ゾーイとソル 感動の再会!のはずが......
駆逐艦USSボイジャーが小笠原諸島父島の二見湾のブイに係留し、キャスリン艦長は戦術士官と保安主任の三名で、海自の父島基地に上陸し、佐藤俊夫を待っていた。
そこへゆっくりと高度を下げ、目一杯フラップを伸ばしたUS-2が着水し”すべり”から上陸してきた。
「ねぇ、あの速度で失速しないのね!」
「早くうちにも導入して欲しいところですね」
「そうね、たしか波高三メートルでも救難活動が出来るそうよ」
デモ動画や資料では知っていたが、実際に着水するところは初めて見たのだった。
所定の位置に停止して、佐藤俊夫とマット中佐が降りて来た。
「やぁ、キャスリン。待たせたかい?」
「マット、貴方も付いて来たの?久しぶりね」
「艦は昨日着いてましたが、先ほど上陸したところです」
「貴方が噂の佐藤俊夫さんね、私は駆逐艦USSボイジャーの艦長、キャスリン・ホーニマン中佐です」
「えぇっと、内閣参与を拝命しております佐藤俊夫と申します。良い噂だとありがたいですね」
「聞くところによると、魔法使いでシェフで勇者で忍者......他にもあったかしら。肩書が書き切れない程付いてるとか。フフフ」
「あはは、ゾーイに聞いたんですね、他には自称ミリオタってのも付けておいてください。あはは」
「佐藤さん、そんなに肩書が付いてたんですか?」
「場を和ませるために、適当に言ってただけですよ、日本の文化ですかね。あはは」
「皆さん、遠い所をお疲れ様でした。こちらへどうぞ」
海自の父島基地分遣隊長の飯島二等海佐が迎えてくれて、ブリーフィングルームと言う名の食堂へ案内してくれた。
(内閣参与?で民間人が混ざってると言葉遣いが丁寧になるのかな)
「隊長も同席して頂けますか?」
「よろしいので?」
「はい、それで佐藤さん、情報の擦り合わせと言うか、ゾーイさんとの関係性などを先に伺っておいても宜しいでしょうか?」
「そうですね、初めて会ったのは、ワイキキを脱出した後、他の島々の状況も気になりまして、モロカイ、マウイと沖からですが街の様子を観察しまして、ハワイ島へ辿り着いたのです。
コナの空港の南にあったマリーナで燃料の補給に立ち寄った所でゾーイたち家族と出会ったのです、父親はジョン、母親はキャサリンという三人家族でした。
彼らはそこに自分のフィッシングクルーザーを留めてたので、それで脱出を考えてたようです」
「それならということで一緒に行動する事になり、ヒロの港へ向かい、軍の港湾施設で必要な食料や武器を調達してたところへゾンビの集団に感づかれ、包囲されかけたところを辛くも脱出に成功し、オアフのカネオのあるマリンコーへ救援を求めて向かいまして、なんやかんやで海兵隊に協力する事になったのです」
「凄い話なのに、まるで観光客みたいな感じですね」
「いやあ、ワイキキで逃げ回ったのが凄すぎて、海の上なら自分のヨットがありましたし、2026年の最新装備で無敵状態でしたからね!あはは」
「詳しくは動画を観てください!視聴回数の為にも。えへへ」
「で、その後もずっとジョン一家とは家族同様な感じで暮らしてました」
「ゾーイの事は”孫”でしたね。こんな世界に突然放り込まれた五歳の女の子ですから、絶対に守らなきゃって感じでした」
「魔法使いだったらしいですけど、ちなみにどのような魔法を?」
「あぁ、あれですか、あの時は確か折り紙ですね、事前に何個か折っておいて、ナプキンをふぁさっと広げたタイミングで折り紙の鶴を取り出してゾーイにプレゼントしたんです。キャサリンさんには黄色の紙で折ったバラの花でしたね。何事にもタネはあるもんです!ぐひひ」
「それ、良いわね!今度私にも作ってくれないかしら?」
「そんなことくらいなら、今からでも出来ますよ!ちょっと待って......、こんな事もあろうかと......」
ソルはガサゴソと持って来たバッグからイロガミを取り出してせっせと鶴を折りだした。
(外国人にはやっぱ折り紙は効くんだよなぁ)
「はい、出来ました!どうぞ」
「まあ!嬉しい。ホント魔法使いね!」
「お安い御用ってもんです。うひひ」
(若い女性(六十歳の初老の男にとっては)に喜んで貰えて鼻の下も伸び始めている佐藤俊夫だった)
そこへ、通信室からヨットが湾内に入って来たとの連絡が届いた。
「それではそろそろ出迎えに行きましょうか」
「あ、たぶんですけど、エンジンが付いてないような気が......」
「ん?なぜ?港の出入りには欠かせないだろう?」
「話せば長くなりますが、燃料の問題がありまして、エンジンが動かせない可能性があるかもって事です」
「至急確認して、必要ならタグボートを出して貰いましょう」
「なんなら作業艇みたいなボートでも出して、ロープで曳いて接岸させても良いかも知れません」
「ゾーイもどうやって桟橋に着けるつもりだったんだろうか謎だ」
「連絡が取れました、それがその......、バスボート用のトローリングモーターを積んでるそうです。湾内に入ったら極低速になりますが、桟橋には着けられるそうです」
「ふぅ、なら良かった~」
「あら、おじいちゃんは心配性なのね。フフフ」
「二見港の小型船用の岸壁に誘導します」
「そう?それじゃあ案内してもらえる?」
自衛隊の車両ではなく、ところどころ潮風で錆が浮いているハイエースに乗って岸壁に向かった。
「おーい!こっちだ~」
ゆっくりとそのヨットは近づいて来た。
海自の隊員に舫いを取ってもらい、出してあったフェンダーを降ろして接岸に成功した。
「なんかあっさりと接岸したな。心配して損した気分だ。はは」
幸い満潮近くで岸壁とデッキの高低差が少なく、容易に乗り降りできそうだ。
「よ~っと!久しぶりの陸だ~」
「ウェルカム トゥ ジャパン!ようこそ日本へ」
「一応これがパスポートね」
「はい、これはお預かりしてスタンプを押してからお返ししますね」
「ハーイ、私がキャスリンよ、駆逐艦USSボイジャーの艦長をしているわ。あなたがゾーイで間違いない?」
「はい、私がゾーイ・ファウンダース、無職です」
「本当に五歳だったゾーイなのか?」
「え~っと、あなたは......ひょっとして......ソルなの?」
「そうだけど、えっ?」
「えっ?」
「「......」」
「十五年ぶりにしては、ずい分苦労したみたいね......」
「無線ではニ十歳だと聞いてたんだが......」
「そうよ、二十歳になってハワイを飛び出してきちゃった」
そこへキャスリン中佐が割って入った。
「......一旦ブリーフィングルームへ戻りましょうか」
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次回も、生き残れたらまたお会いしましょう




