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塔の中 塔の外  作者: ちとせ
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仕事を見つける。簡単に見つかるだろうと思っていた過去の自分を殴ってやりたい。

考えてみたら僕は人よりも体が小さい。加えて力も弱い。さらに魔力もない。無い物尽くしな僕に、仕事なんて簡単に見つかるわけがなかった。


そもそもアルデビルド様のお家は大きい。お手伝いしますとメイドさんに言ってみたところ、困った顔をされた。そして仕事を取られたら困りますと笑顔で去って行かれた。うん、忘れていた。僕はメイドさんに嫌われていたんだった。

ならば執事さんだとお願いしてみたところ、シーネ様はお部屋で好きなことをしてお過ごしくださいと笑顔で言われた。そうだよね、僕の後ろには護衛としてパフィエルが立っている。護衛付きで働くって偉い人しかしないよね。


さっそく壁にぶち当たってしまった。部屋でできる仕事ってないかな?前世の記憶に頼ってみよう。

記憶の糸をたどってみるけれど、僕にできる仕事ってあるのかな?この世界には専門職の人たちが多い。資格はいらないみたいだけれど、小さいころからの経験は必要。そして内職という仕事は無い。


はい積んだ!さっそく仕事が見つかりません!このままではニートから脱出できない!

うんうんと唸っていたら、いつの間にか僕の目の前にアルデビルド様のドアップが。


「ふわぁぁ!」


ビックリした!久しぶりに大きな声を出した!ドキドキとする胸を押さえながらアルデビルド様に声を掛ける。


「いつからいましたか」

「ついさっきだ。ずいぶんと難しい顔をしていたな」


見られていただなんてなんか恥ずかしい。赤くなるほっぺたを両手で押さえた。赤みが引くのを待ってから僕はほっぺたから手を離した。アルデビルド様は僕の隣に座って顔を覗き込んできた。


「それで何を考えていたんだ?」


アルデビルド様が優しい顔をして聞いてくる。アルデビルド様に相談してみようか?でも赤ちゃん達のお世話で忙しいんじゃないのかな?

そう思うと口は開いたけれど、言葉は出さずにまた閉じた。

そしてそのまま顔をしたに向ける。


「シーネ、黙っていると分からない。ちゃんと言葉にするんだ」


そう言って僕のほっぺたを両手で挟んで顔を上に向ける。アルデビルド様顔が近いです!待って!親指で唇をなぞらないで!なんかぞくぞくしますから!

せっかく引いていたほっぺたの赤みが戻ってきたと思う。きっと僕の顔は真っ赤だろうな。


「シーネ、言ってごらん?」


そんな優しい声で囁かれたか誰も逆らえないと思います。僕は顔を真っ赤にして仕事を探していると正直に伝えた。


「なんだ、仕事を探していたのか。それならシーネにピッタリの仕事がある」

「仕事ありましたか!それは何ですか?」


なんと!僕にピッタリの仕事があるそうです!どんな仕事なんだろうとワクワクしながらアルデビルド様の言葉の続きを待つ。


「それは俺のお嫁さんだよ。俺と結婚してくれないか?」


は?今なんと?僕の耳がおかしくなってしまったのだろうか?今、アルデビルド様から結婚してと言われた気がするのですが。頭の中が真っ白になった。一瞬気を失っていたんだと思う。


「聞こえなかったのか?それならもう一度言おう。シーネ、俺と結婚しよう」


疑問形じゃなくなった!目の前のアルデビルド様は冗談を言っているようには見えない。けど、確かアルデビルド様には婚約者がいたはずじゃ。


「アルデビルド様、婚約者の方は?」

「ああ、彼女か。あの子なら他に良い物件があったようで白紙になった。もう半年くらい前にな」


聞いてないんですけど!え、言ったって?僕が聞いてなかっただけですか、そうですか。

でもこの家を継ぐのはアルデビルド様なんじゃ。


「弟も生まれたから問題は無い」


でも、僕でいいのだろうか?なんの特技もない、魔法も使えない僕じゃなくて、アルデビルド様ならもっといい人が見つかると思うんだけど。急なことで頭の中がグルグルとする。正常に考えることが出来ない。


「俺はシーネがいい。シーネじゃなきゃダメなんだ」

「アルデビルド様」


アルデビルド様は僕のほっぺたから手を離して僕の前に跪く。まるで絵本に出てくる王子様が僕の目の前に現れたみたい。そしてお姫様にするみたいに僕の手を取った。


「どうか私と結婚してください」


ずるい、そんなこと言われたら僕は「はい」としか答えられないじゃないか。


「僕でよかったら、お願いします」


声は震えていたと思う。


「一生大事にする。ありがとう、シーネ。愛している」


そう言ってアルデビルド様は僕を抱きしめた。久しぶりにアルデビルド様に抱きしめられて、僕の心臓は休むことを忘れたようにドクドクと動き続ける。

アルデビルド様は少し僕から体を離すと、僕の顎を掬った。軽く上を向かされる。ああ、キスをされるんだな。そう思ったら勝手に僕の瞼は落ちていく。

そして唇に柔らかい感触。一度離れた後、また触れる。胸が苦しい、息が出来ない。何度か繰り返された後、そっと目を開けてみた。

目の前に王子様がいる。そう思っていたら僕の意識は薄れていった。うん、息するの忘れていたね。薄れていく意識の中、慌てた声で僕を呼ぶアルデビルド様の顔は一生忘れないと思う。


アルデビルド様からプロポーズをされた僕。あれから本物の王子様であるガウェン様からもプロポーズされて、色々大変なことになったんだけれどそれはまたの機会に。


ずっと塔の中にいて、何も知らなかった僕。塔から出て、大変な事もあったけれどそれでも塔から出てよかったと思う事の方がずっと多い。

僕を塔から出してくれた人たちに感謝します。本当にありがとうございましたって。

これでとりあえず完結とします。

読んでいただきありがとうございました!

もしかしたら番外編としてその後を書くかもしれません。

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