医薬品回収に行ったら......
リオは編集の合間に、食料や物資調達に同行させてもらっている。
避難所になってる基地への貢献もあるが、動画撮影の為でもある。
いや、むしろそっちが本命っぽい。
じわじわと広げている生存圏の少し先へ、いろんな物資の調達にいくのだ。
今日の目的は、カイルア南部にある病院で医薬品の回収だった。
メンバーは、顔見知りのマリーン四名と、帰ってきたばかりのブラボーチームからメディックがひとり、そして俺の六名で、桟橋からRHIBに乗り、少し先のカネオヘヨットクラブに上陸、そこから確保してある営業用のバンに乗って病院まで向かった。
「デイトナさんはメディックだったんですね!」
「デイトナって名前じゃねえが、先生って呼んでも良いんだぜ!」
「そのロレックスのせいで、悪徳医師にしか見えませんね」
「まあ、生かすも殺すも俺次第ってとこだな。がはは」
「じゃあよ、先生、おれの髪の毛増やしてくれよ」
「そいつぁあ無理だ!」
「そうだぜっ、お前、毛根が残ってねえもんな」
「間違いねえ」
「「「「がははは」」」」
到着した病院の外周をひと回りし、まばらに徘徊していたゾンビを静かに排除した。
広い駐車場も見える範囲はキレイに片付けた。
建物は荒らされた様子もなく静かだった。
「ゆっくり奥まで進んで止めてくれ」
「了解」
駐車場の最奥で車の向きを変え、即座に飛び出せる状態で停めた。
警戒しながら裏手に回り、中の気配を探る。
「ちょっと待ってろ」
海兵隊のひとりが表にまわり、拾った空き缶を遠くに投げた。
コン、コン......駐車場のアスファルトを転がる音が響き小さくなって消えた。
十秒......二十秒......
何も聞こえない、反応が無い。
裏手に戻り、頷いた。
「よし、行ける!」
一人が静かにドアを開けた。
静かに各部屋を確認してまわった。
建物の中央あたりで薬局が見つかり、その奥が医薬品保管庫になっていた。
「先生!お願いしやす!」
「言い方がおかしいぞ!」
悪徳医師改め、シールズのメディックが医薬品を選び、全員のバックパックに仕分けて限界まで詰め込んだ。
その時、上の階から微かな物音が聞こえた。
「!」
生きた人の気配だった。
「俺が確認して来る」
「じゃ、俺も行く、後ろは任せろ」
海兵隊のふたりが見に行った。
しばらくして、複数の気配と共にふたりが戻って来た。
「感染者はいない。全員無事だ」
「ここの医師がふたりと看護師三人。ほかに患者が数名」
「入院患者がいて離れられなかったらしい」
「ERのフランツだ」
「産婦人科のアンジェリカよ」
「患者は動かせなかったのか?」
「重篤ではないけれど、子供がふたり、手術後の年配と、二十代の骨折患者だった、走れなかったわ」
「それで、逃げる機会を失ったの」
「二階には私達以外、もう誰も残って無いわ」
「そうか......」
「今、俺たち海兵隊は基地を避難所として、生存者の受け入れを始めている」
「ここへは医薬品の回収にきたが、生存者の捜索や救助も仕事の範囲だ」
「じゃあ、連れてってくれるの?」
「ああ、ただし、仕事はしてもらうがな」
「......患者は治ってからな。あはは」
「ちょっと待っててね」
医師と患者でどうするか話し合っていた。
「全員、連れていってくれるなら、そこへ避難したい」
「OK、すぐに荷物を纏めてくれ」
「わかったわ!」
「それと、あんたらの車は無事なのか?」
「......人数が増えたからな」
「私はシビックよ」
「俺はランドクルーザーだ」
「......じゃあ、ランドクルーザー借りていいですか?」
「フランツ先生は運転をお願いします」
「おい、バンをこっちへ回してくれ」
「後ろにマットレスか毛布を積んで、寝られる様にしてやれ」
「了解」
海兵隊員がテキパキと作業を進め、車内が整えられた。
「あら、救急車みたいにしてくれたのね」
