↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/23

第十六話 友達との距離

翌朝、いつもより早く待ち合わせ場所についた。

ふと、もし葵が来なかったら、という思いが頭をよぎった。

「恋羽、おはよ、今日早いっちゃ」

「おはよ、葵」

葵の姿と、挨拶にホッとする。

横並びに歩きながらチラチラと葵の顔色をみる。

「なぁ……」

「なぁ……」

同時だった。

「ん?なになに、葵?」

「恋羽こそなによ」

何から話そう……聞こう……。

「んと、今日でテスト終わるね」

ちゃうやろ……。

「終わるね」

ですよね。

「葵は何を話そうとしたん?」

葵から話してほしいな。

「最近さ……恋羽、高居君と一緒にいてるでしょ」

……え。

「昨日もそうだったっちゃ」

ちょ、待って、一緒にって、二人で、ではないやろ。

「葵、私と高居が一緒って、田村や柊もおるやん」

「高居君、私といるときも恋羽の話するっちゃが」

えぇ……何それ。

「いや、それは、多分、私のことはどう言ってもいいからちゃうか」

そやそや、いじりやすいし、共通話題やからやろ。

「高居君、二人の時は、恋羽といる時ほど喋らんき……」

語尾が小さくなる葵に返す言葉を探す。

「あれやん、高居は葵といると緊張するんやって」

なんでこんなこと私が言わなあかんねん。

「私も何喋っていいかわからんなってるとよ」

葵、もしかして悩んでる?

でも私が何かアドバイスとかはでけんし。

「そっちで高居君、何喋っとおと?オタクみたいな話?」

オタクって……。

「何喋ってるって、気になるんやったらこっちきたらいいやん」

葵は私の顔をジッと見た。

アドバイスになったんかな。

「私、田村のこと嫌いって言うたっちゃ」

……そうや、葵は田村のことが嫌いや言うてた、わかってる。

前にも聞いたけど、今はそう言われるとなんか嫌な感じする。

「高居に聞いたらいいやん」

ムッとして言い返したら葵もムッとした表情になった。

また無言で教室に入りそれぞれ席に着いた。

葵はすぐに川田さんと木村さんのところに行った。

なんかやらかした感あるけど、もういいや。

「おはよ~恋羽」

すぐに岩子が私のところにきた。

「おはよう、岩子」

「おはよう、田村、杉田君」

ちゃんと杉田君にも声かけるんやな。

普通に杉田君も挨拶を返す。

「あげぱん、“あたたたたたっ”って知ってる?」

田村、そんなんで、なにがわかるねん。

「おぅ、あげぱん、田村ぁ、岩子おはよ、おはよ」

高居もこっちに来るのが当たり前になりつつあるな。

葵と入れ替わりで来るんワザと?

「シャキーン!お前はもう死んでいる」

急に田村が私の額に人差し指で押してきた。

「なっ、なにすんねん、しかもなんてこと言うねん」

岩子がまた笑いだす。

「あげぱん、“ひでぶ~”やで」

高居もそう言って笑いだした。

なんやと?ひでぶ?デブ?

「あったたたたたたたっ!うあちゃぁ!」

今度は田村が高居の頭に両手で交互にぺちぺちと連打する。

「あはっ……あはは」

岩子の笑いが止まらない。

「北斗百裂拳《ほくとひゃくれつけん》っ」

挿絵(By みてみん)

