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しがない人形師は、濡れ衣の夜を暴く 〜灰銀のハンターと噛み跡だらけの怪異事件簿〜  作者: なつめ
第4部 血を吐く聖女像

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第57話 今日は噛まない



 夜見坂教会を出た時、空はまだ暗かった。


 夜明けには遠い。けれど、夜の底はほんの少しだけ薄くなっていた。黒一色だった雲の縁に、灰色の湿りが滲んでいる。雨は降っていない。だが、教会の石段も、門扉も、外灯の下の歩道も、冷えた水を吸ったように鈍く光っていた。


 礼拝堂に残っていた血の匂いは、外へ出ても完全には消えなかった。


 聖女像は鎮まった。


 口は閉じた。血は止まった。告発の声も、祈りの台本も、少女の震えも、神父の白い手袋も、ひとまず警察の手に渡った。榊は教会に残り、神父と関係者の聴取、押収物の整理、信徒の保護、現場封鎖を続けている。澪奈も、聖女像から採取した血の痕跡と録音波形を持ち帰る準備に追われていた。


 それでも、終わったとは言えなかった。


 礼拝堂の録音機には、最後まで古い声が残っていた。


 ――まだ。


 その一語が、耳の奥ではなく、血の奥に残っているようだった。


 クラウディオ・ルジェリウスは、教会の門を出る時も平然としていた。


 背筋は伸びている。歩幅も乱れていない。黒い外套の襟はきっちり整えられ、袖口から覗く手も、ひどく白く、いつものように美しかった。祈らなかった者の顔だった。救いを求めなかった者の顔だった。礼拝堂で血を吐く聖女像を見上げながら、ただ見届けた者の顔だった。


 だが、ルスト・ヴァルレインには分かっていた。


 平静は、平穏ではない。


 クラウディオはいつも、傷の上へ薄い硝子を置くように整っている。透明で、硬くて、指先で触れれば冷たい。だが、下にあるものが消えたわけではない。見えないようにしているだけだ。


 車に乗り込む時、クラウディオの指が一瞬だけ扉の縁を掴み損ねた。


 ほんの一瞬だった。


 榊や澪奈なら、疲労だと思うだろう。夜通しの事件現場の後なら当然だ。だがルストは、その一瞬を見逃さなかった。


 クラウディオの血が、乱れている。


 祈り。火刑台。聖女像。古い血。少女の台本。神父が欲しがった告発する権利。祈らせる者たち。祈っても救われなかった記憶。


 それらが、クラウディオの奥で静かに噛み合わない歯車のように軋んでいた。


 工房《箱庭》へ戻るまで、クラウディオはほとんど口を開かなかった。


 運転席ではなく、後部座席の窓際に座り、濡れた街灯の光を黙って見ていた。車窓に映る横顔は整っていて、ひどく静かだった。夜見坂教会で聖女像を見上げていた時と同じ静けさ。怒鳴るよりも危険な沈黙。嘲笑うよりも深い疲弊。


 ルストは隣に座っていた。


 距離は近い。だが、触れない。


 触れればクラウディオは必ず何かを言う。気安く触るな、近い、見るな、鬱陶しい、灰銀。そういう言葉で自分を立て直そうとする。だが今、それをさせるのは違う気がした。


 工房の前に着く頃、空の灰色は少しだけ濃くなっていた。


 《箱庭》の看板は、路地裏の暗がりに沈んでいた。控えめな文字。古い木枠。硝子越しに見える作業場は、夜の底で眠っているように暗い。事件によって何度も踏み込まれ、荒らされ、怪異の残響まで侵入してきた場所。それでもここは、まだクラウディオの場所だった。


 鍵を開ける時、クラウディオの指先がわずかに遅れた。


 金属音が、いつもより低く響く。


「疲れているなら座れ」


 ルストが言うと、クラウディオは鍵を抜きながら目だけで睨んだ。


「命令するな」


「事実だ」


「お前の事実は声が不愉快だ」


「声の問題じゃない」


「なら黙れ」


 言葉は戻ってきた。


 だが、鋭さが少し鈍い。


 クラウディオは工房へ入り、明かりをつけた。作業場に薄い光が広がる。白い布。硝子の目を入れた箱。細い筆。人形の未完成の指。古い木材と絵具の匂い。その奥に、まだ教会から連れてきたような血と燭台の匂いがうっすら絡んでいた。


 クラウディオは外套を脱ぎ、椅子の背に掛けた。


 いつもなら紅茶を淹れる。あるいは、事件資料を広げる。何事もなかった顔で、やけに整った手つきで現実を自分の型へ戻す。


 だが、今夜は違った。


 クラウディオは作業台の前まで歩き、そこで立ち止まった。そこには第46話以降の教会事件で集まった写しやメモが置かれている。聖女像の血の分析表。神父の手袋の写真。祈りの台本の複写。寄付金記録の抜粋。少女の証言記録。録音波形。最後の古い声。


