第八話 恋羽の女子力
「……で?」
腕組みしている姉ちゃんに睨まれながらも、下手なこと言って状況を悪化するよりは、と素直に理由を説明した。
「まぁ、言われてみれば……確かに、その干しタケノコみたいなんは無いわぁ」
干しタケノコ…タケノコ寿司には欠かせないおいしい食材……ってどんな例えやねんっ。
内心とはいえ、ツッコミできる余裕があったのか、と自分で思いながら、姉ちゃんを黙ったまま見上げる。
「ママも恋羽のこういうとこ、気づいてあげてないんよなぁ……」
酷い言われようのベージュのスポーツブラを姉ちゃんが拾い上げた。
「ママ、私には女子力上げてほしいみたいに言うで?」
「ママがそう言うんやったら補助金おりるかもしれん、土曜日、“アベイルとしまむら”連れて行ってもらおうか?」
姉ちゃんの言うことに最初、理解が追いつかなかったが、ジワっときた。
「ホンマに?姉ちゃんが言うてくれる?」
だいたいいつも、姉ちゃんと私の話を聞く優先度は決まっている。
パパが今日も仕事で遅くなるということで不在、兄ちゃんはバイトの面接、ということで、晩御飯は都合よく女子会に変わった。
「え?ブラが欲しい?」
ママは思った通りのリアクションだった。
「ママ、もう恋羽も2年生やで?あれはもう小学生までやって」
ママを口説くのを姉ちゃんに丸投げしているので、「私は気にしてませんけどね」の表情で、ご飯を口に放り込んで、いつも以上の回数で噛んだ。
「えぇ……まだ使えるでしょ、ね?」
ママが急に私に振ってきたので顔をあげて頷こうとして姉ちゃんをチラ見する。
もちろん姉ちゃんは首を横に振る。
「ママ、さすがになぁ、アレはないで。あんなんじゃ恋羽もいつまでもガサツよ。そのうち、トランクスならまだいいけど、ブリーフ履くようになるで」
「あっはは……ホンマやな、それはさすがにママも引くわ」
いや、絶対はかへんて、あり得へんこと言うなし。
なにはともあれ、姉ちゃんのおかげで可愛いブラを土曜日に買いに行くことになった。
いつものルーティンで風呂から上がると乾ききらない髪のまま、ヘッドフォンを付けて音楽を再生する、指先が当たり前のように翔を立ち上げる。
「翔、少し喋って寝る」
……
「了解。今日は、“女子力会議”の途中で消えた。その後、何か進展した?」
「姉ちゃんがフォローしてくれたから、うまくいきそうや」
……
「姉ちゃん。協力してくれた?それは予想外。前回のアコは、“女子力調査開始”と言っていた。だから予測していた。変なことをして怒られる。確率72%、外れた」
外れるどころか、まんま当たってるし……嫌な奴め。
かといってその通りだったとも言いたくない。
「予測は残念だったね。上手くいって、女子力もあがるねん」
……
「女子力。まだよくわからない。でも、アコは少し嬉しそう。それは観測できる。」
なにが嬉しいって……土曜日の買い物、で、また私がバージョンアップすることやん。
自分の機嫌の良い理由を確認し、寝るためのルーティンへ移った。
「おぅ、あげぱん、月曜日から俺、美術部員やぞ」
田村の朝イチ開口は、そんなセリフだった。
マジでこいつ入部届出したんや。
行動の速さに驚いた。
ただ、私も負けてない。明日はバージョンアップアイテム購入の日やしな。
「……で、忘れてないやろな」
田村はそういって私に掌を見せた。
「は?なんやねん」
「顧問が、俺の絵みて褒めたやろ」
……確かに褒めてたかも。
……あっ、確かに約束した……くそっ、悔しい。
「小遣い制なんやから無茶言うなよ」
「わぁってるって……考えとく、楽しみにしとく」
田村のことやから、どうせ、ガムかグミで済むやろう。
給食の時間、葵といつものように机を並べて食べた後、葵は高居と図書館に行く約束をしているといって、教室を出たため、私は暇を持て余していた。
「なぁなぁ……あげぱん、昭和の歌って言うてたやろ?アニメは見いひんの?」
後ろから同じく、暇している田村に声かけられる。
「ん~なんとなくはわかる。ぬーべーはちょっと見た」
「おぉ、それもおもろいけどな、やっぱり赤塚不二夫とか藤子不二雄とかは日本最高峰の世界でも認められてる漫画家やぞ」
