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ブレイク!ブレイク!

「あのう......もう一つ良いでしょうかぁ?」

「どうした?」

「VHF無線しか使えないって話は本当なんですか?」

「まあそうなんだが......それがどうした?」


「まず、現状の話を聞いて良いですか?民間人なんですけど」

「コオラウ山脈に遮られ、見通し距離しか届かないVHFだから真珠湾には届かない。その理解でいいですか?」


「それで合ってる」

「つまり、基地の発電設備で何とか回せるのは、バッテリー駆動のVHFくらいってことですよね?」


「そうだな」

「だったら、小さめのコンテナに中継設備とバッテリーを積んで、ヨット用の風力発電機を付けるんです。あとはヘリで山のてっぺんに運べば、中継局になりますよね?ヘリがなければ人力でも......」


「......」

「風力発電機はそこらのマリーナへ行けばごろごろ転がっていますよ。みんなそれ付けてますからね。俺のヨットには付けて無いですけど」


俺の説明が部屋の全員の頭に入るのに少々時間がかかった。


「それは......」

「そんな簡単に通信網が回復できるのか......」

「ちょっと待っててくれ!」


そう言って少佐が部屋を飛び出していった。

「おい、日本人ってのはすげえな」

(いや、それ日本人じゃなくてヨット乗りだから)


飛び出していった少佐が、通信担当技官と航空担当を連れて戻って来た。

「その話、詳しく聞かせてくれ!」


「ハレクラニの昼飯から説明します?」

「おまえ、絶対わかってて聞いただろ!」

「あぁ、はい」

俺はそれまで話した内容を、再度説明する羽目になった。


「とまあ、こんな感じですかね」

「細かい事は専門家がやってくれると信じてます、はい」

「参考になりそうですか?」


「これならすぐにでも作れそうだ」

「それじゃあ、代わりと言っては何ですけど、お願いを聞いてください」

「なんだ、大抵の事は聞けるほどの情報だったぞ」


「銃の手入れが出来る職人?ガンスミスみたいな感じの人と工房を使わせてください」

「???」


「最近手に入れたコルトSAAのカスタムを手伝って欲しいんですよね~」

「あ、あと、早打ち出来るようなホルスターもつくってほしいなぁ......ベルトの背中側に付けたいんですよね」


「どうなってんだ?こいつの頭ン中見てみたいぜ、まったく」

「えへへへ、だってカッコイイじゃないですかあ~」


「それが出来たらもう一つ、良い事思いついたんで、SAA片手に披露しましょう!」

「もったいぶらずに今白状しろ!」

「ひぃっ、あ~はい。じゃ、ヒントだけでいいですか?」


「本当に今思いついたんですけど、アマチュア無線ならどこにでも届きませんか?」

「それに、これくらいの小型で電気も食わないし、地球の裏側とも話せますよ」

「軍の設備でもHF帯は使えるが、大掛かりだから消費電力もバカにならんが、そんな小型でもいけるのか......」


「だ、だってVHFの話してたら思いついたから......はい」

「お前の船には積んであるんだろう?」

「まあ積んでますけど、あげませんよ!俺のだから......」


「住宅地で庭に大きなアンテナ立ってたら、そこにアマチュア無線機有りますよ、たぶん......」

「それを回収してくださいよ」


そんなことより俺には大事な事が待っている。SAAのカスタムだ!

