ジュラシック・パークへ行ってみた!
公開された動画が方々で盛り上がってた頃、ソルはジョンの船でお昼を食べていた。
「ねえジョン、今日は休みなんだよね?」
「まあそうだ。どうかしたのか?」
「この湾の向こう側、北の辺りって、ジュラシックパークなんだよね?」
「ジュラシックパークではない!が、クアロア・ランチがロケ地の一部ではあったな」
「ランチ?牧場だったの?」
「農業もやっている」
「じゃあ、何か収穫できそうなものあるかな?」
『ジュラシック・パークで食料調達!恐竜はどこへ逃げたのか?』
タイトルが即浮かんだ......ちょっと厳しいかぁ。
『ジュラシック・パークで食料調達!恐竜はいないよ』
これならイケそう!
「じゃあさ、野菜や、果物を収穫に行かない?」
「街じゃないからゾンビも少ないでしょ?」
「そうだなぁ、さ~っと行って回収してくるか」
「手が入ってないからどうなってるかは判らんぞ」
「オバケかぼちゃになってるとか?」
「ありえるな、がはは」
「ゾーイもパンプキンパイ食べたいか?」
「食べた~い」
「大きすぎるのは止めてね、ジョン」
「なら、許可だけ貰ってこよう」
早速、ジョンは司令部へお伺いを立てに行ってきた。
「クアロア・ランチ方面の事前偵察及び、生鮮食品の回収で届けてきた」
「笑われたが、許可されたぞ。がははは」
今回は、カネオヘ湾内の移動なので、俺のヨットで近くまで機走で行き、テンダーで上陸という流れだ。
クアロア・ランチのすぐ南側にアンカリングさせた。
テンダーはロープで引いて来たのですぐに乗り込み、湾に面した高級別荘?のビーチから上陸した。
アメリカ人はとにかくピックアップが大好きなので、どんな豪邸にも必ず一台はピックアップがあるはず。
当然のようにここの豪邸にもあった。
気配を探り、建物に入り、キーを探した。
アメリカ人のジョンはすぐに見つけて来るのはさすがだ。
その間、俺は食糧庫を漁る。
目当てはストックの調味料関係だ。
メープルシロップや蜂蜜は嬉しい。
香辛料も各種回収してジョンに声を掛けた。
「ちょっと隣も見て来るね」
「待て、俺も行く」
ふたりで慎重に隣の豪邸に忍び込んだ。
モデルルームとかで2026年の最新家電付きリビングを知っているソルから見ると、この時代のリビングは古臭さが隠せない。
ブラウン管のテレビが懐かしい、ビデオレコーダーもVHSだった。
三十年の進化は想像以上だった。
しかし、食糧庫は代り映えしなかった。
巨大な冷蔵庫は開けるのが恐ろしい。
保存食や香辛料、調味料などの未開封だけ選んで段ボールに放り込んだ。
その隣も、またその隣も同じような感じだった。
結局段ボール三箱に収まったが、最初の家に置いておき、帰りに運ぶ事にして、ピックアップに乗り込んだ。
「このままジュラシックパークへレッツゴーだ!」
「浮かれてんなあ、おい!がはは」
途中で見つけた農園に寄り道し、荷台にはいろんな野菜が増えていく。
キャベツ、ズッキーニ、トウモロコシ、カボチャ......
ほぼ育ち過ぎていた。
中でも普通サイズの物を選んでプラスチックのコンテナに収穫し、荷台の半分ほどになったので、満足してジュラシックパーク(クアロア・ランチ)に移動した。
入口を入ると、あの映画で見た景色が広がっていた。
まさにジュラシックパークだった。
当たり前だが恐竜は居ない。
「ねえジョン......」
「わかった!この中を走り回りたいんだろう?」
「え、なんで判ったの?いいの?じゃ、あのジープに乗って......」
「遠くまで行くなよ!絶対にだ!」
「了解!」
ソルはウキウキで草原へ乗り出した!
そこかしこで動画を撮った。
自分も入れて撮った。
それは家族を安心させようとした行動だった。
撮れ高に満足したソルはジョンのところへ戻って来て深々と頭を下げた。
「ありがとう、ジョン」
「なんだ?どうした?あらたまって......」
「いやあ、こう見えてストレスが溜まってたんで!えへへ」
「今日はスッキリしました~」
「人間、娯楽は必要なんですね~実感しましたよ。はい」
「ここならキャサリンやゾーイを連れて来ても良いかもな」
「周囲も見渡せるし、良いですね。今度一緒にまた来ましょう!」
「そうだな」
帰りに小さな食料品店を見つけたので、ちょっと寄り道。
バックヤードで小麦粉と、なんと米を発見した!
積めるだけ積んで豪邸へ戻った。
さすがに一度でヨット迄運べるはずもなく、四往復して運び込んだ。
大漁だった!とくに米が......!
「今日の晩御飯は、チャハーンだぜ!」
(このネタが解るヤツはいるのだろうか......)
(しかもあれはオムソバだ)
収穫した食材を満載して基地へ戻る途中、SNSのメッセージに気が付いた。
ゾーイからだった。
ジョンと一緒の時に見るわけにもいかず、マリーナに着いてから見る事にした。
米を二袋だけ食糧庫に仕舞い、とりあえずジョンの船の前の桟橋に積み上げた。
キャサリンさんが先に半分選んでジョンのクルーザーに片付けた。
残りの半数は基地の食堂へ。
ゾーイはメープルシロップと蜂蜜を両手に持ってニコニコだ。
俺はヨットに戻り、SNSのメッセージを開いた。
『ハーイ、動画観たよ......
コナのマリーナも。
ママラホア・ハイウェイも。
ワイメアの街、パーカー牧場も......
全部リアルに見える。
いえ、リアル過ぎるのよ!
......
AIが作ってるはずなのに......
なんで、私の縫いぐるみが映ってるの?
あの、家も、庭も、プールも......
結婚して家を出るまで住んでた私の家......
父と母が今でも住んでる私の家......
あれは作り物じゃない......
ちゃんと説明して!』
......
迂闊だった。
気が回らなかった。
言い訳が頭を駆け巡ったがどれも意味はなかった......
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