金の盾、銀の盾、銅の盾は......
『拓哉、どうしたら良いと思う?』
ソルは息子に助けを求めた。
情けないがしょうがない。
『もう昼休みは終わってるんだけど、今度は何?』
『悪い、仕事終わったらLINEよろで』
拓哉は、また何か丸投げされそうな気がしていた。
仕事が終わり、会社を出て、自販機で缶コーヒーを買って人通りの無いコインパーキングの片隅でLINEを送った。
『で、どうしたの?今なら通話できるけど』
すぐに着信音が鳴った。
「よう、久しぶりだな」
「久しぶりに聞いたけど、声が若いね。マジだったわ」
「あのなぁ、前に話したそっちの世界のゾーイ、覚えてるか?」
「五歳くらいの女の子?」
「そっちじゃ35歳らしい」
「よくわからんけど、わかった」
「そのゾーイにバレた」
「???」
「今朝公開した動画に出て来るジョンの家、わかるか?」
「わかるよ、観たから」
「今でもジョンとキャサリンさんが住んでるらしい」
「キャサリンさんはお母さんの名前な」
「ゾーイは結婚するまでそこに住んでたらしい」
「それでだ、父さんが渡されてた写真は家族写真一枚だけで」
「ああ、わかった。どうして自分たちが住んでた家そのものが動画になってるのかって聞かれた?」
「さらにだ、あの縫いぐるみが映ってるのがおかしいって」
「誰も知らないはずの縫いぐるみが、どうして映ってるのって聞かれた」
「どうしよう......」
「どうしようって言われても......」
「父さん、そこまで考えてなかった」
「まず、一回整理しようよ」
「ああ」
「バレて困るの?」
「本当の事話して誰が困る?」
「その前に、誰がそんな話信じると思う?」
「お前は信じてくれた」
「いや、俺も半分くらい考えたらわかんなくなって寝た」
「だから、ゾーイって人にも事実を話せば良いんじゃない?」
「信じるも信じないも相手に任せるしかないんじゃない?」
「それに......この先は言いたくない!」
(実際には会えないし......なんて言えるわけ無いじゃないか)
「それに、丸投げは父さんの得意技じゃないか!うひひ」
(拓哉は丸投げ返しを発動した)
(しかも、うひひは遺伝していた)
「そうだな、そうする」
ソルはLINEを切って、ゾーイへ返信を書き出した。
『やあ、不思議だよね、やっぱり。
なら、どうしてあの動画が出来たのか本当に聞きたい?
信じられなくても聞きたいかな?』
送信っと。
すぐに返って来た。
『当然だわ!私のパーソナルな空間に土足で入り込んだのよ!』
『まあまあ。じゃあ覚悟して聞いてね』
『もちろんよ!』
『あれは、実際にジョンに招待されて家に行ったんだ。
他のメンバーも一緒にね。
だから、あの縫いぐるみも本物なんだ』
『ちょ、ちょっと待ちなさいよ!本物ってどういう事?』
『言葉通り、本物って事だね』
『からかってるの?』
『これから話す事は、誓って本当の事なんだ。
最後まで黙って聞いて欲しい』
『わかったわ......』
ソルはこれまでの経緯を、タイムスリップして1996年に流れ着いたらゾンビが溢れていた。
そして、ジョンと知り合い、なぜかスターリンクが2026年に繋がったのでYoutubeに動画をアップする事になったと掻い摘んで説明した。
途中からゾーイの頭からは湯気がでそうだったのは知らないが。
『それ、本気で言ってるの?』
『最初にゾーイが見つけてくれた、お父さんに似ている海兵隊員って言ったよね?本人なんだから当然だよね』
『キャサリンさんも若いし、ゾーイなんて五歳の可愛い女の子だ、
AIで作った偽物じゃなく、本人なんだからね』
『たぶん、どこかで分かれた世界だと思うよ、知らんけど......』
『よくわからない事は判ったわ』
『......これ以上は頭が受け付けないから、寝る!』
ソルはなんとか投げ切った!
よし、これでカンのペキに解決だ!
(”元は六十歳”を言わなかったのはちょっとした見栄だった)
「今後はもっと気を配って編集しよう!」
「チャハーンは明日だな、きょうはもう疲れた」
誰に言うでもなく呟いた。
翌日の、日本の自宅にGoogleから住所確認のPINが届いていた。
拓哉に写メを送ってもらい、入力すれば収益化が出来る!
どれくらい入ってるかなぁ~うひひ
ソルは、大量に仕入れたお米を三合、鍋で炊いて三人分のチャハーンをつくり、キャサリンさんとゾーイを呼んで、三人並んで食べながら、初期セーラームーンを第一話から観ていた。
夕方まで観ていたが、ジョンが返って来たので映画館は終演だ。
その夜、次の動画の構想を練っていると、深夜に拓哉からLINEが来た。
『なんかYoutubeから届いたんだけど、これって......』
『おう、驚け!これがあのアレだ!がはは』
『盾なんでしょ?あはは』
『おう、アレだ!開けても良いのだ!息子よ!』
『もう、おねえが開けてる』
『はぁ?余韻に浸らせろ!』
『まあいいけど』
家族グループラインに切り替えた。
『どうだ!凄かろ?』
父は自慢したくてしょうがなかった
『ねえ、お父さん、金の方私がもらって良いよね!サンキュ!』
『え、じゃ俺は銀のでいいけど......』
『お父さん、私のは無いの?銅の盾で許してあげるから』
母さんまで参戦してきた。
「じゃあ、明日はお祝いに”ぶりの照り焼き”にしましょう!うふふ」
そんな家族LINEで盛り上がって夜は更けていった。
後日、家族全員で盾を持って記念写真を撮ったらしい。
拓哉がそう言って送ってくれた。
ソルはいつでも見られるようにノートPCの壁紙にした。
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