「それより、約束は守ってくださいね、ガンスミスと工房の件」

「わ、わかった......」


報告会が終わると、基地中がてんやわんやの大騒ぎになった。

島内のマリーナを回って船の風力発電装置を回収し、住宅地を掃討しながらアマチュア無線設備を集める。


そうして、なんとか中継コンテナ三基の完成にこぎつけた。

運搬用のヘリ、UH-60(ブラックホーク)は動かせるようになるまで整備に時間がかかる。

設置はもう少し先の予定だ。



そんな騒ぎを横目に、俺は約束の工房へ向かった。

「銃身はもう少し短い方がいいかな、3インチまで切りましょう」

「早撃ち用か、フロントサイトは無しのままで良いな?」

「はい、ナシで。ホルスターや服に引っ掛からないようにです、はい」

「わかってるじゃねえか!」

「で、そこにマグナポートを三本入れてください」

「ハンマーはどうする?」

「ホントは上向きにしたいんですけど、先っぽに丸い球でも溶接で付けようかな」


「う~ん、こんな感じか?」

「良いですねぇ、カッコイイ!」

「こりゃ良いな、ついでに俺も作ろうかな、一丁も二丁も手間は同じだからな」

「それは良いですね!仲間が増えた」


「で、ホルスターはどんな形だ?」

「腰の後ろ側で、そうそう、横向きにして...さっと抜いて......パパパパンッ!って感じです!はい」

「なかなか面白いこと考えてんだな、ほ~う、なるほどな」

「よし、だいたい判った」


「両方とも来週までには仕上げておく。」

「はい、お願いします」

出来上がりが楽しみで、ウキウキしながら工房を後にした。


ヨットに帰ったソルは、久しぶりにアマチュア無線のマイクを取った。

「CQ、CQ、CQ」

「こちらKH6 /JZ1ABC、KH6 /JZ1ABC」

「日本人ヨット乗りです」

「どなたか受信されていましたら応答をお願いします」


「……こちら KH6RS」

「JZ1ABC、58で受信しています」

「ハワイ島の山間部です」

「現在七家族で共同生活中」


「応答があるとは思いませんでした」

「こちらカネオヘ海兵隊基地に避難中です」

「こちらも生存者多数です」

「良かった……本当に良かった」


会話が終わるとソルは、ジョンに知らせるためヨットを飛び出した

ジョンは隣のクルーザーで夕食前のビールを飲んでいた。


「ねえねえ、ジョン。HF無線に応答があった!」

「え?どこからだ!」

「ハワイ島の山間部だって言ってた」


「街中はもう駄目だと思ってたが、山ン中なら生存者が居るって事か!」

「ソル、少佐んとこ行くぞ!」

ふたりは、そのままニック少佐のところへ報告に向かった。


「お~い、少佐!」

「どうした、ジョン、飯の誘いか?」

「ハワイ島の生存者と連絡が取れたんだとよ。ソル!」


「あ、はい。ヨットのHF無線で呼び掛けたら応答がありました」

「本当に応答があったのか?」

「はい。ハワイ島の山間部で七家族が共同生活中だそうです」


「……そうか。」

「HF設備を最優先で組み上げろ」

「急げば明日には運用できる。ソル、明日もう一度来てくれ」

「そ、そうだな、明日また来る」


「でもよく生きてたなあ」

「ほぼ自給自足みたいな感じらしいよ」

「もともとあの島は広い割に人口が少ない、そのまた山間部の小さな集落にはゾンビも来れなかったのかもな」


翌日。

午後になって司令部のHF局が完成した。

「CQ、CQ、CQ」

「こちらKH6 /JZ1ABC、KH6 /JZ1ABC」

「こちら KH6RS」


最初の応答が返ってきた瞬間、司令部の空気が変わった。

司令部の全員が顔を見合わせた。

本当に繋がった。

ハワイ島との通信が成立したのだ。


「JZ1ABC、58で受信しています」

「こちら海兵隊司令部」

「JZ1ABCの協力で試験運用中です」

「責任者に替わります」


「そちらの状況はどうですか?」

「街には近づけない状態です」

「こちらは電気、水、細々と食料は何とかなってます」


ハワイ島の局がPTT(送信ボタン)を離した瞬間だった。


「ブレイク!ブレイク!」

「ブレイク!こちらKH6RSではありませんが、よろしいでしょうか」

「ブレイク!こちらKH6GS。今の交信、聞こえています。こちらも生存しています」

「ブレイク!こちらカウアイ!」

「ブレイク!こちらマウイ!」

「ブレイク!こちらモロカイ!」


通信士たちは次々と入るコールサインを書き留めるだけで精一杯だった。

「少佐! 四局同時です!」

「いや、五局目です!」

ハワイ諸島の島々から割り込み要請で司令部はパニック状態に陥ってた。


「毎日20時、この周波数で安否確認をしましょう」

「各島の代表局は状況を報告してください」

ハワイ全土を結ぶ連絡網が、今まさに生まれようとしていた。


この情報は、一刻も早くフォード島司令部へ伝えなければならない。

「少佐、これは待っていられません」

「フォード島へ戻って報告すべきです」

「待機任務は海兵隊へ引き継げます」


ニック少佐も即断。

「中継コンテナ施設は海兵隊基地が責任を持って設置する」

「君たちはフォード島へ戻って司令部に報告してくれ」


「ジョン、予定を変更したい」

「フォード島まで送ってくれ」

ジョンはビールを置いた。

「しょうがねえな」


「燃料は満タン返しだぞ」


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次回も、生き残れたらお会いしましょう。

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