真実はひとつ......か!
「お母さ~ん、お父さん若作りしてるんですけどぉ~」
「へえ~本当ね、若い頃のお父さんね!凄いのね今のメイク」
慌てて、拓哉がスマホを取り返し、すまなさそうに代わった。
『ごめん父さん、話せば長くなるんだけど......こうなった!』
『まぁこうなる事は、予想できてたなぁ、油断した』
そこへ、ゾーイが入ってきた。
『え、何がどうなってるの?』
『息子さんが参加するって事は聞いてたけど』
『俺もそのつもりだったんだが、なぜか、妻と娘も来たらしい』
『そういう事ね、歓迎するわ』
ゾーイは手を振って観光客の中から佐藤家の三人を探し出し、お互いスマホの翻訳アプリで自己紹介していた。
ゾーイと、佐藤家の女性陣が、いかにも日本人的な挨拶から世間話に発展していく隙に、拓哉と小声で話をしておく。
『父さんがいい感じの時に話すって言ったよな?』
『そうなんだけど、急いで準備してる時に、仕事でハワイに出張になったって、ポロっと出ちゃったんだよね』
『それを、お姉が聞き逃さずに、それじゃあ私とお母さんも、お父さんに会いに行く!良いよね!って』
『あいつは小さい頃から妙に耳が良いからなあ』
『それより、どう話そうか......』
『お姉と母さんは英語はスマホ頼みだから、父さんはセットに缶詰になったって言っとく?』
『いや、いい機会だから正直に話すよ』
『それでショックを受けても、ワイキキでもてなしてやってくれ』
『どこでも良いから美味い物食べさせて、欲しいものが有ったらなんでも買ってやってくれ』
『収益が入っても、父さんは使えないし......引き落としさえ出来てればそれで良い』
『それで何とかうまくいくかねえ......』
『それしかないからなぁ......』
そこへ、ゾーイが入って来た。
『なに日本語で話してるの?』
『で、ゾーイのバックと同じ構図で俺も......ほら!』
『1996年だとこんな感じだ』
『ん~、そのまま一周回ってみて』
『こうか?』
『......』
『今は、認めるしかなさそうね......』
『拓哉はどうだ?お前とも同じ構図だろう』
『ここまでされたら認めるしかなさそうだな』
『お父さん、この軍艦同じに見えるんだけど!』
『あなた、これセットなの?』
『実は、父さん話さないといけない事があるんだけど』
『なによ?この美人が新しい彼女とか?』
『それは若過ぎでしょう、無理無理。あははは』
『歳を考えてね、ふふふ』
『だ、だからちゃんと聞くんだ!』
『なによ、あらたまって』
『拓哉には話したが、父さん、今は、1996年のこの場所に居るんだ』
『しかも、30歳に戻ってな』
佐藤俊夫は一番大事なところだけ、話した!
『『はあ?』』
『だから、そう言う事なんだって!』
拓哉がそれとなく助けてくれた。
約一分、ふたりの口が開いたままだった。
『そんな事あるはず......本当に本当で本当なの?ドッキリじゃなくて?』
『本当に本当で本当だ、ドッキリでも無くな』
『たっくん!お父さんが、中学生のかかる病気にかかった?』
『それは......無い......と思う?』
『何故か知らんが、スターリンクが2026年に繋がって、こうしてお前たちと話せている』
『ご都合主義にも程がある!とは父さんも思ってる』
『まあ、一旦それは置いておいて。それで、いつ帰ってくるのよ?』
『動画の製作が終わったら帰って来るんだよね?』
『......』
そのやり取りをゾーイは何となく感じ取って、口を出せずにいた。
これは、家族内の話しだ。
たとえば自分に置き換えてみたとする。
自分がこういう状況に陥った時、たぶん同じだと思えた。
どっちの立場でも......
『良く解ってないから、どうなるかは分からないとしか、言えない』
『だから、父さんにも解らないんだ!どうしてこんな事に......』
『それで、今までお前たちが観ていた動画、アレはAIが作った動画じゃなくて、父さんが撮影して編集して投稿したモノなんだ』
『マジ?ゾンビとか......?』
『マジ......だな』
『みんなのおかげで父さんは生きてる』
『動画にでてるジョンの家族な、そこに出て来る可愛い女の子』
『ゾーイって言うんだけど、2026年では何事もなく普通に生きて、普通に育って、結婚もして、今ここに居る。目の前のこの女性がそのゾーイだ』
『ふえ、あ、はい、普通のゾーイで、す?』
改めて説明されると、我ながらとんでもない話に今更慌てた。
『でも、動画に出てるゾーイは、別の世界みたいな感じ?なんだ......』
また、ゾーイの頭から湯気がでそうだった。
『そんなこんなで、父さんは何とか生きている』
『これは本当の事だぞ』
『そうだったんだ......』
『でも、お父さんカッコイイって、お母さんが褒めてたよ』
『それはまぁ、若い頃のお父さん結構モテてたし、ねぇ。ふふふ』
『いきなりこんな事言われても飲み込めないのも解る』
『だから、しばらく平和な楽園のハワイを満喫してってくれ』
『拓哉にお金預けたから、美味い物食べて、気に入ったモノは何でも買え、金ならある!がはは』
『......その内帰る方法も見つかるさ』
『だけど、帰ったら口座がすっからかんだったら父さん泣くぞ』
『そして、ゾーイ。状況はこんな感じだ。納得できなくても時間を掛けて......その、なんとかしてくれ』
『最後にひとつだけ。2026年と繋がるのは、ヨットの近くだけだ』
『ヨットに設置してあるスターリンクの、Wifiが届く所でないとLINEで話す事もできん』
『連絡が付かなくてもそう心配するな、ヨットに戻ったらこちらから連絡するから』
ゾーイは、無理やり自分を納得させ、先に帰った。
自分が同じ立場だったら家族の時間をもっと持ちたいだろうと考えたからだった。
ハワイ滞在中に、ゾーイに観光案内の約束していたのはさすが我が家族だ。
その後はスマホのバッテリーが切れるまで家族で話し、またの約束をして別れた。
ZOOMを切った後、母さんが何気なく言った。
「全部本当なのね。お父さん、ごまかしたり、嘘ついたりする時に挙動不審になる癖があるからすぐにわかるのよ、今日は堂々と話してたわ」
その言葉に俺や姉ちゃんも頷くだけだった。
(佐藤敏夫の癖を家族はとっくに気付いていた)
ソルは、一度1996年の日本がどうなってるか、見に行ってみようと考えるようになった。
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