大人のゾーイと会ってみた......が?
朝十時、いつものように動画をアップした。
視聴者の反応はさまざまだった。
相変わらず映像の出来に驚く者。
ハワイ島の雄大な景色に感動する者。
1996年を懐かしむ者
それぞれがソルの生成AIで作られた世界を楽しんでいた。
その中には飲み込めない者も居る、ゾーイだった。
『どう観てもあの頃のハワイ島だわ......』
信じたいけど信じられない。でも、信じてしまう自分が居る。
『ひょっとして、このソルティさんは、まだハワイに居るんじゃないだろうか......
だったら直接会って話をしなければ!』
なんて事を考え始めていたゾーイでした。
『次は、大迫力ならスコフィールドの陸軍基地殲滅戦なんだけど......
撮影しに行ってないんだよなあ......留守番だったし。
”ジュラシック・パークで食料調達!恐竜はいないよ”
だったかなぁ。
ほのぼの系が続くけど、まあいいか。
まぁ、家族も観てるからグロいのは止めおこう。
モザイク掛け始めると全部モザイクになりそうな場面が多そうだもんな。』
しばらくは大人しめの動画で行こうと決めたソルだった。
司令部の方では、HF無線が安定して来たらしく、遠くの生存者とも連絡が取れてるようだ。
行ける行けないは置いておいて、嬉しい物だ。
人類はしぶといよなあ。
船も、大型船ばかりではなく、ソルのようなヨットで旅しながら生きてるセーラーも多く、ハワイにも立ち寄ってくれるヨットが増えて来ている。
サンゴ礁で浅瀬が多いカネオヘ湾へは、たまに来る程度だ。
遠くから来るなら、製油所あるバーバーズポイント港の隣のマラレコハーバーが入りやすいのだろう。
釣れた魚と物々交換で燃料を貰うのかなあ。
しばらくは伸びすぎた野菜の収穫に頑張ろう。
カウアイ島では、港と空港の掃討が上手く行き、纏めて滑走路上で殲滅戦を行うそうだ。
ハワイ島でも順調に生存圏が広がり、ヒロとコナの街を残すのみだった。
オアフでは、中央を片付けて進み、北まで掃討出来たら東西に分かれて南下中との事だ。
それが済めばいよいよ、ワイキキ周辺に取り掛かれる。
空母艦隊が連れて来ていた兵士の数がかなり多かったので掃討もはかどっているらしい。
ゾーイにプレゼントしたセーラームーンのプリントした画像は大喜びだった。
次は、違うのをと予約まで受けてしまった!
あれこれと選んでたとこへ、大人のゾーイからメッセージが届く。
『ハーイ、ソルティさん。あなた、ひょっとしてまだハワイにいたりしない?
居たら、一度直接会って、お話したいんだけど。』
うっ、こんな展開に......
『まぁ、ハワイに居ると言えば居るんだけど、この前話したように、1996年に居るんだよね~。やっぱり信じられないんだよね、分かります。でも本当なんです』
『そこまで言い張るの!なら、ビデオ通話なら出来るでしょ!』
出来るっちゃあできるけど......どうしたもんだか。
『じゃあさ、オアフまで来れる?フォード島の戦艦ミズーリの前で』
『もちろん!知ってるわ』
『じゃあ、そこへ来週くらいに行って待ってる。ゾーイもそこへ来て!
そこで、ビデオ通話で話しすれば、状況がわかると思うよ』
『絶対行くから!』
勢いで約束してしまった......
同じ場所で同じ時間、ビデオ通話なら、1996年と2026年でも、そうは変わってないだろう。
30年離れたLIVE映像かぁ......
だったら、拓哉も呼んでみるか......
(ソルの勢いが加速した)
メッセージの遣り取りが終わってから自分の勢いに呆れた。
その夜、拓哉にLINEでハワイに来るか聞いてみる事にした。
『いま、いいか?』
『いいけど、なに?』
『来週、前に話していた大人のゾーイな』
『ああ、話したんだよね?』
『一旦、持ち帰ってくれたんだが、会って話がしたいと言ってきた』
『それで、会う事にしたの?』
『だから、お前まで会えると思ってるのか?』
『やっぱりマジだったのか......』
『まあ、そうなるわな』
『それで、パールハーバー・フォード島にある戦艦ミズーリの前で、同時にビデオ通話で話す事にした』
『1996年に居る父さんと、2026年に居るゾーイとだ』
『???』
『だから、同じ場所でまわりの景色を映しながら話そうってなった』
『それなら父さんが実際に1996年に居るって解ってもらえると思って、勢いで言ってしまった』
『......え?マジ本当に本当だったんだ......』
『良かったらお前もその場に来るか?』
『突然すぎ!いきなりすぎ!』
『旅費の心配はするな、父さんにはYouTubeでたんまり収入がある!たぶんな』
(とりあえずドヤってみた)
『何か必要な物とかある?』
『ハワイでも繋がるスマホがあれば良い』
『わかった、なんとかするよ』
やっかい事が片付いたと安心していたが、全然片付いてはいなかった。
約束の日までが忙しすぎた。
口座を確認したら、声が出ないほどの金額が振り込まれていた。
とりあえず、百万円ほど拓哉に振り込んで、残りは美味い物でも食え!と父の威厳を見せつけておいた。
ぽろっと収益の金額を漏らしたら、さらに百万円請求された。
それでもあまり減ったようには思えなかったが。
小市民な家族だった。
待ち合わせは午後一時にした。
ホノルルへの到着時間が午前十時過ぎくらいだったから、ちょうど良さそうな時間にした。
ゾーイは......地元民だからどうにでもなるだろう。
当日、早朝からソルは自分のヨットでフォード島まで行き、
知り合いの海軍の偉い人にミズーリの近くに留めさせてもらった。
スターリンクのWifiが届く圏内でなければならなかったのだ。
いよいよ、午後一時が近づいて来た。
そこへ、待ち人が......来るはずもなく、時間丁度に打ち合わせ通り、ゾーイとZOOMが始まった。
『ハーイ、私はここよ!』
そこへ、こちらも時間通りに拓哉がZOOMに入って来るはずだったのだが、画面に映っていたのは娘の雪乃だった!
『お父さん!来ちゃった~』
さらに奥には母さんも......
『どうなってるんだ~!』
ソルはひとりミズーリの接岸されている岸壁で崩れ落ちた。
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