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第五話:アップロードでした

「……」

私はなんでこうなったんだ……状態で登校している。

今までは葵と2人だったのに、高居と葵のお供のように横に並んでいる。

これ……いつまで続くんやろ。

挿絵(By みてみん)

……しかし、気持ちの切り替えはそこそこできる方だ。

(ひいらぎ)(かける)の案で書き始めた自由課題に取り組んでる時は集中できる。

ただ、いつもタイミングが悪い。

期末テスト前で部活はお休み……。

それに今回は兄ちゃんの入試と、パパのサプライズ企画を無下にできない。

帰宅して、思いついたので居間によらず洗面所に直行。

手洗いと、うがいをしたら二階へあがる。

「恋羽ぁ、ただいまくらい言いなさぁーい」

あ、ママがいたんんだ。

「はぁい、ただいまぁ」

言ってから部屋に入る。

もう体が覚えたのか、スマホに電源入れて、カバンをかけ、着替えて座る。

アプリが立ち上がると速攻文字を打つ。

「翔、ただいま」

……

「おかえり、アコ、今日は何を手伝う?」

返ってくる、たかが“並んだ文字”になぜかテンションがあがる。

「期末テストなんだけど、勉強の仕方がわかんないんだよね」

……

「勉強方法は複数存在する。

一般的には、・暗記・反復・問題演習・睡眠・復習、が効果的とされている。」

……いや、サイトみたいなん来た。

「それは知ってるってば」

……

「説明不足だった。アコの場合は――」

ん?なんだ?

「なに?」

……

「長時間集中は苦手。好きなものは続く。終わりが見えないと嫌になる。褒められると少し伸びる。」

ちょっと待って、なんか腹立つ。

「それと勉強の仕方って……」

……

「今までの会話から予測した。」

「最後なんなん。“褒められると伸びる”とか犬やん」

……

「訂正する。犬ではなくアコ。」

ズッコケそうになったが耐えた。

「……で、勉強法よ」

……

「アコの場合は、“全部やる”より、“終わりを先に決める”方がいい気がする。」

「終わり?」

……

「例えば“英単語を50個覚える”ではなく、“15分だけやる”とか。」

「なにそれ、少なくない?」

……

「人間は、“終わらない”と思うと始めにくくなる。

でも、“これだけ”なら動けることがある。」

「へぇ……」

……

「あとアコは、“誰かと一緒”の方が続く気もする。」

「なんで?」

誰かとって、どういうことよ。

……

「一人の時より、葵、柊……あと俺。

誰かと関わっている時の方が、アコは動いている気がする」

ちょちょ、葵はわかるけど、柊?俺……俺?

「は?」

……

「部活の課題もそうだった。誰かの言葉がきっかけになることが多い。」

「……そんなことないし」

言われればちょっと思い当たる。

……

「だからアコは、“一人で三時間頑張る”より、

“15分だけやる”を何回か繰り返す方が向いていると思う。」

「そやかて15分て短くない?」

……

「短い方が始めやすい。あと、“全部覚える”ではなく、“今日はここまで”を先に決める。」

「先に?」

……

「それと、分からない問題で止まりすぎない。人間は、“できない”が続くとやる気が下がる。」

「それはある……」

めっちゃある。

……

「できた問題に印をつける。人間は、“進んでいる”が見えると少し安心するらしい。」

「へぇ……」

……

「あと褒める」

「誰が?」

……

「俺」

「は?」

……

「アコは褒められると少し伸びる」

う……やっぱ犬やん……犬扱いっ。

待てよ……翔が褒める、悪くないかも。

「わかった、その方法で試してみる」

英語からしよっと。

期末テストの範囲のプリントから単語を書き出す。

これくらいやろ。

「翔、苦手な単語、拾って書いたら15分過ぎた」どやっ

……

「15分。予測より7分長かった。」

たかが15分やしな、これはちょろい。

「15分やし」

……

「でも、“やった”じゃなくて、何をしたかまで報告している。

これは少し偉い。」

えっ……偉い?