 彼はそれらを見下ろした。


 その目の赤みが、わずかに濃くなっていた。


 鮮やかな赤ではない。理性を失うような色でもない。けれど、黒い瞳の奥に、血の熱が沈んでいる。


 ルストは扉を閉めた。


 外の湿った音が途切れる。工房の中に、二人の呼吸だけが残った。


「クラウディオ」


 呼ぶと、彼は答えなかった。


 作業台の上の祈りの台本に、指先が伸びる。白い紙の端を持ち上げる。その手が、わずかに震えた。


 ほんの少し。


 だが、確かに。


 ルストは近づいた。


「乱れている」


 クラウディオは、紙を置いた。


「観察結果をいちいち口にするな」


「噛まなくても分かる」


 その言葉に、クラウディオの肩がわずかに動いた。


 ルストがさらに一歩近づく。


 クラウディオは振り返らずに言った。


「噛むな」


 声は冷たい。


 だが、その冷たさは、拒絶というより先回りだった。何をされるか分かっている者の声。これまで何度も、血の乱れや衝動を噛みつきで押さえられてきた者の声。


 ルストは手を伸ばした。


 噛まない。


 首筋へも、肩口へも、手首へも口は寄せない。


 ただ、クラウディオの右手首を取った。


 クラウディオの皮膚は冷えていた。だが、その奥を走る血だけが落ち着かない。細い手首の内側で脈が不規則に跳ねている。人間の脈とは違う。吸血鬼の血脈は、体内に閉じた川ではない。記憶と飢えと衝動と古い傷を連れて流れるものだ。今、その流れが礼拝堂の声に引っかかっている。


 クラウディオは反射的に手を引いた。


 ルストは離さなかった。


 強く握り潰すわけではない。だが、逃がす気もない。指は手首の骨の際へ添えられ、掌は脈の上に静かに重なっていた。脈を測るようであり、命令しているようでもあり、逃げ道を塞ぐようでもあった。


「今日は噛まない」


 ルストが言った。


 クラウディオはそこで初めて振り返った。


 瞳の赤みが、薄い光の中で濃く見える。


「噛まない方が厄介だ」


 吐き捨てるような声だった。


 ルストは否定しなかった。


「鎮めるだけだ」


「気安く触るな」


「気安くはない」


「では重々しく触るな。どちらにせよ不愉快だ」


「息を合わせろ」


「命令するな」


 クラウディオはまた手を引こうとした。


 だが、本気で振りほどく力ではなかった。ルストはそれを見ていた。クラウディオが本当に嫌がる時の力の入れ方も、声の温度も、目の冷え方も知っている。今は違う。苛立っている。逃げたい。だが、完全に拒んでいるわけではない。


 ルストは手首を取ったまま、少しだけ体を近づけた。


 近い。


 噛まないのに近い。


 クラウディオはそれが気に入らない顔をした。


「噛めば済むと思っていた頃の方がまだましだ」


「済んでいない」


「お前が勝手に済ませた顔をしていただけだ」


「そうか」


「そこで納得するな」


 ルストの親指が、クラウディオの手首の内側を静かに押さえる。


 血の流れを見る。


 乱れている。


 聖女像の声に反応した血が、祈りを嫌い、火刑台を思い出し、古い甘い匂いを探している。クラウディオ自身は目を逸らしていない。祈りもしなかった。見届けるくらいはしてやるとまで言った。だが、血はそんなに整っていない。身体は、理屈ほど綺麗に黙らない。


「今日は血を飲まない」


「宣言するな。余計に腹が立つ」


「乱れている」


「二度言うな」


「乱れているからだ」


「お前は昔から、同じことを繰り返せば相手が従うと思っている」


「従っている」


 クラウディオの眉が跳ねた。


「誰が」


「手を引かない」


「握られているからだ」


「嫌なら引け」


 クラウディオは黙った。


 その沈黙を、ルストは指摘しなかった。


 指摘すれば逃げる。皮肉に変える。冷笑で手首ごと切り離すように言葉を投げる。だから何も言わない。


 クラウディオはしばらくして、低く言った。


「命令するな」


「引かないなら、このままだ」


「……本当に厄介だな」


 手首を取られているだけなのに、逃げ場がなかった。


 噛まれている時の方が、まだ分かりやすい。痛みがある。血が動く。抗議の言葉も出せる。噛むな、痛い、離せ、灰銀。そう言っていれば、少なくとも何をされているかは明確だった。


