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カネオヘ海兵隊基地奪還

作戦開始当日。

司令部のシューティングレンジのゲートをバイクが出発していく。

後部荷台にはラジカセが固定してあった。

大音量で『Livin' on a Prayer』を鳴らし、住宅地域を周回しながら集団を育てる。


良い感じに引き連れながら軍関係の建物や施設群に入り、順調に育てていった。

その頃、ミニガンを搭載した6艘のRHIBが弾薬を満載して燃料桟橋を出て滑走路北側へ向かった。

バイクは、そのまま滑走路の中央部で周回している。

ゾンビ集団は巨大なひとつの生き物みたいにまで育っていった。


滑走路終端のノースビーチ沖には6艘のRHIBと、CRRCが浮かんでいる。

司令船として回収したクルーザーのフライブリッジには俺とジョン、ニック少佐も乗っている。


準備は整った。


「開始」


少佐は短く宣言した。


今まで周回していたバイクが滑走路終端にゆっくりと向かってくる。

付かず離れぞの距離を維持しての走りは相当なストレスだろう。

船に乗っている全員の目は、ゾンビの群れを引き連れて来る前方のバイクに集中していた。


俺はコソコソとスマホで撮影中だ。

素材集めが目的なので、いろんな方向を撮影していた。

ふと、左方向で何かが蠢いて見えた。

ゴルフ場の方角だ。


「ジョン、あれ見て!急いで!」

ジョンは双眼鏡でその方角を確認した瞬間、無線のマイクを引っ掴んで叫んだ。


「まずいぞ、このままでは囲まれる!左方向ピラミッドロックへっ全開で回り込め!」

ゴルフ場から続く、伸び放題だった草の間から別のゾンビ集団が滑走路に達しようとしていた。

それまで後ろを引き離さないよう気を付けて引っ張ってきたが、進行方向右手前方に集団が現れたのだった。


さらに左手方向は未掃討エリア。

どれだけ残っているか不明。

バイク担当はフルスロットルで左に寄せてすり抜ける他ない。

タイミング的に危うい状況だった。


海上からの援護は射線の関係で集団後方しか撃てない。

せまる集団の先頭をかわした直後、足元の一匹をタイヤで巻き込み転倒。

そのまま滑走路を滑り終端からビーチへ転落……動かない。


救難チームのCRRCが砂浜へ突っ込み、隊員二人が飛び降りる。

転倒した海兵隊員のドラッグハンドルを掴むと、そのまま力任せに艇まで引きずった。

二人がかりで艇内へ放り込む。


波打ち際まで迫ったゾンビの腕が空を切る。

エンジンが唸り、CRRCは砂浜を蹴って離岸した。


射線が空いたのを確認後、ニック少佐がマイクに叫んだ。


「撃て」

三艇からは待ちかねたように機銃掃射が始まった。

ここまできたらもう止まらない。だれにも止められない。


ビーチの波打ち際までは迫って来るがそこまでだ。

三艇ずつ交代で撃ち続けた。


かつて仲間だった者たちを自分の手で撃ち続ける。

その異常な現実に飲み込まれるように、誰一人トリガーから指を離せなかった。


「絶対に射撃を切らすなよ。群れを散らせば、今日の苦労はすべて無駄になる。」

ニック少佐が低く言った。



全弾撃ち切った艇は下がり、銃身を冷やしながら弾薬の補給。

その後ろで待機していた三艘が引き継ぐように射撃開始。

その繰り返しは弾が尽きるまで続いた……


現場に静けさが戻ったのは午後六時過ぎ。

あと一時間もすれば陽が沈む。


滑走路の奥から桟橋周辺の警備と監視に就いていた隊員たちが歩いてきた。

撃ち漏らしを探して処理しているのだ

戦闘中、あの地獄の業火のような滑走路内には入れるはずもなかった。


基地内の九割以上は倒した。

残りはどこかに閉じ込められてるか、木にでも引っ掛かって動けないとかだろう。

周辺パトロール程度でなんとかなる。


これでカネオヘ海兵隊基地はグリーンゾーンとして復活できた。

それでもまだ、オアフ島全域の解放は遠い。

だが、その一歩は確実に踏み出せた。


現場では交代で見張りに立ち、残りの隊員達はひとり一本だけ許された缶ビールを片手に座り込んで飲んでいた。

内容的には大勝利だったが、皆静かに飲んでいた。

「失った仲間たちに!」

何処ともなくそんな声が聞こえてた。

死体の処理は明日に回したようだ。


あとは巡回して残りが片付けば、一週間後には避難民が自宅に戻れそうだ。

これで外部の連中も迎え入れる事が出来る。

それ以外にも、陸軍や海軍、空軍、州兵の生き残りも纏め上げればそれなりの規模になるだろう。


「今日だけは良いかな」

ニック少佐はキャビネットからマッカラン18年を大事そうに取り出し、グラスに注いだ。

大尉の昇進祝いにおやじから貰った酒だった。

「……少佐の昇進祝いは無理そうだな」


ソルは自分のヨットに送ってもらい、保存食の四種のデラックスミックスナッツと、残り少ないモエのミニボトルを一本取り出し、ちょっとだけシャンパンを海兵隊に捧げてから思考の海に潜った。

(妄想の世界とも言う)


『そろそろ、SAAのバーニー・ロス仕様カスタムを実行に移せそうだ。

クイックドロウが出来そうな腰の後ろに付けるホルスターも誰かに造ってもらわないとな。

色は黒……かな……まあいいや。』


ナッツを口に放り込みながら悩むのも楽しい。


『素材もたくさん撮れたし……あ、そうだ。どこかで黒いスーツを調達できればM4持ってヒートのアイスマンになり切れるかも!ポーズは……やっぱり車の後ろから屋根越しに構える、あのシーンだな……あ、でも顔出しは無しだった!ん~。

サングラスでごまかせるかも……ムフフ。そうなると手持ちじゃ無理っぽくないか?

三脚もどこかで調達?回収?ま、そのうちなんとかなるでしょ。』


目の前にはいつのまにか回収した銃が並べられ、磨かれるのを待っていた。

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