父さん、何やってんだよ!
動画をアップし終えたソルは、ジョンの船でお昼ご飯に蕎麦を茹でていた。
今日はざる蕎麦だ、冷水で締めた蕎麦はうまかった。
「この前のソメーンとは違って硬いのね、アルデンテ?」
「私はこれも好き!でも黒い紙はいらない!」
「これは海苔っていって......西洋人には無理か」
「乾麺もそろそろ残り少なくなってきたなぁ」
ヨットの保存食も少なくなってきたし、このあたりのスーパーで日本食材を探してみるかな。
今度、調達班に志願してみよう
キャサリンさんにリクエスト書いて貰ってヨットへ引き上げた。
ノートPCを開くとゾーイからメッセージが届いていた。
「ハーイ、観たわよ!出てたね、私たち!お父さんもお母さんも若くて大喜びよ。私はちびっこだけど、可愛くしてくれて嬉しいわ。でもよく再現できたわね!写真そのもの......いえ、それ以上ね!」
「メッセージありがとう。これからもちょっとずつ出していくね」
そう返信しておいた。
第五弾はハワイ島だな。
ここは長そうだから前編後編に分けて出そう。
構想を考えてると深夜になっていた。
息子からLINEの着信がきた。
『全部観たよ。それからマズイことになってる』
『どした?』
『実は、おねえが、あの動画観てて、手帳の印に気付いた』
『それでお母さんと俺も一緒に観る事になって』
『話が変な方に行きそうで』
『変な方?』
『お父さんが映画会社にスカウトされてあの動画の主演になった』
『はあ』
『その出演契約で誰にも言えなくて、今ここ!って感じになってる』
(父の想像の斜め後方へ話が進んでいた)
『それはまた......』
『俺は何も言ってないよ』
『それは判ってる』
『父さん、あの動画は父さんがAI使って作ってるんだよね?映画会社とかじゃなくて』
『まあそうだな、編集も投稿もお父さんひとりで作ってる』
『じゃあ、銀の盾とか金の盾が家に届くの?』
『そうなるかな収益化の申請も出してあるから、そのうちな』
『あ~っと、お前ももう三十歳だ、今から重大な事を話すけど、まずは黙って聞くんだ、いいな?』
『なに?あらたまって』
『あのな......、お父さんヨットで太平洋横断に出たよな?』
『出たね』
『日付変更線を超えたあたりでAISが消えた』
『そう、そこで消えた』
『お前には荒唐無稽な話に思えるだろうが』
『そこを超えたら1996年になってた』
『???』
『そして、父さんも30歳に戻ってた』
『何も言うな!』
『うん』
『わけわからんから取りあえずハワイへ向かった』
『第一弾の動画は父さんの経験だ』
『正確には、その時撮影して無かったから、後から現場をなぞって撮影したんだ』
『その時は、知り合った元海兵隊のジョンて言う人と、本物のSEALsの隊員四名に守ってもらいながらだったけどな』
『今、父さんが生きてる1996年のハワイは、ゾンビが溢れている世界なんだ』
『この世界に流れ着いてから一ヵ月くらいしてスターリンクが2026年となぜか繋がって、YouTubeに投稿できてる』
『YouTubeにアップしてる動画はすべてAI生成じゃなく、父さんがスマホで実際に撮影した物なんだ!信じられんとは思うが』
『お前たちに連絡できなかったのは、どう説明したら良いか判らなかったんだ。許してくれ』
全部吐き出した。
一分間ほどお互い無言だった。
『ゾンビとかって本物?』
『ああ、本物だ』
『ワイキキで逃げ回って運河に飛び込んだのも?』
『ああ、飛び込んだ』
『海兵隊の基地で弾薬運んでピンチに間に合ったのも?』
『なんとか間に合ったな』
『滑走路の』
『あの時は司令船から見ていた』
『今日の動画は?あのポロシャツが父さんなの?』
『そうだな』
『最後に海岸で避難民庇いながらボートに乗せたのも父さんなんだ!』
『大変だったが俺以外の人たちが頑張ってくれたなあ、みんな無事に助かって良かったよ』
『......父さん!何やってんだよ!スーパーヒーローやってんじゃねえよ!』
『すぐ戻って来てよ!今すぐ......』
『すまん』
『今はまだ帰れない』
『なんで?』
『お前の記憶に1996年でハワイにゾンビが出たか?』
......
『だから今はまだ帰れん』
『その代わり、この1996年で生きてる限りYouTubeにアップする』
『LINEでも話せる』
『でもそこまでだ!今のところはな』
『......そうだね、このまま日本に帰ってきても......』
『父さんも考えるのが恐ろしいから、考えないようにしてる』
『それから、お母さんには折を見て父さんから話すよ』
『いきなりこんな事話したら倒れそうだからな。ははは』
『とりあえず、ハワイでのんびりYouTuberしてるって事くらいは言っても良いぞ!いきなり金の盾が届いたら、さすがに母さんも驚くからな』
『もう一つ、父さんの口座だけは何としても解約しないでくれよ、お前達と繋がる細い蜘蛛の糸みたいな物だからな』
『そうだよね、なぜか判らないけどスターリンクのおかげだね』
『引き落としが出来なくて接続できなくなったら、父さん泣くぞ。ははは』
『それから、母さんや姉ちゃんがハワイに行くから案内してって言うのもナシな。......案内だけなら知り合いが居るから頼めるかも』
『なにそれ?2026年のハワイに知り合いがいるの?』
『父さんのチャンネルの視聴者サンなんだが、今日の動画に出ていた五歳くらいのお嬢ちゃんわかるか?ゾ-イって言うジョンの娘だ』
『不思議な縁でな、お前たちの世界のゾーイなんだ。小さい頃の家族写真を貰って、それをモデルにAIで作って登場させるって話になったんだ。こっちの世界の本人なんだけどな』
『ん~頭がこんがらがりそうだけど、わかった』
『動画ではしゃいだ父さん見ても引くなよ。あはは』
拓哉は余りに情報の多さに、頭が処理しきれなくなっていた。
そんな時は寝てしまえ!......を実行した。
(ここは親子だった)
佐藤俊夫はこの世界に来てからの懸案事項をすべて息子に丸投げして久しぶりにぐっすりと寝た。
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次回も、生き残れたらまたお会いしましょう。