 だが今は違う。


 噛まれない。


 血も吸われない。


 ただ手首を取られている。


 それなのに、血の乱れが少しずつ読まれていく。脈の跳ね方、呼吸の浅さ、目の赤み、指先の冷え、袖口の震え。その全部を、ルストの掌が拾っていく。


 噛まれるより逃げ場がない。


 クラウディオはそれが気に入らなかった。


「手首を取るな。命令されている気になる」


「していない」


「している顔だ」


「顔ではしていない」


「なら手がしている」


 ルストは少しだけ手の圧を緩めた。


 クラウディオの脈が一度跳ねる。


 離されたわけではない。ただ、握りが変わった。逃げる隙間が生まれた。


 クラウディオは、その隙間から手を抜けたはずだった。


 だが抜かなかった。


 彼自身も、それに気づいた。


 気づいた瞬間、目元が険しくなる。


 ルストは何も言わない。


 クラウディオは苛立ったように息を吐いた。


「噛まないなら、もっと離れろ」


「離れたら乱れる」


 クラウディオは黙った。


 図星だった。


 礼拝堂で「祈って救われるなら、火刑台は燃えなかった」と言った時、彼は確かに立っていた。祈らず、崩れず、見届けた。だが、その言葉は彼の中に残った。火刑台は燃えた。祈っても救われなかった。祈りの言葉が断罪に使われ、弱さが餌にされ、誰かの血が聖女の口に押し込まれた。


 それを見て、祈らなかった。


 祈れなかったのではない。


 祈らなかった。


 けれど、祈らないことにも、痛みは残る。


 ルストは呼吸を落とした。


 ゆっくりと。


 クラウディオは最初、合わせなかった。


 わざとずらすように息を吐いた。無言の反抗。子どもじみていると言えばそうだが、クラウディオの反抗はいつも妙に優雅で、腹立たしいほど様になっている。


 ルストはそれでも同じ間を保った。


 一度。


 二度。


 三度。


 クラウディオの呼吸が、ほんのわずかに遅れる。


 次の息で、ルストの間と重なった。


 クラウディオは気づいて、不快そうに目を細める。


「合わせたわけじゃない」


「分かっている」


「分かっている顔をするな」


「していない」


「嘘が下手だ、灰銀」


 その言葉に、ルストは少しだけ視線を上げた。


 クラウディオの襟元から、教会の薄暗い光では見えなかった古い痕と、新しい疲労が重なって見えた。第22話の噛み痕はもう薄れている。それでも、完全には消えていない。第54話の聖具庫で抱き止めた時の距離も、まだ二人の間に残っている。祈るな、触るな、と言いながら離れなかった体温。祈らない、と言いながら聖女像を見届けた横顔。


 ルストは見てしまった。


 クラウディオがすぐに気づく。


「見るな」


「見ていない」


「嘘が下手だと言ったばかりだ」


「見えただけだ」


「それを屁理屈と言う」


「そうか」


「納得するな」


 やり取りの間に、クラウディオの目の赤みは少しずつ落ちていった。


 完全に消えたわけではない。奥にはまだ、細い血の熱が残っている。だが、礼拝堂から出た直後のような不安定な揺れは薄れていた。


 クラウディオは、ようやく作業台に背を預けた。


 手首はまだルストに取られている。


 それに気づいているのに、振り払わない。


 沈黙が落ちた。


 工房の奥、箱庭風展示室の扉は閉じている。そこには踊らない少女人形たちがいる。止まったゼンマイ、白い砂、硝子の天蓋、閉ざされた園。教会の祈りとは別の形で、クラウディオの過去を閉じ込めた場所。