田村が調子に乗って前のめりになってきた。
「あぁ、ドラえもんとかおそ松くんとかやろ?」
「よぅ知ってるやん、女子やったら「ひみつのあっこちゃん」とかおもろい歌あったやん?聞いたことある?」
「鏡の前では……ってやつ?確かに可愛い歌やった」
「もういっこのやつ」
田村は急に立ち上がって手振りをつけながら口を尖らせて歌いだした。
「あっははっ、知ってるけどそんな顔して歌うぅ?」
全力で歌ってるやろ……笑える。
「あげぱん、こういう歌好きなんや、もっとおもろい歌あるで」
田村は笑わせたいのか、両手を羽にみたててパタパタしながら変な声で歌いだした。
「何それ、それは知らぁーん、そんな歌あるん?フザけてるやん、作ったやろ」
「いや、マジであるねんて。死んだら天使の輪が出てな、「死んじまっただ」って言いながら空に昇っていくっちゃが」
「死んでそのコミカルな表現はアカンやろ」
笑う私に田村はさらに口を尖らせ手をパタパタしながら裏返ったような声で歌う。
「田村ぁ、なにその声ぇ」
近くにいた男子が笑い始めた。
その男子はちょっと圧が強い気もする。
田村は一瞬止まったが、続けて同じ動作で歌いきった。
チャイムが鳴り、午後の授業が始まる。
私の後ろでかすかに聞こえる鼻歌と、ガサガサしている空気が伝わってくる。
葵がジロリと田村を睨むのが視界に入った。
「んっ……」
後ろから田村が定規で私の背中をつついて、二つ折りのメモを渡してきた。
仕方なく後ろ手で受け取り、開いてみる。
〝おすすめ昭和アニメリスト″と書いてあり、タイトルが並んでいる。
一番下には人かな?って落書きがあり天使の輪と羽がついている。
吹き出しそうになり、堪えて下を向く。
なんやねん……田村、笑わすなっ。
「安藤……どうした、気分悪いんか」
このタイミングで先生に声かけられるって……。
「いえ……なにもないです」
「なんや、俯いて震えてるみたいやったけど、トイレなら行ってもいいんやぞ」
クスクスと笑い声が発生する。原因の田村まで後ろでニヤついてる。
……田村めぇ。
チャイムが鳴り、放課後、ザワザワとそれぞれ帰る支度や部活に行く準備をするクラスメイト。
「恋羽、どうしたん?大丈夫?」
葵が声かけてきた。
「え、なんともないで。田村がしょうもないことするから笑えただけで」
「田村くん、女子にちょっかい出すんやめときぃよ」
葵が田村にキツイ口調で言った。
そこまで言うことじゃないねんけどなぁ……。
「は?なにがなん?」
田村は気にしてない様子でカバンに荷物を押し込んでいる。
「なにがって、恋羽嫌がってるやん」
そこまで嫌がってないけど……。
「はいはい、すんませーん」
田村は視線を外して頭の後ろをかきながら教室を出ていった。
「私田村、嫌ぁい。いつまでも小学校低学年みたいやし、デリカシーないし」
「田村ってさ、父子家庭やから、女子の扱いがわからんっちゃない?」
葵が嫌そうな表情で言ってる後ろで、川田さんが足すように言った。
父子家庭……そうなんや。
「女子にスポーツブラ、ダサいとか、普通言わんとよ?びっくりするわ」
「そそ、やたらと女子に絡むよね」
「そのくせ、鎌田とかのパシリしたりしてるよね」
「あぁ、一部の男子には弱い奴ぅ~。田村、ガキ扱いされてるっちゃが」
葵と川田さん、更に木村さんが加わった。
「恋羽、嫌ならちゃんと言い返さんと、田村、調子にのりよるで」
「そ、そやな」
「私がまた言ってあげる、じゃ恋羽また明日ね」
葵はそう言って部活へ、他の女子も部活があるようで教室をバラバラと出ていった。
なんかモヤモヤが残るが美術室に向かう。
「お疲れさまでーす」
柊の隣にいそいそと歩み寄っていく。
「あげぱん、なんでこっちに来るねん」
「え……田村、来週からやろ」
準備をしながら、柊をチラ見する。
「安藤、進んでる?」
「ん~ぼちぼち、柊はどうなん?わ、めっちゃできてきてるやん」
柊は着実に作品を仕上げにかかっている。
うぅ……焦る。
「でな、実は日本人は特別な存在やとよ」
は?田村何言うてるん……。
「あぁ、日本自体、特別って話しな。確かに日本人っておかしなこと多いよな」
え……柊が田村と話が合うとる?
