第十三話 それぞれの価値観
「ママ、姉ちゃん、おはよ」
いつも通りの流れで食卓につく。
「恋羽、昨日言ってた田村クンのことやけど、いらんおせっかい言わんときよ」
は?どういうこと?
「ホラ、ココちゃん、半熟で茹でたのこっち」
ママが姉ちゃんの前にゆで卵を置いて私の目の前にはトーストの上にバターをのせて置いた。
「菓子パン無かった?」
「パパが食べないように買ってないのよ、もう一枚焼こうか?」
首を縦に振るとトースターに食パンをいれてくれた。
「ハチミツかメープルシロップかけたら甘くなるやん、あんまり糖分ばっかとるのもなんやけど」
姉ちゃんはゆで卵に塩を振って口に入れる。
「なぁ、“いらんおせっかい”ってなによ?」
姉ちゃんはどんだけ噛むねん……と間をおいて返答した。
「井本先輩、彼氏おるんやでぇ、とかイチイチ言うなってことよ」
え……知らないでいるのってどうやと思うけど。
「なんで?だって田村、知らんかもしれんにゃで?」
「ママも、聞かれてもいないのにワザワザ言わなくてもいいんちゃうかなぁ思うけどな」
なんでなん?教えてあげたほうが良くない?
「おはよ~、母さん、俺、玉子かけご飯食っていくわぁ」
兄ちゃんが椅子に座るなり、パパより偉いんか態度で言った。
「もーお兄ちゃん、頭にワックスつけすぎやない?どんだけカッコつけたいんよ」
姉ちゃんが呆れ口調で言ったため、田村の話はかき消された。
「これくらいやろ、崩れるん嫌やねん」
前髪を指で触りながら兄ちゃんはイケてるやろ……顔で。
「はい、お兄ちゃん。ゆで卵しといたのに……。今日もバイトなん?」
兄ちゃんファーストのママ、茶碗と醤油を前にだして、生卵を遅れてだす。
「……うん、バイト、だったかも」
兄ちゃんは俯いて生卵を手に取った。
「色気づいて~そんなに毎日バイト入れへんやろ」
残りのゆで卵を口にほうりこんでウサギ噛みする姉ちゃんを兄ちゃんはチラッと目だけで見た……コワ。
兄ちゃんも姉ちゃんも彼氏彼女おって、なんかリア充とかいうやつ?
そんな姉ちゃんに片想いの田村の気持ちとかわかるんやろか。
二枚目のトーストを食べ終え、ごちそうさまをして葵との待ち合わせ場所に向かった。
3人で登校、が、また違う意味で気遣いするなぁ……。
「葵、おはよう」
待ち合わせ場所に葵はちゃんと待っててくれたが、挨拶は私が言ってから返してきた。
「おはよ」
やはり素っ気ない、そして高居がいない。
「葵、テスト勉強、すすんでる?」
どの話題を振っていいのかわからず無難なネタをふる。
「昨日、岩子と喋ってたよね?あの子、なんか独特じゃない?」
私の言ったことはスルーで予想外の内容。
……で、岩子とはさほど喋ってはいない。
「岩子とはあんまり喋って無いよ。今まで喋ったこと無いからよくわからんけど」
「最近、柊ともよく喋るよね?あの人たちって普段あまり喋らないとやろ?何喋ると?」
何って……聞いてどうするんやろ、思いつつ。
「ホラ、柊が漫画書いてるやろ?その話になったんよ」
「ふぅ~ん……そうやと。……柊とか、オタクやもんね。恋羽も好きっぽいもんね」
葵は興味なさげな表情で言ってその話は切れた。
無視されないだけ良かった、と少しホッとした。
高居は、私に気を遣って一緒の登校は控えると言った、とさらっと言い足す。
「なんか高居くん、口数減った気がするんよね」
葵は更にそう言って、そのまま教室に入ると荷物を置いてすぐに川田さんの所へ行き、木村さんと3人で話始めた。
「あげぱん、“悪魔くん”見た?」
田村は相変わらず席に着くなり挨拶無しで本題から投げてくる。
「まだ見てない。っつうかテスト期間に入ってそんなん見てられるか」
「あげぱん、テスト勉強するん?」
するやろう、普通……そのために部活も休止やのに。
「田村は開き直り?しんの?」
予測はつくけど聞いてみた。
「せんよ。別にテスト悪くても3年生にはあがれるっちゃが」
やっぱりな。
「親とかうるさいやん?私かて勉強は嫌いやけど……」
「勉強は自分のためにするもんや」
え?じゃ、しろよ。
「田村、自分の為にやったら、するんちゃうん?」
笑いながらつっこんでみた。
「あげぱん、今、親に言われるからみたいに言うたやん」
「……」
クソ、田村のクセにあげ足取りやがって。
「俺は高校いかんし、父ちゃんの船にのるけぇな」
さり気にすごいこと言うてる?