 そこまで怪異は入り込んだ。


 教会も、工房も、安全圏ではない。


 ルストの手が、手首の脈から少しだけ位置を変えた。


「落ち着いてきた」


「報告するな」


「赤みが引いている」


「鏡を見る趣味はない」


「必要ない」


「お前が見るな」


「無理だ」


 クラウディオは諦めたように目を閉じた。


 その時、作業台に置かれていた端末が震えた。


 短い通知音が工房に響く。


 クラウディオは目を開けた。ルストは手首を離さないまま、空いた手で端末を取る。画面に表示されたのは榊からの連絡だった。続いて、澪奈の添付データが開く。


 押収物整理の速報。


 神父の手袋。


 祈りの台本。


 寄付記録。


 少女の保護先変更。


 聖女像の録音データ。


 そして、祈りの台本の最後の一文について。


 ルストが画面を読み上げる前に、クラウディオが目だけで促した。


「読め」


「祈りの台本、最後の一文だけ筆圧と癖が違う可能性がある。神父の筆跡ではない、と白石が見ている」


「続きは」


「過去の助言記録と照合する必要がある。久遠院顧問が夜見坂教会に送った助言記録が残っている可能性」


 クラウディオの手首の脈が、また一度だけ跳ねた。


 ルストはそれを掌で感じた。


 クラウディオは低く笑った。


 笑ったが、楽しい声ではなかった。


「神父だけで終わるなら、聖女像はもっと下手に血を吐いた」


 ルストが問う。


「久遠院か」


 クラウディオは即座に返した。


「まだ名前を貼るな」


 その言い方は、教会で榊に返した時と同じだった。


 証拠が足りない。


 嫌悪はある。疑いもある。手触りもある。気色悪いほど整った言葉の匂いもある。だが、名前を貼るには足りない。


 名前を貼れば、あいつと同じになる。


 久遠院怜司の微笑が、工房の薄い光の中に一瞬だけ浮かんだような気がした。


 クラウディオは目を細める。


「祈りの台本の最後か」


「何が書いてあった」


 ルストが画面を送る。


 そこには、少女に読ませていた祈りの台本の最後の一文が拡大されていた。


 ――真実を告げる口を、どうかお与えください。


 神父の筆跡よりも、やや整いすぎている。


 祈りというには冷たい。


 命令というには柔らかい。


 クラウディオはしばらくその文を見ていた。


「祈りじゃない」


「台本だ」


「台本ですらない」


 クラウディオの声が冷えた。


「合図だ」


 ルストは画面からクラウディオへ視線を移した。


「合図」


「祈りを集めるための言葉じゃない。口を開かせるための言葉だ。少女に読ませ、信徒に聞かせ、神父に信じさせ、聖女像の中へ溜まった声を告発へ変える。最後の一文だけ、祈りのふりをしているが、命令形に近い」


「久遠院の助言記録と照合する」


「榊に言え。筆跡だけでなく、語順を見ろ。あいつは意味を整えたがる。祈りの言葉に、余計な構造を入れる」


 ルストは短く返信を打った。


 クラウディオはそれを横目で見て、不快そうにした。


「勝手に俺の言葉を送るな」


「必要だ」


「必要なら許可が不要になると思うな」


「許可を待つと、お前は嫌味を三つ挟む」


「四つだ」


「なら待たない」


 クラウディオは鼻で笑った。


 わずかに、呼吸が戻っていた。


 ルストはその変化を感じて、ようやく手首から指を離した。


 クラウディオの手が自由になる。


 彼はすぐに手を引いた。


 だが、乱暴ではなかった。


 手首の内側に残ったルストの指の感触を確かめるように、ほんの一瞬だけ親指でそこをなぞる。自分の動きに気づいたのか、すぐに袖を引き下ろした。


 ルストは見ていた。


 クラウディオが睨む。


「見るな」


「見えた」


「本当に嘘が下手だな」


「そうだな」


「そこは否定しろ」


「必要か」


「必要だ。会話の体裁くらい整えろ」


 ルストは少しだけ黙った。


 それから言った。


「次は、どうする」


 クラウディオは作業台の上の資料を見下ろす。


 聖女像の血。祈りの台本。神父の手袋。寄付記録。少女の証言。古い声。久遠院の助言記録。


 まだ終わっていない。


 聖女像は鎮まったが、沈黙しただけだ。古い血の全貌は見えていない。祈らせた人間の流れも、完全には切れていない。


「久遠院の助言記録を洗う」


「第58話相当の仕事だな」


 ルストは言わない。そういう人類向け整理語はここに存在しない。かわりに、短く言った。


「教会の帳簿か」


「寄付金だけじゃない。助言記録、面談記録、匿名祈願文、孤児保護の名目で出入りした外部顧問。神父が自分で考えたにしては、祈りの加工が整いすぎている」


「神父だけではない」


「神父だけなら、もっと俗っぽく失敗する」


「お前の人間評価はひどい」


「当たるからな」


 ルストは否定しなかった。


 クラウディオは、袖の下に隠した手首をもう一度だけ動かした。


 噛まれていない。


 血を飲まれてもいない。


 それなのに、乱れは落ち着いている。


 それが腹立たしい。


 クラウディオはルストを見上げた。


「次は噛め」


 ルストは静かに返す。


「必要ならな」


 クラウディオの顔が、さらに不機嫌になった。


「だから厄介だと言っている」


「噛まない方がか」


「お前がだ」


「知っている」


「知っているなら改善しろ」


「無理だ」


「吸血鬼としても人間としても終わっている」


「吸血鬼だ」


「開き直るな」


 会話はそこで途切れた。


 外の空は、少しだけ明るくなり始めている。夜見坂教会の夜が終わろうとしている。だが、教会事件は終わっていない。祈りの後始末は、まだ祈らせた者の方へ届いていない。


 クラウディオは手首を袖で隠した。


 ルストの指の感触はまだ残っている。


 噛み痕ではない。


 血の跡でもない。


 ただ、触れられた圧の記憶。


 噛まれた方がまだましだ、と彼は思った。


 だが、その手を完全には振り払わなかったことも、自分で分かっていた。


 だから余計に、厄介だった。



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