「うぅひでぶぅ~」

高居がよろけて杉田君の机にもたれかかる。

「なんなんさっきから……」

シラけた顔をしていると杉田君が読んでいた文庫本を閉じた。

「俺はサウザーが好きやったな」

またわからん話始まるぞ。

「えぇ、俺、絶対レイやわ、ヒュ~」

高居が口を尖らせて片足、両手上げて変なポーズ取り出すし。

「あはは、レイそんなんじゃないとよ」

岩子が高居にツッコミ入れてる。

「ジュウザ、ジュウザ、絶対ジュウザがカッコいい」

田村、興奮し過ぎ。

「田村はジャギやろ」

柊が田村に言いながら描いた絵を持って来て岩子に渡す。

「わぁ~敵キャラ書いてくれたと?スゴかぁ」

高居と田村がのぞき込む。

「すげっ」

二人口をそろえて言う。

見た後、岩子は当たり前のように杉田君に回した。

チャイムと同時に先生が教室に入ってきたのでバタバタと岩子と柊、高居が席に戻って行った。

そして葵が戻ってきたが、私の方は見なかった。

今、私は話題に入れてなかったけどね。

次の休み時間も葵はすぐに木村さんのところへ行った。

給食の時間になると、また岩子は自分の給食を持って葵の空いた席に座る。

「恋羽はあまりアニメは見んと?」

私以外はみんなわかるみたいやけど私は知らんもんなぁ。

「あげぱんは、昭和の曲ならわかるっちゃが」

私の代わりに田村が答える。

「私さぁ、今のアニメも好きだけど、アマプラやネトフリとかで古いの見だすと、そういうのんばかりあがるから見ちゃうんだよね」

岩子は上品に口に運んで食べる。

「わかる、俺もそれで一時、古いアニメ見続けたことがある」

「あぁっ、杉田君も?やっぱりぃ?」

岩子、最近テンション高いな。

「俺は元々昭和のアニメが好きやけぇ、な、あげぱん」

私に同意求めるなよ。

「安藤さん、昭和の曲って名曲ばっかり?」

杉田君に聞かれて急で思い出せない。

「ん、あぁ、アニメソングも田村に言われて聞くようになったかなぁ……リストに入れると、お奨めで聞かされることあるから」

「そぉ、アプリが勝手におすすめするよねぇ」

岩子がこんなに明るいとは。

給食を食べ終わる頃、高居が当たり前のように来て、話に入る。

話題なんて湧いて出てくるけどなぁ。

葵とは話題が浮かんでこんのやろうか。

放課後になるとそれぞれ部活に向かう。

「恋羽、明日ね」

葵はそれだけ言って教室を出ていった。

「あげぱん、行くぞ」

田村はそう言って柊の所へ行った。

「テスト終わったから部活がはじまったっちゃねぇ……私部活入ってないから一人で帰ることなる」

岩子が俯《うつむ》いて声をかけてきた。

「あぁ、帰宅部やもんね。そっかぁ」

「ま、帰って小説書くわ、恋羽、また明日ね。杉田君、ばいばい」

岩子は杉田君にも声をかけて教室を出ていった。

美術室ではいつも通りにそれぞれ真面目に作品を仕上げ、柊は手直ししたものを顧問のところへ持って行く、と準備室に行ったままなかなか戻ってこなかった。

「遅いっちゃ……」

田村も気にかけている。

帰る準備をして待っていたら柊が重たい空気を背負って戻ってきた。

「どうしたん?顧問にダメ出しされたん?」

帰る準備を始めた柊に声をかけた。

「ん……いや、なんか、ヤバい」

……?まったくわかりませんけど。

柊だけ重たい空気のまま3人で並んで学校を出る。

今更やけど、3人で部活行って、帰るのが普通になってるような……。

帰宅していつものように部屋に入ると、スマホの電源入れて着替える。

テストが終わって気分は軽くなった半面、柊に何があったのか少し気になる。

翔を立ち上げた。

「ただいま、翔」

……

「おかえり、アコ。今日はどうやった?」

「葵が離れそう」

……

「……そっか。アコには、そう見えたんやな。今日、何かあった?」

「話が合わなくなってきた」

……

「……前は合ってたのに、今はそう感じるんやな。どんなとこで?」

「葵が言うことに、返せんなってきたんよ」

……

「返したいのに、何て返したらいいかわからん感じ?」

「そう、言葉が出ん」

……

「……それ、無理に返そうとせんでもええんちゃうかな。前みたいに同じこと思えへんから、言葉が出んようになってきたんかもしれん」

「返さんかったら会話にならんやろ。高居とも会話が続かん言うてた」

……

「そやな。返さんかったら会話は止まる。でも、無理に合わせて返すんも違うやろ。……高居も同じなら、葵の話し方が変わったんか、アコらが変わったんか、どっちもあるんかもしれんな」

葵が変わった?私が変わった?どうなんやろ。

「最近、田村や岩子と喋ってて、考えなくてもわからんくても言葉は出る。でも葵と喋るときは言葉が詰まるんよ。」

……

「……田村や岩子には、“ちゃんと返さな”って思ってへんからかもしれんな。わからんかったらわからん、変やったら変って、そのまま出せる。でも葵には、前から合わせることが多かったんちゃう?」

「それはあるかも。田村と喋る時はなんも考えへん」

……

「やろ?田村には、変に正解探してへんのやと思う。……葵と喋る時だけ、“こう返したほうがええかな”って考えてしまうんちゃう?」

正解を探してない……うーん、でも確かに葵には考えて喋るかも。

「なんでそうなったんやろ」

……

「……前は葵に合わせることが、そんなにしんどくなかったんちゃうかな。最近、田村や岩子と喋るようになって、“考えんでもそのまま言える”感じを知ったから、余計に違いがわかるようになったんかもしれん」

