在日米軍は佐藤俊夫を日本政府へ押し付けた
出入り業者の三人は、プロボックスに乗り、都内に向かった。
「では、このまま官邸に向かいます」
「護衛の件も、そのまま報告で?」
「それは、まあ......防衛機密扱いなのですが。ははは」
「そっと、耳打ちだけで良いでしょう」
「今の総理と防衛大臣で良かったです」
時間は深夜になっていたが、営業車のプロボックスは違和感なく官邸の裏の駐車場に車を停めた。
裏口で待っていた秘書官の案内で総理執務室に入った。
そこには防衛大臣と官房長官も待っていた。
遅れてラフな服装で総理も入ってきた。
「こんな格好でごめんなさいね」
「お風呂入って部屋で法案の資料を読み込んでたのよ」
「で、緊急の報告なんですって?」
「はい、米軍からの日米防衛協力に関する要請ですね」
一等陸佐は分厚い資料一式を手渡した。
「概要は......」
総理が手でそれを止めた。
「全部読み込んでから聞くわ」
「はっ」
総理は驚くべき速さでページを捲っていく。
官房長官と防衛大臣は、動画に見入っている。
一時間が過ぎ、総理が顔を上げた。
「この内容が私のところへ来るってことは、そういうことなのね?」
「我々はこれを事実として動きます。命令があればですが」
「大臣と官房長官の意見は?動画観たんでしょ?」
「はあ、個人の感想ですと、なんとも......」
「早急に、発生た場合の対処法を周知徹底させたいと考えます」
「そうね、警察、消防関係にも対処法は流しておいた方がいいわね」
「官房長官、それとなく流しておいてね。とは言っても、ゾンビはねえ......そこはぼかして宜しく」
「それと、この過去からとか、別の世界やらの公開は無理です」
「そうね、国民の理解は得られないでしょうね」
「入院を勧められそう。あはは」
「その辺りだけは内密にお願いできる?」
「お任せを」
「そう、よろしくね」
「それと......その佐藤さんと、ご家族の警護とかは確実に大丈夫なんでしょ?」
「その為の部隊は保持しております」
「頼もしいわね」
「なら......一度お会いして、直接話してみたいわね」
「日中は無理です!」
「深夜ならセッティングできそう?今日みたいに」
「何とかしましょう!」
(総理は、過去へ行って戻って来た人物と話してみたかっただけである)
(総理にも中学生の罹りそうな病気の素養が......)
営業車のプロボックスは深夜の官邸を出て、習志野へ向かった。
「しかし総理。聞きしに勝るタフネスですね」
「明日は市ヶ谷へ報告だが、俺だけで行ってくる」
「お前たちは準備を整えていてくれ」
「一週間もあればいいだろう」
「私は、横田と横須賀を回って、押収品の引き取りと、保管場所は新橋の営業所で?」
「ああ、そこでいい」
「じゃあ、こっちはメンバーの選定だな、人数は?」
「二名ずつの三班、六名で三交代、二十四時間体勢でいいだろう」
「マジなんですかね?個人的には......」
「我々は言われた事を淡々と熟すだけだな」
「剣が考えちゃあお終いだ」
「......そうだな」
習志野駐屯地のゲートをくぐり、本部棟の所定の駐車スペースに停める。
一等陸佐は、レクサスLSに。
課長は、60プリウス。
主任は、古いスバル・インプレッサ WRX STi。
それぞれの車に乗り換え、去っていった。
その頃、佐藤俊夫はあまりにも退屈過ぎた。
なんとかノートPCだけは返してもらい、またまた、某小説サイトで読みかけの異世界小説の続きを読みだした。
更新されている分は、全部読み合わる。
動画の編集は......ネタが切れていた。
寝るか。
ここは、留置場とかではなく、普通の宿舎のようだった。
ただし、ドアの向こうにはフル装備の兵士がふたり付いている。
「はあ、そろそろ出たいんですけど!」
返事は無かった。
SNSなどのネット上では......
『ハワイを出て日本へ向かったまま、動画がアップされないんだけど...』
『早く日本編始まらないかなぁ』
『本当にヨットで帰って来るんなら、そろそろ着いてる頃じゃない?』
『これから風景やら撮影したりの下準備があるんじゃない?』
『それをベースにAIが1996年風に直すって事?』
『それならまだ先っぽくね?』
『そいえばモデルになってるっていってたゾーイ?家族で日本旅行に来てたらしいね』
『そうそう、インスタに上げてたね』
『見た見た!そのまま若返らせたら動画そのものだった』
『俺は5歳のゾーイちゃんがいい!』
『俺もいっぱい日本のお菓子食べさせたい!』
『早く続き始まらないかなあ』
(いい気なもんである)
「ミスター佐藤、今夜重大な会議に出て欲しいんだが、大丈夫かな?」
「え、あ、はい。大丈夫もなにも私に決定権は無いでしょう。あはは」
「どこへでも連行されていきますよ」
「いやいや、たぶん、それが済めば近じか解放されるようなんだよ」
「ホントですか~?」
「たぶんな、がはは」
その夜、迎えの時間になったのでエントランスで待っていた。
見送りに横須賀からマット中佐も来ていて、バッジを返してくれた。
「これは貴方に持っていて欲しい」
「いいんですか?大事な思い出なんですよね」
「私のはちゃんと部屋に飾ってあるよ、あはは」
「これは、向こうの世界の私があなたに渡した物だ」
「持ってて欲しい」
「それでは大事にします!」
プロボックスが絶妙なタイミングで現れた。
「え?アルファードとかじゃないんですか?」
「公務員は経費節減だ。あはは」
「日本の方ですか?」
「そうですね、これからは日本政府が引き継ぎます」
「え、釈放では......?」
在日米軍総司令部では、やっかい事をひとつ、日本政府に投げ渡してホッと一息ついていた。
その営業車は高速を走り、霞が関で降りた。
「ちょ、ちょっと国会議事堂ですか?こんな時間なのに?」
議事堂は過ぎた。
しかし、すぐにスピードが落ちて首相官邸のゲートを入っていった。
「ここって、入っちゃダメなところですよね?」
業者用の搬入口から秘書官の先導で総理執務室まで案内された。
そこには、YouTubeの切り抜き動画で良く見る、内閣総理大臣本人が待っていた。
「初めまして、佐藤俊夫さん。無理を言って来て頂きありがとうございます」
「内閣総理大臣を務めさせて頂いております、高橋さなえです」
ご視聴(ご愛読)ありがとうございました!
面白かったら【ブックマーク登録】や【評価(★)】をいただけると励みになります。
コメント欄の質問には、次の動画(本文)で答えるかもしれません。
次回も、生き残れたらまたお会いしましょう。




