自称ミリオタ60歳は恰好から入る
基地の復興は順調に進んでいた。
重機を使って死体を処理し、軍の施設で使えるものは補修、整備された。
避難していた隊員の家族達は、一旦自宅へ戻り室内の片付けが始まっている。
戻る住人がいなくなった住宅は隣人たちが片付けを手伝う。
それぞれが皆忙しく働いた。
俺とジョンは外に取り残された隊員を基地への移送と補給担当を引き受けた。
要は、連絡の取れた隊員へ、弾薬や食料の補給と、希望者は基地へ連れて帰る担当だ。
簡単なお仕事に見えるがそうでもない。
最初はボートが接岸できるところまで来た隊員を乗せて帰って来るだけだった。
だが、海岸から離れたとこで孤立してしまっている隊員の撤収要請が増えてきた。
そうすると、サポート要員も増えてくる。
タクシー運転手みたいな感じでは手が届かない所が多くなってきていた。
そんなこんなで今週は、基地内のコンテナや倉庫の整理の仕事がまわってきた。
『こ、これは宝さがしか?ムフフ…』
めちゃくちゃ大変だった。
だがしかし、それは二日目に起こった!
その日六個目に開けたコンテナが、ヒロの港で見たのと同じ、本土返送品の比較試験資材コンテナだった。
早速開けて確認作業に入ると......お宝ではなく、ごく普通のMP5とM16。
ハンドガンはM9とグロック、他に......すぐに名前は出てこないがトライアル候補?的な感じで十五種類ほどがハードケースに収まっていた。
『ちょっと期待していたが、まあそんな都合よくはいかないよね…...あはは。
あ、そうだ、この機会に普段使いのを頂いちゃおうかなぁ~どうせ比較試験も終わって本土返送待ちなんだし……この中でもそこらに転がってるような銃なら誰も気にしないよね!
ん~、じゃ地味なMP5と......お、これサプレッサーが付いててお得かも!SIG P226はたしか特殊部隊御用達だったな......、目立つから無しっと。お、ブローニング・ハイパワーがあった......L9A1!これは......英国ドラマ、S.A.S.のヘンノが持ってたヤツ!よし、回収っと。
あ、いかんいかん、普段使いに適当な......、USPでいいか。お、握りやすいな。まジャックバウアーでもいいか、普段用とはいえ、少しはこだわりがあるっぽくね。回収っと』
(そのMP5はSD6で、USPコンパクトは最新だった)
何食わぬ顔でコンテナの整理は終了っと。
次のコンテナは~
次の週はボートでお迎えの予定が入ってる。
今回はボートの留守番だけではなく、遠くないとはいえ住宅地の奥まで迎えに行く事になっている。
さすがに桟橋ならともかく魔剣マサムネだけでは心もとない。
と言う事で、昨日手に入れたUSPを太腿のホルスターへ。
MP5はスリングで吊り下げた。
コスチュームはベージュのキャップにサングラス、黒いポロシャツ、チェストリグ、ベージュのカーゴパンツ、そして同じくベージュのブーツ。
「ムフフ。次回の出撃はPMC風なのだ!ポロシャツはユニクロだけどな」
(それ以外は昨日別の倉庫で回収した)
なかなかいい感じにコーディネート出来た。
(また鼻の穴が広がってる)
そういえば9mm弾は持ってなかった、ジョンにわけてもらおう。
その姿のまま、L9A1も持って船を訪れた。
「ねえジョン、9mm弾が欲しいんだけど......」
「今日は物々しいなあ、おい!まるでアフガンの傭兵だな、フハハ」
「どれ、見せてみろ」
MP5とUSPとL9A1を差し出した。
「......」
「お、おまえ!これどこで手に入れた!」
「えっ、いや、普通に落ちてたんで拾いました」
「んなわけあるか!まず、これ!」
ジョンはMP5を指さした。
「こ、これは…サプレッサーが付いてて得したなと思って拾いました」
「バカか!これはMP5 SD6っつって特殊部隊でしか使わないような代物だ」
「ひぃっ」
「で、これは?」
「いやぁ、これも警察みたいな普通のとこで使ってる銃ですよね?ありふれた。アハハ」
「これはUSPコンパクトっつって海兵隊でも最近テストしだした最新機種だぞ」
「ひゃいっ」
「で、これは?」
「こ、これはですねぇ、以前お世話になった方からの頂き物というか、なんというか・・・・・・はい」
「まあ、これは普通だな」
「で、なんでお前が持ってる!」
「ゴメンナサイ。全部コンテナで見付けました。本土返送品って書いてあったからいいかなぁ~…って思って」
「見た目普通だったし......」
「はぁ、......まあいい。使い方は判るか?」
「いやぁ~あはは......」
「しょうがねぇヤツだな、まったく。......今から撃ちにいくぞ!」
すぐにテンダーに乗ってレンジまで連れていかれた。
まずは、ハンドガンから。
ジョンは手慣れた様子で分解から組み立てまであっという間に終わらせる。
「…す、凄い!」
「おまえもやってみろ!」
あたふたと教えられた手順に従って繰り返しやらされた。
「だいたい慣れてきたな。じゃあ、次はこっちだ」
次はMP5の分解だ。
「あ、はい」
何度も何度も繰り返しやらされた。
「ソル、これは目を瞑っても出来るように身体で覚えておけ!」
「ひぇっ」
「現場では命に係わるぞ」
一通り分解整備の手順を覚えたら、いよいよ射撃だ。
まず、姿勢から叩き込まれた。
「そうじゃない!もっと脇を締めて~、肘を伸ばすな、もう少し余裕を~」
「おまえ、どこでそんな撃ち方覚えてきた?……って、日本人だったな」
「いやぁ~映画とドラマで見て覚えましたよ!カッコよくキマるようにです。はい」
「全部忘れろ!一から教えてやる!」
その日から週末までみっちりジョンに扱かれた。
訓練係の鬼軍曹とはまさにジョンの事だった。
......はぁ......もう無理、死ぬ......
(体は三十歳なので明日には回復する)
翌週の出撃までには分解組み立ても出来るようになった。
ジョンの百分の一程度の速さではあったが。
射撃姿勢はどうしてもカッコよさ優先が染みついていた為、苦労していた。
それでも変な撃ち方にしては結構当たるようになってきた。
「なんか変なんだが......まぁ、銃ってのはちゃんと撃てて当たれば充分ってのもあるしな。まぁいいか」
「しかし、メキシコのギャングみたいな撃ち方だなぁ、おい。あははは」
「そ、そうですかね?」
『ヨットに戻ったら24をネットフリックスで観て研究だ!ネット生活最高!内緒だけど』
「あ、そうだ。ジョンはSAAで早打ちって出来ます?」
「ま、ジョンウェインほどじゃないがな」
「それじゃあ教えてくださいよ~」
「こう、腰の後ろに横向きに挿したホルスターからシュッっと抜いてババババーンって感じで目の前の六人を倒すとかなら余裕ですよね?」
「......」
(ジョンはちょっとだけ見栄を張った事を後悔した)
「まあ、そのうちな」
「さすが、海兵隊の特殊部隊出身だけはあるなぁ。かっこいいなぁ」
「だったら目隠して放り投げたコインとか撃ち抜けますよね!」
「なんたって特殊部隊なんだから当然かぁ......えへへへ楽しみぃ」
(ジョンはどう切り抜けようか真剣に悩み始めた)




