ゾンビの弱点......とは!
四艘のRHIBが燃料桟橋に着いたのは午後六時ごろだった。
俺たちのボートの中は激戦の疲れかほぼ全員が居眠りしていた......ようだった。
「今日は全員ゆっくり休んでくれ」
「明日朝八時に、シールズ八名と、ジョン、それにソルは、本部に出頭。報告だ!」
「解散!」
「やれやれだぜ」
「まずはなんか食うか?」
臨時の食堂へ案内した。
「お、今日はチリビーンズか。当たりだな」
「チキンシチューある奴いないか?」
「M&M付けるなら考えてやる」
「俺は、野菜オムレツか......誰か交換......」
「......全員、目を合わせないように黙々と食べ始めた」
和気あいあい?と食事を済ませ、宛がわれた宿泊施設のコテージまで、支給された缶ビールを提げて引き上げていった。
俺は燃料桟橋の横にあるマリーナに留めてある自分のヨットに引き上げた。
「ジェットコースターみたいな一日だったなあ」
「でも、たくさん動画が撮れたな、早速編集しよう!うひひ」
「と、その前にMP5の分解掃除だな」
「ブラボーチームのあいつらに『このMP5SDのサプレッサーは特殊だから撃ったらすぐ掃除だ』って耳にタコができるほど言われたし」
テキパキとは言えないが、それでも丁寧に分解清掃を終えた。
その後、今日撮った動画をノートPCに移し、編集の方向性をあれこれ考えていると夜は更けて行った。
動画編集ソフトはPremiere Proにした。
サブスクも問題なく通った。
俺が使ってるノートPCは、14インチ、i7、RAM32GB、SSD512GBだ。
動画編集に使うには充分だろう。
インストールして、YouTubeで解説動画を観て、AI先生に聞きながら練習してみた。
むふふ、なかなか良い感じに出来た!
よし、これならチャンネル紹介動画くらいなら作れそうだ。
ここをこうして......。あ、これは?こっちはこうする?よし、保存っと。
えっ、なぜ消えた......トホホ。
(マジでトホホって言うやつがいた......)
隣に留めてるクルーザーからジョンがコーヒーをもってやって来た。
「おはよう!よく寝られた、か......?」
「あ、おはよ~?......ジョン......」
「え、もう朝だったのか」
「なんだ、一晩中ビデオでも観てたのか?」
「あ~コーヒーありがとう。うん、まあそんな感じ」
「八時に集合だ、十分前には迎えに来るから準備しとけよ」
「了解!」
広げてた物を片付けて、シャワーを浴びて着替え、迎えに来たジョンと本部へ来た。
シールズのメンバーはすでに待っていた。
「おう、銃の整備はちゃんとしたか?」
「はい、カンのペキです!」
「そうか、よし!」
「司令官入られます!」
俺以外が、ザッと踵を鳴らし敬礼した。
(この瞬間だけはみんなカッコイイな)
「昨日はご苦労だったな、座ってくれ」
少佐もきっちりと答礼を返して着席を促した。
「まずは、海軍の方はどうなってる?」
「空母と揚陸艦、補給艦とイージス艦三隻が感染を免れています」
「それぞれ、入港前と、接岸準備中でした。」
「なにぶん混乱しておりましたので、フォード島への連絡橋はコンテナで封鎖し、島側に防衛陣地を構築。M2を2基設置して警戒中です。
先の無事な艦艇は順次接岸して待機中です。
民間人も多数......現時点で人数の把握は出来ておりません。
ヒッカムとは連絡途絶中です。被害者が多数とみられ、手が付けられない状況です。
今回、我々八名で海兵隊基地の偵察と接触の命令を受け、アルファ、ブラボーの二チーム別ルートでこちらに向かう途中、大学で避難民の救助活動を確認。
接触後、避難民とともに港まで移動しました。
その後、基地へ向かう手はずでしたが、急遽アルファチームより救援要請があり、ご協力を得てアルファチーム、民間人双方の救出に成功いたしました。
