ワイキキ買い物ツアー(前編)
ブラボーチームがワイキキに同行してくれる事になった。
「現役SEAL四人も付いてきてくれるなんて、最高です!」
「これなら回収もはかどりそうですね!」
嬉しそうに言いながらも、スマホ片手にあたりの撮影はきっちりしていた。
ソルのスマホを、誰もカメラだとは思っていないようだ。
燃料をたらふく飲み込んだクルーザーはフォード島を出た。
パールハーバーの海軍基地や、その向こうのヒッカム空軍基地の惨状を間近に見ながらソルが呟いた。
「ここで花火でも上げたら全部港へ雪崩れ込んでくるかな」
「そしたら楽なんだけどなぁ」
「ちょっと待て!今の話マジか?」
「ん?」
ジョンと顔を見合わせて頷いた。
「そういう経験があるって事だよね!ジョン」
「ヒロの港で経験したな」
「ちょっと無線借りるぞ」
ブラボーチームのリーダーが司令部へ急いで今の話を進言していた。
「なんだ、その話、司令部でしなかったのか?」
「いや、水が苦手で入って来ないってのは理解している」
「カイルアでも水路は安全だったからな」
「ヒロの港の話もしたぞ、おまえらも居ただろう」
「岸壁で止まらずに、突っ込んで来た話か?」
「まあ、後ろから押されてたってのもあるんだろうがな」
「そういう事だったのか......」
「人の話はちゃんと聞こうぜ、まったく」
「ガキの頃に母ちゃんから言われただろうに」
「面目ねえ」
「それじゃあ基地の滑走路終端での掃討戦は?」
「あれは、岸壁じゃなくて砂浜だったからな」
「押されて海に入る前にどん詰まりになるだけだろうな」
「先頭をミニガンで倒しても、後ろの連中がその上を乗り越えて押し寄せてくる」
要は、集団を止めずに引き込んでれば、ばらけさせずにまとめて始末できるって作戦だったんだ。
「それに、滑走路の反対側は岸壁になってるんだが、残念ながらサンゴ礁で遠浅なんだ。後始末が大変だろう」
「一万近くは居たからな」
(ジョンはちょっとだけ盛っていた)
ソルはやれやれと思ったが、黙って聞いていた。
クルーザーはパールハーバーを出てアラワイボートハーバーの水路に入った。
相変わらずパーキングエリアでは、ゾンビたちが当てもなく揺れていた。
「見て、浮き桟橋には入って来れないでしょ?」
「あの桟橋のゲートはロックされて開かないから、フェンスの左右から海に零れ落ちちゃうんだよね」
「じっくり見るとマヌケだな、おい」
「だから無傷で脱出できたのか?あははは」
「まあね。ははは」
「でさあ、アラモアナショッピングセンターに行きたいんだけど......」
「「「「はあ?」」」」
シールズの四人がハモった。
「いや、危なくなったらほら、前に水路があるから飛び込めば大丈夫だよ。うん」
「ああ、また死にかけるやつだ......」
「大丈夫だって!みんな特殊部隊の精鋭なんだからさぁ。俺は一般人だけど」
「お前を一般人に含めるのは、もう無理だ」
「「「うんうん」」」
「まあまあ、こいつのおかげで助かったのも事実だろう?」
「言い出したら聞かないし」
「いっちょやってやるか!」
「しかたない、付き合ってやるか」
「ロレックスあるかな」
一行はワイキキヨットクラブの桟橋にクルーザーを留めた。
今回も係留ロ―プは長めにしておいて、ゲートを抜けた。
アラモアナ・ブールバードを渡ると、目の前にはバス停と広い駐車場が広がっていた。
休日なら観光客で埋め尽くされる場所も、今は風に揺れるヤシの葉と、まばらに徘徊するゾンビだけだった。
駐車場の出入口から建物へ入り、エスカレーターを慎重に上って二階へ出た。
ここまではサプレッサーがいい仕事をしてくれた。
気付かれることなく二十匹ほど片付けた。
まるでメタルギアソリッドだ。
(発売は二年後だ)
二階の通路も静かに片付けて、お目当てのアルマーニへ到着した。
白い大理石の床
黒いスチールラック
ダークウッドの什器
まさにジョルジオ・アルマーニの世界だった。
ジャケットのコーナーには、オフホワイトのアンコン仕立てのリネンジャケットが掛かっていた。
これだ!いちど羽織ってサイズを確認し、防水バックに畳んで入れてバックパックに仕舞い込んだ。
薄いブルーのTシャツはなかったが、淡いピンクのがあったのでそれにした。
念願叶った!動画も撮れている!
「そう言えば、ブラボーの誰かがロレックスって言ってたな」
静かに高級時計のショップを探す......あった!さすが高級ブランドが並ぶエリアだ!
ブラボーの彼はデイトナを見付け、大喜び。
キャサリンさんとゾーイのお土産にはシルバーとゴールドのコンビのデイトジャスト。
ジョンは......まあ欲しかったら自分で何とかするだろう。
俺もついでにエクスプローラーⅠを黙ってポケットへ滑り込ませた。
ここでの回収は済んだ。
来た時とは違うエスカレーターに向かう途中、コールハーンのショップに気が付いた。
懐かしい。
「ジョン、ちょっと待って」
「今度は靴か?」
「前にここで買った事があったんだ」
柔らかそうなスエードのスリップオンを手早く選びバックパックへ。
「OK、行こうか」
「マジ買い物ツアーだったな」
そう言ったブラボーチームのメンバー全員の手首にはデイトナが光っていた。
なにげなくジョンの手首に目が行った。
Gショックのままだった。
一階に降りて駐車場出口を目指す。
「フェラーリとかあるのかな?」
「白いテスタロッサとかで良いんだけど......」
(さすがに黒のデイトナスパイダーは無いだろう)
クルマの影を移動しながら呟いた。
「ま、どこかで見掛けたらそこで撮影しよう」
さらに三十匹ほど倒してクルーザーまで戻って来た。
ソリッド・スネークが五人も居ればこんなものかと呆れた。
ちなみに俺は一発も撃ってなかったりする。
安全地帯となっているクルーザーでコーヒーを飲みながら一息入れた。
「ショッピングセンターで俺だけ発砲禁止だったのはなんで?」
「そりゃあ、はずしてガラスに当たったら大騒ぎになるだろう」
「そうなったら俺たちでも捌ききれないからな。あはは」
「集団にさえならなければどうって事ないからな」
「誰かさんのおかげで経験済みだ。あははは」
「そんな事もあったね。ふふふ」
「次はガンショップでホルスターだ!Galco Miami Classicだ!」
ワイキキの逃げ込んだガンショップならありそうだった。
またお邪魔する事になるとは思わなかった。
「今度はどこだ?」
「うーん……アラワイ運河の奥の方だったかな。近くまで行けば思い出すよ。」
「そこから逃げてきたんだよな。」
「そう。ロングボードで運河を下って、ここまで逃げてきた。」
「この船じゃ橋はくぐれねえ。テンダーで行くしかないな。」
「あのさあ。」
「ま、待て!その先は聞いちゃダメな気がするんだが......」
「あはは、大丈夫だって!歩いてハレクラニからそこまで行くだけだから」
(ソルは自分がたどった道を、撮影したいだけだった)
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次回も、生き残れたらまたお会いしましょう。




