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ハワイ島の補給作戦

ジョンの船は昨日の内に着いていたらしい。

「ま、俺の方が燃費は良いけどな」

無線でお誘いを受けたので、お邪魔する事になった。

テンダーを準備し、船外機を唸らせてお邪魔した。

「よう、遅かったじゃねえか」

「でも燃料はぜんぜん減ってませんよ」

(アホなマウントの取り合いだった)


「で、どうでした?街の様子は」

「街はゾンビ共で溢れてる」

「軍は……昨日の時点では抵抗は無かったな」

「撤退したか、どこかで再編途中か、それとも……」

「ここには広大な軍の演習場があるからな」

「そこなら立て籠もれるだろう」


「元人間だらけって事ですね」

「個人で家に立て籠もってるかも知れねえがな」

「そんな事より、ここでの目的は軍のレーションなんかの食料と」

「食料と?」

「あとは武器だな、今はこれしか持ってない」

ジョンは自分のハンドガンを見せた。

「昨日のグロックですね普通の」

「俺のM4は渡しませんよ!もう俺のもんですから!」


「んなもん自分で調達するさ」

「まずは朝飯だ、まだなんだろ?」

「はい、まぁ」

「食ってけ」

しばらくするとキャサリンさんの手料理がテーブルいっぱいに並んだ。


「保存が効かなねえもんから先に処分しねえとな」

朝から分厚い肉が出てきた。

さすがアメリカだなあと思った。

アメリカはスーパーの警備員でもガタイは良い。マッチョの国なだけはある。

俺の頭の中でボンジョビの「It's My Life」が流れてた。


あらかた片付いたテーブルで食後のコーヒーを飲みながらジョンが指をさした。

「あの辺りが軍関係のエリアだ」

区別が付かないが判ったフリして頷いておいた。

「岸壁に接岸するのはちょっとな……」

「お前のテンダー出してくれるか?」


「う~ん……、この辺りの潮汐表ありますか?」

ジョンはキャビンから1996年版を出してくれた。

「今年のだ」

「ありがとうございます」

パラパラとページをめくる。

「ヒロの港……あと二時間で満潮ですね」

「俺に良い考えがあります」

(ジョンの頭に不安がよぎった)


そして二時間後。

ジョンのクルーザーがデッドスローで岸壁に近づき、方向を変えてスターンからバックで接舷した。

「キャシー、俺たちが降りたら、飛び乗れるくらいだけ岸壁から離して待機していてくれ」

「わかったわ、ジョン」

俺たちが岸壁へ飛び移ると、キャサリンさんは船を数メートルだけ離し、アンカーを打って待機した。

この距離ならゾンビは飛び移れない。

だが俺たちなら戻って来られる。

「準備万端ですね」

俺の装備は大き目のバックパックと嫌々腰に付けた1911。

あとジョンの船から頂いたボートフックだ。

「新しい聖剣を手に入れた!南の勇者の剣は折れてしまったし」

(陸に上がるとすぐこれだ)


「ホントにこれは使いませんよ!お守りなんで」

1911はジョンの強い指示で持って来ただけで、本当に嫌々だった。


慎重に素早く、ふたりは軍のエリアまで走った。

なぜかジョンは、どのコンテナに何が入っているか知ってるようだった。

「何のコンテナか判るんですか?」

「ここに記号が書いてある」

「はぁ……」


いくつかのコンテナを調べて目的の物を見付けたようだ。

「これだな」

ジョンはボルトカッターで封印ワイヤーを切った。

「教育・比較評価用資材のコンテナだ。」

「まずは武器を確保する。」


中には新旧取り混ぜた銃器がずらっと並んで仕舞われていた。

「!あ、あの……夢のような光景なんですけど!」

「はあ?何言ってんだ!」


ジョンは慣れ親しんだモデル727とM40A1、レミントンの870を選んだ。

弾薬は5.56mm、7.62mm、00Buckを、入るだけバックパックへ詰め込んだ。

長物二本はベルクロで束ねてダッフルバッグに収める。

5.56mmは四本のマガジンへ装填し、そのうち一本を727へ差し込んだ。

チャージングハンドルを引き、いつでも撃てる状態にする。

すべての準備が整い、振り返ってソルを見て絶句した。


モシン・ナガン スコープ付きやら、FR-F2、AKS-74UやらSA58 Paraまで引っ張り出し、広げ捲って目を輝かせ、頬ずりまでしていたのだ。

「よくぞこれだけ揃えてくれてました!」

「ありがとう!謎の人!」


ジョンは鳥肌を立てながら言葉が出せなかった。

「これ全部持って帰ります!」

「ぜったいですよ!」


気迫のこもった声に思わずOKを出すしかなかった。

「わ、判ったから」

『うひひ、これでAVA再現写真が撮れる!MP7はまだ開発前なんだよな~』

(世界が終わりかけているのに本人だけ平和だった)


「……何言ってるか一つも分からん。」

武器類は、先に全部優先的に運び終えた。いや、運ばざるを得なかった。

再び、空にしたバックパックを背負い、今度こそ食料を探しに来た。

ジョンがコンテナを調べ、ソルは周囲を警戒している。

ボートフックを手に。


バチン、と封印ワイヤーが切れる音がした。

レーションが入ったコンテナを見付けたようだ。

「あったぞ、ここだ」

コンテナの中にはケース単位で積まれたレーションが並んでいた。

「種類をばらけて詰め込むか」


ふたりでバックパック一杯に詰め込んでの帰還中……ゾワっときた。

数十体のゾンビがコンテナ群の周囲に集まりかけていた。


「マズイぞ、走って逃げられるか?」

「ぎりぎりになりそうですね」

「じゃあ、全力で走って、船に乗る前にこれで薙ぎ払い、その隙に乗り込むか?」

スリングで前に吊った727を軽く叩いた。


「それよりジョンが先に飛び乗って、援護お願いします!」

「タイミングを見て俺も飛び乗ります」

「わかった!」

短い打ち合わせが終わり、ふたりは飛び出した。


後方だけなら引き離せるが、囲まれそうな状況では左右両方とも寄せ付けてはいけない。

歩く速度は遅い。だが、数のプレッシャーはかなりヤバイ。

なんとかボートフックを振り回してスペースを維持し続けた。


囲まれる寸前にジョンが船へ飛び乗り、振り返る。

と同時に727の銃声が港に響いた。

「頭を狙ってください!」

「判っちゃいるが……いや、任せろ!」

リロードのタイミングで俺も飛び込んだ。


その瞬間を待っていたかのように、キャサリンさんがスロットルレバーを押し込み、クルーザーは岸壁を無事離れた。

離れた時点で勝ち確だ。

本能のまま追いかけてきたゾンビたちは、岸壁から滝のように海へ流れ込んでいった。


俺はその場でへたり込んでもう立てなかった。

ジョンも同じような状態だ。


「ふたりとも、頑張ったわね!お疲れ様」

そんな俺たちにキャサリンさんが冷えた缶ビールを渡してくれた。

「おお、ありがとな」

「ありがとうございます」


プシッ!

「何とか生き延びたなあ~オイ」

「ぷはぁ~、俺の聖剣の舞いどうでした?凄かったでしょ?ねぇ!」

(逃げっぷりだけは国宝級だった)


ふたりは顔を見合わせて大声で笑いあった。


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