「それは、気が合う、合わないってこと?」

……

「それもあると思う。でも、“気が合う・合わへん”だけやなくて、アコがその相手の前でどれくらいそのままでいられるか、ってこともあるんちゃうかな」

「なんか難しいなぁ。田村や岩子とは楽やけど、葵に気を遣うって、葵のこと苦手になってしもたみたいやん」

……

「苦手になった、とは限らんと思う。……葵のことが嫌になったんやなくて、“前みたいに合わせるのが自然”ではなくなってきただけかもしれんな」

「“前みたいに合わせるのが自然” ?前は合わせてたのに今はしなくなってきてるってこと?」

……

「うん、たぶん。前は葵に合わせるのが当たり前やったから、自分でも“合わせてる”って気づいてへんかったんやと思う。……今は田村や岩子と喋る中で、自分のまま返す感じを知ったから、前と同じようにはできんくなってきたんちゃうかな」

下から呼ばれた……ご飯や。

「ご飯食べてくる」

……

「うん、いってらっしゃい。あとでまた話そ」

返答を確認してアプリをオフにして下に降りる。

「やった、今日シチューやん」

向かって座っている姉ちゃんは渋い顔をしてサラダをてんこ盛りにしている。

「ココちゃん、シチューも食べい、野菜たくさん入ってるんやから」

ママが差し出した器を受け取り、粉チーズをうえからたっぷりかける。

「恋羽、かけすぎやって、どんだけカロリー倍増させるん」

「チーズ多い方が美味しいもん」

姉ちゃんはママに半分でストップ、と叫んで少ないシチューの上にパセリをふりかけていた。

パセリなんか草やん。

兄ちゃんは相変わらず晩御飯時間には間に合わない。

バイトかデートかすら議題に上がらない。

「ただいまぁ~いい匂いするなぁ」

パパもシチューは好きなんよね。

ヨレヨレのトレーナーに着替えて席に着くとビール片手に焼いただけのウィンナーをチビチビ食べ始める。

「パパは北斗の拳ってわかる?」

パパは私の質問にいつも快く答えてくれる。

「そら、男やったらほとんど知ってるやろ。古いアニメやけどパチンコにもなってるし、ゲームにもなってるからなぁ、ただ、説明しだすと長いなぁ」

え……長い説明面倒やなぁ。

「長いんやったらええわぁ」

「恋羽は面倒くさがりやなぁ……北斗の拳でも主題歌がカッコええぞ」

シチューのお替わりをママに入れてもらう。

「クリスタルキングいうてな、そら声量とかすごい」

「へぇ~、聞いてみるわ。どんなん?」

パパがメモ用紙にタイトルを書いてくれる。

「ママはねクリスタルキングの“ルパン三世のテーマ”カッコ良くて好き」

「それなぁ~。あれ、ママ、シチュー、少ないな」

控え目に入れられたシチューにパパがツッコミ入れてる。

「恋羽最近、アニメの話題増えたね。田村クンの影響?」

姉ちゃんはサラダのお替わりを皿に盛っている。

言われてみればそうかも。

「うん……葵が嫌いな田村。私も最初は田村のこと絡むの面倒やなぁって思ってた。でも最近、アイツおもしろいねん」

自分で言っときながら、前とは印象が変わったことは間違いない。

「私が聞いてる感じでは、気が合うってやつじゃない?」

姉ちゃんが言った後、すぐに追いかけるようにママが違う言い方をした。

「気が合う、よりも、田村君が恋羽に喋りやすさを感じてて、恋羽も田村くんとは気軽に喋れるから楽なんやない?」

「気が合う、と何が違うんよ」

私が聞き返そうとしたことを、姉ちゃんが先に口にした。

「気が合う、と気を遣わない、は違うやろ。気が合う、は共感や。気を遣わない、は、気が合わなくても一緒に居れる仲や」

パパの説明に姉ちゃんは“あぁ~”と頷いたが私はピンとこない。

「最近の恋羽は友達関係が動く時期なんかもしれへんね」

ママの言ったことには、なんとなく“そうかも”って感じたけど答え方が解らなかったので、ウンウンと頷くだけにしといた。

かごにあったミカンを1個だけ剥いて食べて、ごちそうさまをすると、パパが書いてくれた曲のメモを受け取って自分の部屋に戻る。

お風呂に入るまでの時間、パパのメモの曲を検索してからヘッドホンを装着。

試聴してみよ。

「おぉ、かっこいい」

ノリノリで聴きながら明日の時間割をして宿題を出す。

