フォード島、海軍臨時司令部は大混乱
さて、次の動画は、第四弾だな。
大学からカイルアまでだ。
ん~、いっそ、カイルア脱出迄に纏めてみるか。
次の動画の構成に悩んでいたころ、フォード島では対岸の岸壁掃討戦の開始を明日に控えていた。
作戦はこの基地の掃討戦をベースに、海軍本部や燃料備蓄施設を逃げ回り、集団を育てて岸壁まで引き連れてそのまま海へ落ちてもらう作戦だった。
場合によっては銃すら撃たずに済むかもしれない。
いたって単純な作戦だ。
翌日、先行の囮部隊が出発した直後だった。
フォード島司令部の通信室に、洋上のクルーズ船がホノルルに向かっているとの無線が入った。
サンフランシスコ発、南太平洋周遊クルーズの予定だった。
フランス領ポリネシア~マルケサス諸島、タヒチ島で入港拒否、その後、フィジーでも上陸できず、最後の希望、VHF無線の届くホノルル沖までなんとか辿り着いていた。
乗員千人、乗客二千五百人程度。
燃料の補給と、乗員乗客の一時上陸を希望との事です。
担当士官は上官の大尉を呼んだ。
大尉は、るように通信士に言った。
大尉は、とりあえずフォード島へ接岸するように通信士に指示。
「ホノルル港は無理です。パールハーバーへ向かってください」
「了解した。ありがとう、助かった!」
その後、作戦室に詰めている司令官のところへ報告に走った。
フォード島司令部は、寄港中の原子力空母の艦長だったメイナード大佐が、最高位者として指揮を執っている。
他のスタッフも各艦船の艦長が務めていた。
対岸の本部にいた幕僚たちは消息不明。
大尉が報告しているところへ、通信室からさらに走り込んできた。
「偵察任務に派遣していたSEALsアルファチームから、陸軍生存者を確認、接触に成功!」
「さらに、ハワイ島ポハクロア演習場から通信確立の報告です!」
その場の全員が通信室へ走った。
「こちらフォード島臨時司令部、メイナード大佐だ。ポハクロア演習場、ジェニファー中佐、聞こえてるか?」
「こちらポハクロア、ジェニファー中佐です。メイナード大佐、明瞭に聞こえています!」
傍らではSEALsの指揮官、ザック少佐がアルファチームと話していた。
「ザックだ、生存者の規模は?」
「分散していますね、俺たちが接触できたのは三十名ほどです」
「全体は推定になりますが、三百って感じですかね」
「応援は必要か?」
「弾薬庫や食料倉庫へのアクセスが厳しい状況です」
「出来れば空爆を要請したいとこです。あははは」
「その要請は却下だ!残念だったな」
「そのかわり、海兵隊から人員を出して貰おう」
「陸戦こなせる俺たちは、既に四十名たらずですもんね」
そこへ、対岸の岸壁掃討戦の進行状況が入ってきた。
「現在、海軍基地内をピックアップで騒音を撒き散らしながら走り回り、ゾンビ集団を育てているとの事です」
「曲は、指定通り『ビートイット』です」
(たぶんブラボーチームの入れ知恵だ)
岸壁すれすれに27ft級のユーティリティ艇三艘を並べ、スピーカーはスタンバイ状態で待機中。
さらにもう一艇が救助艇として待機中。
準備は、呆れるほど単純に整っていた。
基地中から引き寄せられたゾンビの集団は巨大なうねりとなり、岸壁を埋め尽くし始めた。
すでに集団の後方では岸壁から押し出され、落ちていくゾンビも増えている。
その先頭では、今も『ビートイット』を爆音で鳴らし、ゆっくりと進むピックアップが見えてきた。
海兵隊の指揮官もこの光景を見ていたのだろう。
ピックアップが埠頭の先端でエンジンとスピーカーを切る。
乗っていたSEALsのふたりが、海へ飛び込んだ。
救助艇が向かう。
ユーティリティ艇のスピーカーが引き継ぐ形で爆音を鳴らした。
岸壁からわずか五メートル。
手を伸ばしても届かない。
それでも捕まえたい。
喰らい付きたい。
その意志はたしかに感じるが......
五メートルの距離は果てしなく遠かった。
岸壁を埋め尽くしたゾンビはすべて、ナイアガラの滝のごとく海中に流れ込んだ。
現場を見ていた者は言葉を失っていた。
あんなに恐れていたゾンビの集団が......
報告は即座に司令部へ届いた。
「推定で一万五千は海中へ雪崩れ込んだもよう」
「繰り返します。推定一万五千は~」
一瞬、通信室が静まり返った。
次の瞬間......
司令部は爆発した!大歓声が建物全部に響き渡った。
一方その頃。
ソルはようやく第四弾の構想が纏まり、オープニングの編集に取りかかろうとした所へジョンが顔を出した。
「おい、フォード島で大変な事が起きたらしいぞ!」
「今すぐ司令部へ来いって呼ばれた、お前もだ」
チラっとノートPCを見て......閉じた。
今日もアロハに短パン、サンダルで司令部へ急いだ。
ふたりが司令部に入った瞬間、異様な熱気が感じられた。
「おう、こっちだ!」
「……何があったんです?」
同席していたシールズのメディックさんが教えてくれた。
「フォード島の帰りに教えてくれただろう、岸壁で花火上げたらゾンビ共が勝手に海へ雪崩れ込んでくるって」
「言いましたけど、ダメでも責任はジョンにもありますよね!」
「上手くいくと思ったんですけど、ゴメンナサイ......」
「はあ?何言ってんだ?」
「その作戦で一万五千ものゾンビ集団を海へ落としたんだとよ!」
「お前の提案が大成功だったんだぞ!」
「......ふぇっ!」
「まあ、俺たちが本部に無線で進言した功績もあるがな、なっ!」
「でも、ジョンに人の話はちゃんと聞こうぜ!って言われてましたよね。ふふふ」
「そ、そんな事もあったかな......がはは」
「しかし、すげえな、流石は俺の弟子だけの事はあるってもんだ」
「それほどでも......ムフフ」
(今後30年、どれだけゾンビ物を観てきたか自慢したかった)
(鼻の穴も広がってたし)
少佐から話が始まった。
「本日、フォード島対岸の海軍本部を含む岸壁の掃討戦が実行された」
「作戦は大成功に終わり、一万五千ものゾンビを処理できたそうだ」
「この作戦を提案してくれた海兵隊基地に感謝の報告だった」
「あの基地掃討戦が大変参考になったとの事だった」
「皆の奮闘が海軍を救ったと。誇りに思ってくれて良い」
「それと、他にも二点」
「ホノルル沖までクルーズ船が来ているらしい」
「これは、フォード島で引き受け、その後ハワイ島への移住を進める予定との事だ」
「次に、スコフィールドの陸軍基地に立て籠もっている、およそ三百人とも接触できたとの報告と、救援と、補給のために人員を出して欲しいとの要請も来た」
「応援要請を最後に持ってくるとこがいいねぇ、やるなあ少佐」
メディックさんが小声で囁いた。
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次回も、生き残れたらまたお会いしましょう。