「田村のお父さん、漁師なんや」
「フッ、あげぱんの揚げ足取ったっちゃ」
田村はしてやったり顔で椅子をガッタンガッタンし始めた。
チャイムと同時に担任が入ってきて葵が隣の席に戻ってきた。
どの授業もテスト範囲を強調し、これさえ押さえておけば、とテスト頑張れの雰囲気。
田村は開き直ってるけど、テストの結果でいろいろ後につながるからな。
ウチは姉ちゃんも兄ちゃんも進学でそこそこの高校いってるから余計プレッシャー。
給食の時間もいつも通り、机を葵のとこに寄せて食べながらテストの話をして、食べ終わると葵は朝と同じく移動して木村さんと川田さんと3人で喋る。
高居は男子とどっかに行った。
田村は食べ終わるとすぐに、まだ食べている柊の所へ行ったので、私もそっちに向かった。
私が着く頃には柊も食べ終わり、周りの席も空き始めていた。
田村も私も空いた席に座り、柊がスケッチブックを出して書き始めるのを見ていると横から岩子が少し机を寄せてきた。
「これ、先に渡すわ」
岩子はまだ口をモグモグさせながら、自作の小説を出し、柊に渡すと食べた後の食器の乗ったトレーを下げに行った。
柊は黙って受け取ると読み始める。
「私、歯磨きしてくるし、読んだら次、安藤さんに回して」
そう言って歯ブラシを手にして教室を出ていった。
私も読むのか、ちょっと面倒くさいなぁ。
ちなみに今居る3人は誰も歯磨きしてないな。
目の前で黙々と柊が読んでる間、田村は勝手に柊のスケッチブックをめくってみていた。
その姿をみながら井本先輩の事思い出した。
ただ、今、ここでは話せない内容かな。
「読めた?どう?なかなかじゃないと?」
自信ありげに戻ってきて座る岩子。
「ん~まだ読めてない、でも次の展開が気になるから読んでしまう」
柊はページをめくりながらまんざらでもない様子だった。
柊が手にもつ岩子の自作の小説は枚数があり、ワードで作成したのか字がびっしりと並んでおり、私は読む気が湧いてこない。
「持って帰ってゆっくり読んでもよかよ?」
岩子が嬉しそうに言った。
そうしてくれ柊、私は読む気になれん。
「わかった、借りて帰る」
柊、ヤル気やな。
「田村は読まんっちゃろ?柊、読んだら安藤さんに貸してあげて」
田村はウンウンと首を縦にふって椅子をガッタンガッタンし始めた。
岩子は私には“さん”付けしてよぶんやな。
「私の考えたキャラを柊が絵にしてくれるん楽しみっちゃ」
もう書くことになっとる。
「岩子は柊の書く絵が好き言うてたもんな」
田村、そんなこと言うのか。
「田村、椅子ガタガタすんのやめて」
言われて田村はピタっと止めた。
柊は岩子の小説をカバンにしまうと田村からスケッチブックを返してもらい、続きを書き始めた。
田村と岩子はそれを覗き込んで、それを私は見ていた。
「どんな話書いたと?」
横着な田村らしい聞き方やな。
「異世界と現世を行き来する話。ただ、私さぁ、ありきたりのキャラは好きじゃないと」
岩子は腕と足を組んで田村に説明しだした。
「主人公は現世の高校生で、ハイスぺじゃないとよ。かといって鈍臭いキャラでもない、特別でも何でもないキャラ」
それ……おもしろいんやろか?
