フォード島、海軍臨時司令部へ
出発は明日、早朝に決まった。
俺もついて行く事になってた。
パールハーバーならワイキキも通るはず、ハレクラニはどうなったんだろうか......
ピンクのホテルや真っ白なホテル。
新婚旅行で泊ったハイアットリージェンシー......
アラモアナショッピングセンターも気になる。
アラモアナと言えばコールハーンでスエードの靴買ったなあ。
高級ブランドばかり並んでたなあ。
そういえば、アルマーニも入ってたはずだ。
アルマーニと言えば、マイアミバイスのソニー・クロケットだ!
ならば、オフホワイトのリネンジャケットを回収せねば!
それと薄いブルーのTシャツは必須だな!
そうなると、横向きのショルダーホルスターだな。
ロレックスの腕時計とレイバンのサングラス......
いや、手持ちのオメガのシーマスターとアイヴォルのヒースⅢの方がいいな。
レイバンはどうも似合わん。
う~ん......回収する物が多すぎる......
ま、なんとかなるさ!
となれば、『ゾンビがはびこるワイキキでソニークロケットになり切るまで帰れません!』
うん、良い!タイトルまで決まったな。
それでは動画撮影の準備をしなければ!
明日のコーディネートは、パンツはユニクロの白いリネンのパンツと......折角だから基地内のショップで回収したアロハシャツに、バックパック、ベルトの肩のあたりにスマホホルダーを縫い付けて......よし。
「まるで気楽な観光客だな」
......あははは。
遠足前の小学生並みにすべて揃えてベッドへもぐり込んだ。
その時、スマホに並んだ家族からのLINEの通知が見えた。
一瞬悩んだが、見なかった事にして眠りについた。
翌朝ジョンが朝食の誘いに訪れた。
「おい、朝飯食ってけって、キャシーが準備してるぞ」
「いつもありがとう......は、キャサリンさんに直接言いますね」
「おはようございます、いつもありがとうございます、キャサリンさん」
「あら、今日は観光客なのね!フフフ」
「アロハシャツが手に入ったので。えへへ」
「まあ、観光客は首からMP5吊ってないがな。あはは」
「USPも持ってますよ、ちゃんと言いつけ通り」
「それと、フォード島からの帰りでいいんですけど……ワイキキに寄ってみませんか?」
「あんな物騒なとこへか?」
「なんかあったらすぐに千匹、二千匹に囲まれるぞ」
「まあ、水路から離れませんし、集団で溜まってる所は行きませんよ」
「ちょっとだけ、回収したい超大事なブツがありまして......」
「超大事なブツ......ねぇ。ま、想像は付くがな」
「俺から絶対離れるなよ!絶対にだ!」
今日はキャサリンさんとゾーイは安全になった基地で他の子供たちと過ごすらしい。
その後、俺のヨットで帰りを待つ予定だ。
夕食には、俺の取っておきの日本の食べ物を好きなだけ食べて良いとゾーイには言っておいた。
お菓子がかなり減っていたが、黙っておくあたりがおじいちゃんぽい。
朝食が終わり、コーヒーを飲んでると、シールズのメンバーが集まって来た。
「今日はよろしく頼む」
「おう。この船はトローリング用だから250ガロン入る。今は半分切ってる。覚悟しとけよ、あはは」
「じゃあ、行ってくる」
「気を付けてね」
舫いを解いてジョンのクルーザーはゆっくり桟橋を離れて行った。
「お、今日はパールハーバー観光か?」
「戦艦ミズーリも浮かんでるぞ」
「ああ、退役してまだ四年だからな、ほぼ現役艦だな」
「戦艦はやっぱりロマンですよね~」
ダイヤモンドヘッドを回り、高級ホテルが並ぶエリアが見えてきた。
ここを離れる時に見えたSOSのシーツはまだ風に揺れていた。
手を振る者はもう、どのバルコニーにも居なかった。
あの騒動が始まり、逃げて逃げてやっとたどり着いたアラワイボートハーバーが右手に過ぎていく。
やがて、ホノルル空港を過ぎると右に回ってパールハーバーへ入って行った。
海軍の周波数に合わせ、司令部と連絡を取り、岸壁を確認してゆっくりと接岸した。
岸壁では海軍と、シールズの上官が出迎えてくれた。
「送り届けてくれて礼を言う」
「ふたりは民間人かな?」
「まあ、そうですね。詳しい事はこちらの精鋭の面々に聞いて下さい」
「ご苦労だった。報告は上で聞く。全員今すぐだ!」
「は、了解」
「お二方はあちらで休んでいてください」
簡易的な食堂へ案内された。
そこには飲み物の自動販売機が並び、缶やペットボトルが冷やされていた。
「お、いいねえ。じゃあ俺はマウンテンデューにしようかな」
「じゃあ俺はコークだ!」
「あ、お金持ってない……」
「おい、今は全部タダだ。好きなの持ってきな」
近くでレーションを食べていた兵士が教えてくれた。
「ひょっとして、海兵隊の基地でもタダでした?」
「知らなかったのか? 今は非常時だからな。」
「海兵隊基地じゃ、冷たい飲み物なんて無かったような気がして……」
「あっちは停電してたからな。ここは無傷で封鎖できた。燃料もあるし、発電設備も生きてるんだ。」
「M&Msとスニッカーズもいいかな?」
「食べるならここで食べろ、持ち帰りは無しだ」
「孫へのお土産は街で探そう」
ソルは小声でつぶやいた。
「聞こえてるぞ」
そう言えばゾーイが『おじいちゃんみたい』って言ってたなあと、ジョンは思い出していた。
「後は燃料満タンだけだな」
ふたりが冷たい物を飲み終えたころ、ブラボーチームが食堂に入ってきた。
「あ、居た居た!」
「燃料入れてもらわねえと帰りにガス欠だ!ジェントルメンな海軍様は、ちゃんと燃料満タンにしてくれるよな」
(ほとんど減ってはいない)
「あははは、もちろんだ」
「それでだ、司令部から命令が下った」
「俺たちブラボーチームは、海兵隊基地へ連絡員として出向になった」
「はあ?」
「アルファチームはこっちで任務に就くが、俺たちはお前たちと一緒に帰る」
「それはいいが......ちょいと寄り道するんだが付き合えよ!」
「どこへ?」
「ワイキキで楽しいお買い物だ!嬉しくて涙が出るだろう」
「ま、待て!また死にかけるような目に遭うってのか?」
「そういうこった。がははは」
ブラボーチーム全員が、一斉に頭を抱えた。
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次回も、生き残れたらお会いしましょう。