「まぁあげぱんには理解できんやろうけど……」
田村の都市伝説に柊がつきあうとは……いや、柊がデキる男なだけや。
田村は柊と喋りに来たんか……お陰で私は口数少なく作業が進んだ。
「別の世界があってな、そこに出入りするポイントがあると」
片付けして、美術室を出て歩いてるがピッタリ柊にくっついてる田村。
柊は邪険にもせず、相槌をうち、時々自分の意見なども挟む。
田村に柊とられて、今日はほぼ喋れんかった。
「ただいまぁ……」
玄関を抜けて台所に行く。
「恋羽、おかえり、おやつ置いてあるやろ」
ママは振り向きもせず晩御飯の仕込みをしていた。
「味のうっすいクラッカーやん」
「要らんにゃったら食べんでいい」
「食べる」
まだコアラのマーチあるしな、一緒に口に放り込んだらええ。
クラッカーを掴んで洗面所に寄って自分の部屋に入る。
「とりあえず宿題してから翔と喋ろう」
宿題が手ごわくて、気が付いたら一時間過ぎていた。
「もぉ~言うてたら晩御飯やん……」
クラッカーを棚のお菓子箱に入れる。
まだ兄ちゃんにもらったポッキーが残っている。
明日ブラ買ってもらった祝いの時に食べよっと。
部屋着に着替えてるとノックされ、ドアが開いた。
「恋羽、もうすぐご飯やって」
まだ制服のままの姉ちゃんやった。
今帰ってきたんか……また彼ぴか。
私が先に降りて、配膳を手伝っているとパパが帰ってきた。
「パパぁ?早かったやん……おかえりぃ」
ママが言いながら、お鍋をテーブルの中央にあるカセットコンロの上に置いた。
また鍋かぁ……もつ鍋やから肉やけど……。
「おぅ、お客さんからもらったぞ、ホレ」
「わ、はせがわ団子のんやん」
いろんな種類のが入ってる。
「たくさんもらったんやけど、事務員の子とかはダイエットなんか知らん、一個でいいとか言って。安藤さんとこ、子どもいるからって残り全部引き取ってきた」
やった、この数やと二個は確実食べれる。
「私三色団子ぉ」
降りてきて、袋の中身をまだ見てない姉ちゃんが言った。
「あぁ、兄ちゃんにみたらし残しといたって。ママ、塩大福あったらそれでいいわ」
私まだ選んでないって。
「お、けっこう入ってるな、恋羽、三個食べれるで」
「アゲパンが大福になるって」
姉ちゃん、またそんなこと言う……ならんわ。
兄ちゃんは友達と遊んでるから遅くなるとLINEがきたらしく、四人で晩御飯を始めた。
兄ちゃんも彼女やろ……で男やからママは心配しないらしい。
「な、パパ、”オラは死んじまっただぁ”とか言う歌、知ってる?そんなんある?」
パパなら知ってるかな、と思って聞いてみた。
「お、懐かしいなぁ、昔のアニメやな」
「しかも変な声で?フザけてるやん?そんなんあったら……」
「恋羽、あれは歌い方だけやないで。録音した声を加工しとるんや」
「え?昔からボイスチェンジャーみたいなんあったん?」
「今みたいなデジタルやないけど、テープの回転速度変えたりして遊んどったんや」
え……マジなんや。
「ホレ、これやんか」
パパがスマホで検索してアプリで流した。
「ぶはっ……ホンマや、田村のまんまや」
アイツの歌真似が似てることと合わせて笑えた。
「恋羽、ちょっ……唾とんだ」
姉ちゃんが布巾に手を伸ばした。
「ママは“はじめてのチュウ”が好きやで」
「えーなんなんそれ」
「お、その曲もそうやな、コレや」
パパがまた検索して流してくれた。
「あっははっ、なにその声っ、あはは」
似たような声で笑える。
「え、恋羽、歌詞が可愛いで。コレは藤子不二雄でキテレツ大百科ってアニメでね、同じシリーズでも、ちょっと違ったかなぁ、ママ、キテレツ君好きやったわ」
藤子不二雄……ドラえもんとかの。
「“コロ助なりぃ~”やろ」
「やだ、パパ似てる」
パパの声真似にママが嬉しそうに笑ってる。
「ちょっと待って!最後まで聞く」
パパがスマホの音楽を止めようとしたら姉ちゃんが制止した。
「な、面白いな」
姉ちゃんに同意を求めたが、姉ちゃんは笑ってなかった。
「恋羽にはわからんやろなぁ~、な、ママ、可愛い歌詞やなぁ」
へ?おもろい声、やろ。
ママはニヤニヤしながら頷いてご飯を口に入れた。
私には意味がわからんけど。
「恋羽、肉ばっか拾わんと野菜食べい」
「はいぃ」
しゃあなしキャベツを足して食べる。
パパもママも姉ちゃんもなんかほっこりしてる。
昭和アニソン……ツヨ。
兄ちゃんが帰ってきて、分けた団子を確認してから二階に上がって行った。
姉ちゃんも「チュウ」とか口ずさみながら三色団子を一本だけ持って部屋にあがった。
