わってるのね」
「ハワイの時と違って、ゾンビは大阪と東京の一部で抑え込んでるからね」
「そっかぁ、ハワイでは……」
「事前の情報と対応手順を知っていたのが功を奏しました」
「すべて佐藤さんのおかげです」
「佐藤さんが現れなかったら、日本もハワイと同じ道を辿ったでしょう」
「こっちでもソルが大活躍だったんだ~」
「父さん、いつも言ってるよ!ソルが居なかったらここまで早く復興はできなかったって」
「あはは、大袈裟だなあ、それ程でもないよ」
佐藤俊夫の鼻の穴は広がりまくっていた。
そこへ米軍総司令官と上層部数名。日本側からは、なんと高橋さなえ総理も現れた。
「総理!今日本一忙しいんじゃないんですか?」
「この会談はその忙しい仕事の中でも最重要だと判断したの」
「それに5G回線は生きてるから、どこでも判断と指示はできるわ、今の時代に感謝ね」
「はあ……」
「はじめまして、ゾーイ・ファウンダースです」
「私は日本国・内閣総理大臣を任されております高橋さなえと申します」
「ようこそ日本へ。ゾーイさん、歓迎します」
「私は在日米軍総司令官のマイケル・ミラーです。階級は中将です」
「は、はい宜しくお願いします」
ゾーイは階級に驚き、完璧な敬礼をしてみせた。
「除隊した今は民間人なんですから硬くならないで結構ですよ、あはは」
「そうはいきません!礼儀として当然です」
この場に居る周りの人物は誰もが雲の上の存在であり、無職のゾーイが緊張するのも無理はなかった。
「まあまあ、それではお話を聞かせて頂きましょうか」
ソル(佐藤俊夫)がハワイを出発した後の十五年間で、ハワイがどこまで復興したか。
なぜ、日本を目指して小さなヨットで出港したのか。
ゾーイの話す内容に、ソル以外の全員が聞きいっていた
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