シールズなら泳げるよね
はい、どうも~、MCのソルトです。
いつもご視聴いただきありがとうございます!
今回はですね、前回から引き続き登場の、
シールズ・ブラボーチームの皆さんです。
「前回はペプシ飲んで終わりでしたが、今回は活躍できそうですか?」
「あのなあ、無茶ぶりが過ぎ......!」
「......はい、ありがとうございました~」
それでは今日もハワイを生き延びます。
カイルアに向かうバスの片隅で、ソルはiPhone13と15のバッテリー残量の確認をしていた。
結構素材も撮れたな、バッテリーの残量は……残り少ない。
13で撮るのはカイルアまでだな。着いたら15に交換だ。
帰りは……いや、帰りまで持つかな。
ソルはチェストリグの胸ポケット付近に、今でいうボディカメラみたいな感じでスマホを固定し、上陸時から動画撮影していた。
自分が撃った弾がゾンビに当たり、倒れるまでの映像は切り出して保存した。
ムフフ。上機嫌だった。
(正確には狙いが外れた弾が足にかすってたまたま倒れただけだった)
「こんな事ならモバイルバッテリー、もっと買っておけば良かったなぁ……」
「『こんな事もあろうかと』……って、一度は言ってみたいセリフ上位だもんな」
ブラボーチームの四名はそれぞれレーションを食べていた。
食べられるときに食べておくのがプロっぽくてかっこいいと思うソルだった。
「日本人……だよな? 中東のコントラクターにしてはなんか変だが……」
「着てるもんはキレイなもんだし、MP5SD6だろそれ、おまけに提げてるモノはUSPのコンパクトか? どうもチグハグだな」
「いやぁ、見る人が見ると分かるんですね」
「『こんな事もあろうかと』って聞こえてな、日本の古いことわざだろう?」
「ヨコスカのイザカヤで聞いたことあってな」
「ことわざ……まあ、そうですね、古くからあることわざです。はい」
「ヨコスカですか? 日本の古い戦艦が置いてあるとこですね!」
「ああ、三笠か。あれは良いなぁ。古き良き時代の戦艦だ」
ブラボーチームの隊員たちは興味津々といった様子で、代わる代わるソルに話しかけてきた。
「で、おまえはここで傭兵のまねごとでもやってるのか?」
「日本人ならオタクだろう? そうか、軍事オタクってやつか?」
「いつも山で戦争ごっこしてるんだろう?」
「本物撃ったことあるのか?」
「納豆はマジ食い物なのか?」
「はいはい、まあだいたいそうですね、その通りです」
「傭兵の恰好だけまねして、自称軍事オタクで戦争ごっこは一度だけ。本物の銃は、今日五十匹ほど撃ちました! あと、納豆は……主食です! はい」
(たしかに撃った……当たったとは言ってない)
(あと、納豆は関西では無視されている)
和気あいあいとした車内の空気はカイルアのショッピングモールへ差し掛かった瞬間までだった。
ブラボーチームの表情が瞬時に切り替わり、戦闘に備えた。
「立て籠もってる位置と人数を聞いてくれ」
チームリーダーが無線で確認をとっていた。
「Targetターゲットカイルア店の南隣、サブウェイの入ってる建物の屋上まで逃げたが、ゾンビ共が集まり過ぎて降りられなくなったらしい。アルファチーム四名と民間人二十二名、合計二十六名だ」
「おれらと合わせても三十二だな。大丈夫、いける」
「弾の補充は済んでるな?」
「真っ先に済ませてある」
「予備も合わせて十二本とも満タンだ」
「ま、癖になってるからな」
「俺も大丈夫だよ、得意だからね。フフ」
スクールバスはモール南側の道路に沿って目標の建物に近づいていくが、ゾンビの数が多くて近づけない。
「ここでバスは放棄、川沿いに徒歩で向かう」
「全員下車!」
「ジョン、ちょっといい?」
「どうした? なんか違和感でもあったか?」
「街に入る時に渡った橋のとこにボートヤードがあったから使えないかなと思って」
「そう言えばあったな」
「ああ、あった」
「……この川は確か、カイルアビーチパークまで繋がってたはずだ」
「ソル、普段は何考えてるか判らんが、ピンチになると頼りになるなぁ……おい!」
「使えるものは何でも使わないとね! ジョン」
「戻ってボートを調達しよう!」
なんとか使えそうなボートが三艇見つかった。
「帰りは定員オーバーだが、デッキに乗るなりロープで引っ張るなりすればビーチまでいけるだろう」
「シールズなら泳ぎも得意だろうからな! あははは」