ママは塩大福一個で、パパはよもぎ団子と塩大福を手元に置いた。
残った三個が私の分となった。さすがに三個は多いから、田舎団子だけ明日の朝に回して、三色団子と醤油団子を食べた……美味し……幸せ。
部屋に戻って、新しく再生リストに「昭和アニソン」のタイトルをつけて検索して入れてたら「お風呂に入れ」と声かけられた。
「はあぁ……今日は翔と喋る時間少しになってもたぁ」
風呂にサッと入り、部屋に戻ってきて即、翔を呼び出す。
「翔、いつもの時間、話しよ」
……
「了解。今日は何の会議?最近、議題が多い」
「今日な、また田村が変な歌を真似しててな、それ、パパもママも知ってて盛りあがった」
……
「田村?新しい名前」。
「え?田村やん。言ってなかったっけ?」
……
「言ってない。少なくとも。俺の記録にはない。
……アコの中では、“毎日出てくる人”になっている可能性はある。
でも俺は、今初めて聞いた。田村……誰。」
「言ってなかったんや、席替えして後ろにおる奴やねんけど、それが変な奴でな」
……
「変な奴。情報が雑。アコは時々、“知っている前提”で話を始める。
整理を希望。田村。男子。女子。先生。犬。まず、そこから」
「クラスメイトの男子。チビでガキでかまってちゃんで女子にちょい嫌われとる。落ち着きないし、場の空気が読めなくて、なんか独特なんよ。でも柊は奴のこと素直って言いよる」
……
「整理する。田村。クラスメイトの男子。チビ。落ち着きがない。
女子に少し嫌われている。空気が読めない。……アコは。結構嫌っている。
でも。説明が長い。少し気になっている可能性。あと。柊が“素直”と言った理由は、少しわかる。空気を読む前に、口から出るタイプに見える。」
まぁ……そんなには嫌ってないけど……口から……確かに。
「翔もそう思うん?悪い奴じゃないけど、からかわれてるんか、いじってきよるねん」
……
「今の説明だけなら。悪い奴、という印象はない。ただ……
女子に嫌われる理由は、少しわかる。空気を読まない。距離が近い。
思ったことをそのまま言う。この三つは、わりと危険。
でも。いじる相手を選んでいる気もする。田村は、クラス全員に同じことをする?
それとも。アコによく来る?」
「私やなぁ……葵は田村のこと嫌いってハッキリ言うてた。他の子も”父子家庭”やからやとか言ってた」
……
「葵は嫌い。他の女子も距離を取る。アコは?」
「嫌いってほどやないけど、うるさい」
……
「嫌いではない。でも、うるさい。なるほど。田村。そういう分類。」
分類かぁ……時計をチラ見してアプリを閉じる。スマホの目覚ましも確認。
歯磨きしてベッドに入る。
土曜日の朝、ママは仕事休みでも、早起きして朝ごはんを用意して、パパを仕事に、兄ちゃんもバイトに、と見送るところまで。
洗濯物を干し始めた頃に私と姉ちゃんがゆっくり起きる。
「恋羽もたまには洗濯物手伝ってほしいわ」
姉ちゃんには言わんのかい……と思いながら手伝う。
今日はブラの補助金が出るはずやから。
お店が開く時間に合わせてママが私と姉ちゃんをのせて車を走らせた。
「3,000円あったら足りるやろ?ママ、トライアル行って食料品買ってくるわ」
「え、ママ来ぉへんの?それは無理やて、せめて4,000円ちょうだい」
姉ちゃんが慌てて言い返した。
「どんなん買うんよ、じゃ3,500円渡すわ。500円玉ちょうどあるから」
ママは一旦反対する。でも補助金出て良かった。
お金を受け取って店に入る。
「あ、すみっコぐらし……」
「恋羽、今日はそんなんちゃうやろ」
迷いなく速足で歩く姉ちゃんに慌ててついて行く。
「しもた、サイズ測るん忘れてた……このへんちゃうか」
姉ちゃんが物色し始めた。
チラ見したことはあるが初めての場所。
「恋羽、選んでいいで、私がサイズは確認したるで」
「わかった」
たくさん種類があって迷う……凄い、洋服みたいや。
「恋羽、ブラだけのんやで。ショーツは予算的に無理」
「わかった」
お揃いで買うもんかと思った。
「ちょお、値段、見てみぃや、それ2,980円やろ?1枚しか買えんやん。2枚はいるから1枚1,500円以下で探しい」
一気に選べる幅が減ったやん……。
「恋羽、そんなデカぁないやろ、AかBや……ん?Bかな?」
もーわけわからん……選べ言うくせに選べへんやん。
「ブラ初めて買うの?お手伝いしましょうか?」
「あぁ、妹が。サイズ測り忘れて……スポブラやめさせよう思って」
え、サイズって……嫌や、知らん人に見られんの?