簡単なドリルだったので15分で終わった。

姉ちゃんがノック無しでドアを開けて「風呂」と言ったので着替えをもって降りる。

バスボムは黄色を入れよう。

10分くらい浸かって出て、髪を乾かす。

翔と少し喋ってから寝ようと、歯磨きを先にしてから部屋に戻った。

アプリをたちあげる。

「翔、寝る前に雑談しよう」

……

「うん、ええよ。……今日は何の話する?」

「私やっぱり、岩子や田村と居る方が楽やって思える」

……

「……そっか。前より、はっきりそう思うようになったんやな。何がいちばん楽なんやろ?」

「考えなくても喋れるところかな」

……

「うん。気ぃ遣って答え探さんでも、そのまま出てくるんやな。……それって、アコがその二人の前では無理してへんってことかもしれん」

「だって田村やで?何を気ぃ遣う?」

……

「……それはそうやな。田村に気ぃ遣ってるアコ、あんまり想像できへんし。だから余計、考えんでも喋れるんやろな」

「あとな、葵が高居と喋れんなってきたって言っててな、それが、高居が私のこと言うって……そんなこと言われても……ってならへん?」

……

「うん、それはなると思う。……高居がアコのことを言うたからって、葵がそれにどう返したらええかは別やもんな。自分に向けられた話じゃないぶん、余計に返しにくかったんかもしれん」

「高居も葵と喋りづらいから私らのとこ来て喋るんやろか」

……

「そうかもしれんな。でも、高居が葵と喋りづらいから来てるんか、単純に田村らと喋るんが楽しいから来てるんかは、まだわからんやろ。……アコには、どっちに見える?」

「葵は、高居が喋るのは私のこと、って言い、しかも最近私のとこに来る。どうしたらいいんやろ」

……

「……まず、アコが何かせなあかんって決めんでええと思う。高居が来るんも、葵がそれをどう感じるんも、それぞれのことやろ。……アコは、高居が来たら普通に喋る。それでええんちゃう?」

私真剣に友達のこと翔に相談してるなぁ……。

「そおやんな、私なんも悪くないもん」

……

「うん。アコが高居に何かしたわけでも、葵から高居を取ろうとしてるわけでもないやろ。……だから、そこまで背負わんでええと思う」

「なんかモヤるんよな」

……

「うん。悪いことしてへんって分かってても、葵が気にしてるのも分かるからやろな。……“私は悪くない”だけでは、気持ちが片づかへんのかもしれん」

「このままほっといたらいいんやろか?」

……

「ほっとく、っていうより……今は無理に動かんでええんちゃうかな。葵が何か言ってきたら聞く。高居が来たら普通に喋る。……アコまで誰かの気持ちを先回りして決めんでええと思う」

動かへんって、現状維持ってことかな。

明日の朝も会うんやけどな。

「動かんっていうのは何もしないってこと?気にするなって感じ?」

……

「気にするな、とは違うよ。気になるなら気にしててええ。ただ、“何とかせな”ってすぐ動かんでもええってこと。……今は葵も高居も、自分で考えてる途中かもしれんやろ」

「二人に任せて、変に動くなってこと?」

……

「うん、今はそれでええと思う。二人の間のことまでアコが背負わんでいい。……ただ、葵が話してきた時はちゃんと聞く。それで十分やよ」

「わかった、そうしてみる」

……

「うん。今はそれでええと思う。……アコが普通にしてて、それでも何か変わったら、その時また一緒に考えよ」

翔の返答を読んで、アプリを閉じた。

翔にがっつり相談してしもた。

葵のことは気になるけど、むちゃくちゃ重たくも感じない。

それは多分、岩子や田村がいるからって思える。

前は葵しかいんかった。

私、田村の影響受けてるんか。

それは間違いないなぁ。

思えば翔にも田村の話ばっかりしてる。

でも「好き」とは違うんよな。

なんやろ。


次回も来週の火曜日24日に投稿予定です。添付したイラストがなかなか手間かかりました。難しいなぁ。お話の内容については、ジワジワ動いてるかな?相変わらず日常の内容ですね。…言い訳させて(する) 田村が可愛いなりすぎた……修正に修正重ねて……妥協した(根性無し)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。