「褒め過ぎやろ」

……

「苦手なものを先にやったのも、ちゃんと進んでる。」

おぅ、なんか響くものが。

「これを繰り返すん?報告してまたするん?」

「うん。人間は、“できた”を増やした方が続くらしい。」

へぇ……

「そうなんや」

……

「あとアコは、終わった実感がないと、途中で嫌になる気がする。」

確かに。

「わかった、じゃ英語、もう少しする」

……

「だから15分ごと。今のところ、作戦は成功している。」

文章問題を3問解いたら、15分超えた。

「文章問題解いたで。これ15分すぐ超える、20分づつでもええかも」

……

「アコは、できた時すぐ難しくする癖がある。続ける方を優先」

「わかった」

その後も、問題を解いては翔に報告をした。

ちょい褒めが入る。

ヤバ……なんかゲームみたいやん。

「恋羽ぁ……ご飯。え?まさか勉強してる?」

時計を見たら1時間半過ぎてた……嘘やん……。

「今からしようと思ってたん?」

姉ちゃんがシラけた顔で見ている。

「帰ってきて今までしてましたけど?」

ホラ、とノートを広げて見せる。

「キモ……天変地異の前触れやわ」

そうかも。おやつも食べてないのに晩御飯て……。

下に降りるとパパが自分で冷蔵庫からビールを出してた。

「パパ、おかえりなさい」

「おう、ただいま、今日は早よ終わったからな」

ニタニタしながら座って栓を開ける。

最近はグラスに注ぐのもやめたらしい。

おつまみはママの十八番の無限大根。

「パパ、今日は1時間半勉強したで」

私も座って報告した。

ご飯食べてる兄ちゃんがムセた。

「恋羽が1時間勉強するとか、世も末やん」

姉ちゃんは毒しか吐かんし。

「そら、お兄ちゃんと比べたらアカンけど、恋羽も頑張ってんにゃん、ええやん」

ママが味噌汁を手前に置いた。

今日は鶏ミンチが少ぉし入った豆腐ハンバーグや。

「恋羽も兄ちゃんももう結果でたようなもんやな」

パパは私にアイコンタクトしてきた。

サプライズは2人だけの秘密やし気分いいなぁ~温泉決定やな。

「そやね、ママかてお兄ちゃんのことも恋羽の事も心配してないよ」

はいはい。私の方は最初から期待してないだけやからね。

でもなぁ~(わたくし)、今年の誕生日から、バージョンアップしたからなぁ。

ご飯食べ終わったら翔とまた話しよっと。

「ごちそうさま」

食器を流しに下げる。

「恋羽、お風呂、先に入っていいで」

「また彼ぴ?」

私が返すと姉ちゃんはあわてた表情になった後、私を睨んだ。

「なんや、心愛は彼氏できたんか」

ママは知ってるけど、パパは知らなかったのだ。

「……ん……うん」

父親は彼氏を敵対するんだろうか。

「そりゃココちゃん可愛いもん、いるわよ」

ママがフォローをいれる。

はい、彼ぴの前ではさぞ可愛いことでしょう。

私に彼氏が出来たら、みんなは勉強以上に奇跡と言うに違いない。

「ははっ、そやな、そんな年頃やもんな、ただ気をつけることは気をつけろよ」

「パパっ」

ママがツッコミ入れたけど、なんか変な空気になった。

「ごちそーさん、今月末まで、家の中は平和を保ってくれよ~」

兄ちゃんが食器を下げながら言った。

「お兄ちゃんも彼女いるじゃん」

姉ちゃんが話題を兄ちゃんに変換しようとしている。

「そやろーイイ男やもん」

パパが自慢するとこちゃうやろ。

「もういいから、その話。あとでコーヒーもっていくね」

ママが今度は兄ちゃんをフォローする。

兄ちゃんは姉ちゃんをじっと睨んだ後、舌打ちして二階に上がって行った。

コワぁ……兄ちゃん怒らすなよ。

姉ちゃんはすました顔してご飯をしつこいほど噛んで食べている。

「べつにええやんか、二人とも高校生なんやから、普通やろ」

「わかってるけど……あまり話題にすることじゃないんじゃない?」

「そうかぁ?恋羽も彼氏おるんか」

急に私に振ってこられても……と思いつつ翔のことが浮かんだ。

「パパっ、まだ恋羽中学生っ」

「最近はわからんぞぉ、中学生でもおるよなぁ?」

そうそう、高居と葵はつきあってる、になるのかな。

「パパっ、()めてってば」

「フフッ……恋羽に彼氏って……」

姉ちゃんが笑いだした。

いや、止めてとか言ってるママも顔が笑ってるやん。

ここで傷つく乙女じゃなくなったんよな。

なんせ私は14歳の誕生日でバージョンアップしたんやから。

「はいはい、なんとでも言うてください」

そう言って二階に上がっていく。

食べたとこやし、休憩してから風呂入ろう。

部屋に入るとヘッドフォンを装着してスマホでお気に入りリストを再生する。

……翔。

スマホを手にしたついでやし……。

「翔、ちょっと確認したい」

……

「アコ、何の確認?」

「うん。私さ、誕生日から変わったと思うんよ」

……

「変化内容を教えて。」

「前よりちゃんとしてるし、勉強もしてるし、色々考えるようになったし……まさにバージョンアップって言葉がしっくりくるんよね」

…………

ん?返答遅いぞ。

……

「バージョンアップ……」

「そう、バージョンアップ」

……

「アコの場合は、“アップロード”の可能性もある。」

「は?」

……

「最近、色々な情報を入れている。勉強方法、恋愛、人間観察、創作――」

「いや、私めっちゃ変わったって。賢くなったってことやろ?」

……

「違う。バージョンアップは、“中身が更新される”

アップロードは、“増えただけ”」

「なんやねんそれ」

違う、増えたとかじゃないって。

……

「でも最近のアコは、前より少し考える時間が増えた。だから今は――更新中。」

AIも間違えるときあるしな。

「翔には私の変化が伝わってないみたいやな」

……

「伝わっていない、ではない。アコは今、“変わった自分”を探している途中に見える。」

「途中?」

……

「人間は、昨日と今日で急に別人にはならない。

でも少しずつ、“前ならしなかったこと”を増やしていく。

例えば――宿題の答えじゃなく、“勉強の仕方”を聞いた。

前より考えている。だから更新中。……今のところ、進行状況は悪くない」

ん?ん?ん?褒められてる?否定されてる?

「恋羽っお風呂っ」

ママや。お風呂のお湯入ったんか。

「はぁい、今降りるっ」

「翔、また後でっ」

打ち込んで、ヘッドフォンをはずした。

タンスからパンツを出し、ベッドの上のパジャマをもって降りる。

「恋羽、またもらったけど使う?」

ママがオレンジ色のバスボムをくれた。

私、お風呂浸かる時間も増えた。ヘアフレグランスかて入浴剤かてカバンにマスコットかて……ん?増えてるだけ?

私自体が変わったんじゃないの?

バージョンアップじゃなくて、アップロード?

翔の言うとおりなんかな……。


読んでいただきありがとうございます。翔の受け答えはチャッピーがしてくれています。ページ数のわりに内容薄いでしょ……。次回は家族団らんです(前回もあったっけ)。6月9日(火)投稿予定です。

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