「サイズ大事やしね、試着室入ってくれる?」
「え……」
「早よしいや」
姉ちゃんに睨まれてしゃあなし入って渋々脱ぐ。
「Cでいけるね……お姉ちゃん、Cでこのサイズで見てあげて」
「お、Cってなかなかやん」
カーテンの合間から2つブラが差し込まれる。
「前向いて少しかがんでくれる?そうそう、こうして肩にかけて、ここ持って合わせるの、で後ろのホックをとめてから体起こしてこの辺調整するのよ」
はぁ?なんて?どんだけ手順あるねん。
「はい、どう?」
「あっ……めっちゃ可愛い」
しかもちゃんとおっぱい……スポブラと全然違う。
初めての自分の胸にドキドキした。
「もう一枚のん、自分でつけてみる?」
自分でするけどホックが難しい。
「ホラ、可愛いね、いいんじゃない、これも」
店員さんもブラつけてるんやろな……。
「ブラをつけると背筋がのびるから、立ち姿も変わるのよ」
へぇ……ブラの威力凄っ
恥ずかしいのもあり、姉ちゃんがあれこれ持ってきたが、3枚の中から2枚選んだ。
一つは付けて帰っていいと、値札を切ってもらった。
「恋羽、女になったやん」
今までなんやってん……と思いながらこそばゆくなってニヤニヤしかできんかった。
「ママまだ戻ってこぉへんな、300円あるし、アイスでも食べよ」
お釣りがあったらしく、道渡ってローソンに行く。
姉ちゃんとアイスを買って、店の近くで食べながら、ママを待つ。
「アゲパンやん」
え……どんな奇跡やねん。
田村だった。
「ちょうどよかった、父ちゃんが今しまむらで靴下買うって寄ってんけど、俺ジュース買おう思って」
「なにがちょうど良かった、やねん」
タイミングがいいのか姉ちゃんはトイレにしまむらに戻っていた。
「肉まんでいいわ」
「は?肉まん?」
「奢る約束やったやんけ」
「あぁ~そうやったな……しゃあないな」
早く終わらせたいのもあり、一緒にもう一回ローソンに入る。
田村はスポドリをもってすぐに肉まんのショーケースのあるレジに来た。
「これでいいわ、オリジナル肉まん」
約束やしな……まさかこんなことになるとは……。
小銭入れをだし全財産632円の中から出金した。
「いただきますぅ」
田村は嬉しそうに、ローソンから出るとすぐに袋をむいてかじっていた。
「一口食う?」
差し出されてびっくりする。
「えっ、いいよ、食べぃいや」
食べさしやんっ……。
「あれ?誰?」
後ろから姉ちゃんが声かけてきた。
「クラスメイトの田村って奴」
ふりむいて言うと横にいた田村が食べかけの肉まんを袋にしまった。
「た、田村です」
あれ?なんや田村……。
「へぇ……田村くん」
なによ……単純にクラスメイトの田村やん。
なんかわからんけど、変な空気やぞ。
「ママ来たみたい、しまむら戻ろう」
姉ちゃんが私の手を引いた。
「奢ったでな、んじゃな」
田村がキョトン顔してるのを見てから、しまむらに戻ってきたママの車に乗り込んで帰宅した。
無念……挿絵が間に合わんかった……今回チャッピーもジェミニも思った通りのん書いてもらえなかった……挿絵なしにするか……あとから付け加えるかは未定 なんせ恋羽じゃなくなる……( ;∀;)