以上です。ご協力に感謝いたします」
「状況は理解した」
「そうなると、まずは両基地の連絡網を確立しないとだな」
「現状、VHFしか繋がらんから山向こうの海軍基地とは連絡手段が無いのだ」
「まあ、それは急ぎで検討しよう」
「それで、ジョンの方からは何かあるか?」
「その報告の通りで間違いないですね」
「今回もソルの作戦で無傷で生還できましたしね」
アルファチームの一人が冗談めかして口を開いた。
「ブラボーチームから三名ほど死にかけたと聞いてます」
「ぶ、ぶはははは」
ブラボーチームの選ばれなかったひとりが思わず噴き出した。
「笑いごとじゃなかったですけど、有効な作戦でしたね。......ぷぷぷ」
アルファチームのリーダーもそれに乗っかった。
彼らにとっては、危険な作戦も笑い話にできるメンタルの強さに感心した。
「ひとつ聞きたいことがあるんだが......ジョン」
「ゾンビ共は海、いや、水に入れないのか?」
「それは、滑走路終端での掃討戦の時に説明したじゃないですか?」
「ゾンビは水が苦手だから海に浮いてたら安全だと」
「いや、それは聞いていた。だが、私は『海に入ると動きが鈍るから安全』という意味だと理解していた。」
「俺が説明するよりソル、お前から説明してやれ」
「え、お、俺ですか?」
「そうだ、お前が発見して、ワイキキでも、コナのマリーナでも桟橋で無双したんだからな。しかも無傷でときたもんだ」
「え~っと、最初からがいいですか?長くても引かないでくださいよ」
「長すぎたら適当に切るから話せ」
「まず、ハレクラニで本日のシーフードを注文して......」
「そこは飛ばしてもいいかな」
(即切られた)
「そうですね、ワイキキで逃げ回って、運河に逃げたんですね、そこからサップに乗ってボートハーバーまで漕いでいったんです。
自分のヨットが留めてあったんで。
それで桟橋に辿り着いたんですが、マリーナの桟橋ってフェンスで仕切ってロックが掛かってるんですよ。
その時に、俺を目掛けてゾンビが殺到して来たんですけど、フェンスが邪魔で、左右に岸壁から落ちてったんです。
それっきりですよ!浮いてもこないし。
それで悠々とワイキキを脱出できたんです。
コナに行った時には、桟橋のロックが開いててゾンビも入って来れたんですけど、狭いじゃないですか。
なので、ボートフックで引っ掛けたら行けるんじゃないかと考えたわけです。
それでやってみたらうまい事いって、あらかた片付けたんですけど、最後のヤツに引っ掛かって抜けなくて一緒に桟橋から落ちちゃったんですよ。
焦りました。
で、泳いで桟橋にしがみ付き、這い上がって無事に切り抜けました。
そこへジョンが車でやって来て、殺されると思って隠れてました。
が、とうとう見つかって『うるせえ、これでも喰らいやがれ......パーン!』って撃たれなくて、今ここって流れです。......ふぅ」
「長かったなあ、おい」
「ま、こんな感じだ。海に落ちたら浮かんで来ねえ。それは俺もヒロの港で見た」
「つまり、水に落ちた個体は自力で水面へ戻ってこれない。少なくとも俺たちが確認した限りではな。」
「そうか、それで納得した」
「昨日、お前たちを救助に向かう途中、カイルア湾のビーチでな、波打ち際まで俺たちに向かって来たんだが、それ以上近づいてこなかった。いや、来れなかったと言った方が正確だな」
「だから確認したかったんだ」
「ありがとう、凄く貴重で重大な発見だ!これで優位に立てるかもしれない」
「俺たちもこの情報を持ち帰っていいでしょうか、少佐!」
「もちろんだ」
ここにいる全員に、ほんの少しだけ未来に希望の光が見えた気がした。
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次回も、生き残れたらお会いしましょう。