三艇のボートに乗って次の橋の手前、タイヤショップに接岸し、静かに上陸した。
ショップの駐車場に彷徨うゾンビをサプレッサーの付いた727カービンで減らしていく。
「シールズも全員M4にサプ付けてるんですね」
「M4じゃなくてモデル727カービンな」
「俺たちは心臓が弱いからな、大きな音は苦手なんだ」
「そそ、話すときも小声で囁いてるんだ」
「マリーンは声がデカいしな」
「おい、聞こえてるぞ」
「「「「へーい」」」」
「あそこの角、搬入口になってるとこ、あそこにトラックかバンで突っ込む」
「そうすればその荷台、車の屋根。ボンネットと伝って降りてくれば早いと思わないか?」
「その為には目の前の道路を掃除しないが、その秘策はある!」
「集団自殺作戦がな。そうだろソル」
「今回は、ピックアップがいいですね、バイクは危険なので。荷台で大騒ぎかまして、モールの反対方向へゾンビ集団を引き連れていってですね、この辺りのゾンビが居なくなった瞬間に生存者を救助するわけですよ。それで救助が完了したらピックアップ組は川にでもダイブして、得意な泳ぎでここまで戻ってきてくれたら合流できますよ!って感じですかね」
ピックアップ組の人権を軽く無視したような作戦を平然と披露した。
「すげえ事平然と言い放ったぞ、この日本人」
「あの口ぶりならピックアップ組は俺たちだろうな」
「間違いねえ」
「やっぱりバンザイ突撃の日本人だけの事はある」
「それじゃあ、囮役はタフガイの見本といえるシールズの精鋭に任せるかぁ」
「ピックアップに乗るのは三人な。あと一人はここで手伝ってくれ」
「「「「……」」」」
四人の中で最悪のくじ引きのゴングが鳴った。
あえなく決まった三人はため息ひとつで切り替えた。
使えそうなピックアップに乗り込み、スタンバイ。
「撃ちまくるのはあいつらだ。各自、予備マガジンは二本! 残りの弾は全部、荷台の木箱へ放り込んどけ!」
「こりゃ最高のクリスマスプレゼントだ。涙が出そうだぜ!」
かき集めたマガジンは、二十本を超えていた。
「MJのスリラー無いですかねぇ、基地ではかけ損ねたんで」
「おまえ、それ好きだなあ~おい」
「シャレが効いてると思うんですよね~」
「残念ながらスリラーは無かったが、ビートイットが有ったぜ!」
「お、それいいねぇ、いってみよう~!」
「派手な音楽は大音量な!」
タイヤセンターのパーキングの反対方向の出入り口からボリューム最大にして道路に飛び出していった。
避難民がいる屋上は道路を挟んだ目の前だ。
周辺のゾンビには刺激せず、ピックアップに引き寄せられて行くのを待っていた。
手頃なトラックの準備もできて、いつでも飛び込める。
ピックアップは空いていたパーキング内を走りまわり、派手な音楽と銃撃でゾンビ集団を引きつけていた。
集団の最後尾が百メートルは離れたのを確認してトラックは搬入口に突っ込んだ。
屋上ではアルファチームも民間人たちも、固唾をのんでこの瞬間を待っていた。
アルファチームと協力して民間人を順に降ろした。
タイヤセンターへ誘導し、ボートへ乗せた。
皆、慌てることなく声も出さずただ指示に従った。
民間人は全員ボートに乗り込んだ。
「操縦はソル、ブラボーチームのお前、アルファチームは四人全員乗り込んで、誰かひとり操縦してくれ」
「ジョンは?」
「あいつらに押し付けた手前、俺もあいつらと一緒に泳ぐさ。ガハハ」
一方ピックアップ組は......
荷台のひとりが進行方向の排除。
もうひとりは後方の警戒と左右の排除。
ふたりとも連射こそしないが撃ちっ放しだ。
うまく集団を引っ張らなければ、ばらけて戻るやつも出て来る。
そうなると民間人を抱えたあいつらがかなりマズイ状況になる。
へたしたら囲まれて全員食われるかもしれない。
この状況でもスピードを出して逃げ去ることができないのだ。
荷台から報告がきた!
「最後尾、想定ラインを越えた!……ラインを超えた!」
「了解!」
ドライバーは川の方にハンドルを切った。
アクセルを踏み込むと橋が迫って来る。
「全員下車! 飛び込め~!」
「さすがに車ごとダイブは無理だったな、ははは」
「そんなことしたら怪我人が出るぞ、ははは」
「帰ったらジェシ……グヴォッ」
「だまれ! それ以上言うな!」
水面から顔を出した三名はホッとしたように軽口を楽しんだ。
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