「ちと狭いが我慢してくれよ」
バンには、海兵隊の一人が運転、もう一人は助手席で警戒。
アンジェリカ先生と看護師、入院患者らは共に後席へ。
フランツ先生とソルと残りの海兵隊員はランドクルーザーだ。
「全員乗ったな?」
二台はゆっくりと走り出した。
ヨットクラブまでの間に、無線で要救助者を発見、人数が増えたのでRHIBの応援を要請した。
「二艘出してくれるとよ」
フランツ先生の話では、騒動が一旦収まった頃、病院に避難していたのは十二人だったらしい。
当然食料は消費していくので、外へ調達に出なければならない。
動ける者が交代で探しに出ていたが、一人減り、二人減り、三人目も帰らなかった。
その時点で食料は残り一週間分程度しか残っておらず、今後の事を考えているところへ、俺たちが来たそうだ。
「ありがとう、助かった」
「本当にギリギリだった。こんな幸運があるなんて……」
「俺たちはみんな幸運に恵まれて生き残って来たんだよ、先生」
ヨットクラブに着いた時にはRHIBはすでに待っていた。
患者優先で順に乗せて基地に向かった。
乗って来た車はクラブの駐車場に停めておいた。
最後に俺たちは忘れ物がないか確認してRHIBで基地に戻った。
その日、基地ではヘリの整備も終わり、コンテナ中継設備の準備も完了し、明日の搬送設置を待つだけになっていた。
予定では、明日の午後にはフォード島司令部とのVHF通信が回復するだろう。
「設置場所は、ここと、スコフィールドの陸軍基地を結んだ、この山の頂だ」
「え、フォード島との間の山頂じゃなかったんですね」
「陸軍基地も視野に入れて設置した方がヘリの燃料も節約できるからな」
「なるほどね、陸軍とも連携が取れれば復興も早まりますね!」
医薬品回収と避難民救助の報告に行った時に聞かされた。
オアフの復興を実感できる話だった。
ソルは帰りにジョンのクルーザーに顔をだし、夕食をご馳走になりながら今日の出来事を話した。
「でさあ、病院までの間に見かけたゾンビを狙って......」
「当たったのか?」
「才能があるのかなあ、当たるようになってきたよ」
「体のどこかには......」
「これって進歩してるって事だよね!」
「お、おう、そうだな、そのまま練習を続ける事だな」
(MP5SDは撃ちやすい銃なのだが)
ヨットに戻り、今日の成果をノートPCに移した。
「明日は休みだし、編集の続き、いってみよ~!」
『オープニングは......RHIBにミニガンを搭載するシーンから......
序盤は、バイクのスタートからだな......
BGMにちゃんと入れ込んで......
滑走路終端の海上で並ぶ船を......ドローンがあったら俯瞰で見せられたのに。
ここでバイクがゾンビ集団を引き連れて......と。
ここで横からの別集団を発見......っと。
バイクが滑って......、救助のボートが間に合って......
ここからの一斉射撃はノーカットで見せるか......
でも長かったんだよな~
よし、途中カットで......っと。
ここで戦闘終了......っと。
エンディングは、滑走路に座り込んだ隊員が、缶ビール飲んでるとこにしよう!』
今日も朝だった。
いつものようにゾーイとシリアルの朝食を食べ、出来上がった動画を投稿した。
気が付けば、午前九時半。
日本時間では午前四時半だ。
第三弾、タイトルは『海兵隊基地の奪還2』。
動画は公開された。
その日、日本のネット界隈は早朝から騒然となった。
ソルはよだれを垂らしながら深い眠りの真っ只中だった。
ご視聴(ご愛読)ありがとうございました!
面白かったら【ブックマーク登録】や【評価(★)】をいただけると励みになります。
コメント欄の質問には、次の動画(本文)で答えるかもしれません。
次回も、生き残れたらまたお会いしましょう。