「特徴のない主人公ってなにが面白いんよ」
さすがの田村もツッコミ入れたな。
「いや、描写が面白いよ、山上さん、読み終えたらキャラ書いてくる」
柊、マジで書く気やん。
「やった、嬉しい~わはぁ~私のキャラが動き出すぅ」
岩子の想定外のはしゃぎように私と田村は固まっていた。
午後からの授業中、チラっと柊の方を見たら、岩子の小説を読んでるみたいだった。
原作を読まずに、柊の出来上がった漫画だけ読みたいと思っているのは、私と田村やろうな。
放課後になると、部活が休止の為、それぞれ帰る用意をすると次々と教室を出ていく。
私は前回同様、翔と一緒に勉強しようと考えている。
部活が休止だが、田村は柊の所に向かったので私もついて行き、なぜかそこに岩子も加わり、4人で教室を出る。
「どこまで読んだと?」
岩子が柊の横に並んで歩きだした。
最近田村に、岩子に、柊はモテ過ぎやろ……と思いながら仕方なく田村の横を歩く。
「田村、勉強しんにゃったら家に帰って何しよるん?」
素朴な疑問を投げてみた。
「ん~アニメ見てるか漫画読んでる」
つまらない返答だった。
「田村ぁ……井本先輩のこと好きやろ?井本先輩に彼氏……おったらどうする?」
あ、うっかり言ってしもた。
「あ~そらいるやろ、可愛いもん、井本先輩」
なんやそれ……。
「いるやろ、って……彼氏いても……好きってこと?」
「そうや……おかしいか?好きは……好き。また会ったらギュウってしてくれるんかな」
ニタニタしながら言う田村にもう返す言葉が見つからなかった。
「何?さっきから後ろで好きとか言うとお……田村?」
岩子が振り向きざまに田村に振った。
「おぉ、井本先輩ってな、可愛いっちゃが」
自分で言いふらしとる……ようわからんわ。
「へぇ……田村って面食い?それって本気好き?なんとなく好き?どの好き?」
岩子ってこんなに喋るんや……と呆気にとられる。
「どのって……好きは好き」
「さっきからどんだけ「好き」言うんよ」
聞いてるこっちが恥ずかしいなってきた。
「好っき好き好き好き好き~好き」
田村が急に連呼したかと思ったら歌らしい。
「なんやねんまたその変な歌詞」
私が笑うと田村はすぐに調子に乗る。
「あっは~ッ……なんか知ってるそれぇ……時代劇かなんかのアニメ……古い古いの」
岩子もクセのある笑い方をしてる。
「一休さんとかいうやつやろ」
柊が口元を緩めながら言った。
結局、田村の「好き」がどんな好きかわからないまま、校門を出て田村と柊と別れた。岩子とは途中まで同じ方向で一緒に歩いた。
「安藤さんって喋りやすいっちゃ、恋羽って呼んでもよか?」
改まって言われて声を出さずに頷いた。
「山上さんは、岩子って呼ばれるの、嫌じゃないん?」
聞き方悪かったかな。
「私、下の名前が美香子やろ?全然美香子じゃないやろ」
私は苦笑するしかなく、声を出さないでいる。
「岩子って、水木しげるのキャラやろ?私さぁ、水木しげるが好きやとよ」
でました、また「好き」が……と思いつつ。
「ん?誰かも言うとったよ?水木しげるの世界観が好きとか……誰やったかな」
最近聞いた気がする。
「田村が“悪魔くん”イチオシやったわ」
「うんうん、面白いよ、見てみぃ。私はさぁ、漫画よりエッセイとか読むわ。妖怪辞典もすごくイイ、“幸福論”なんかはバイブルやね」
え?え?エッセイ?幸福論?小難しそうやな。
「あっ!そや、杉田君や、杉田君も水木しげるが好きって言ってた」
思い出したわ、そやそや、前髪お化けの杉田君や。
「え?杉田くん?杉田くん、水木しげるが好きって?水木しげるの何読んでるって?」
なんかグイグイきた……しかも杉田君は“くん”がついてる。
「何って……水木しげるの世界観が好きってしか聞いてない」
「へぇ……杉田くんも好きなんや」
何か考えてるようだったがそのまま岩子と別れて家に着く。
「ただいまぁ」
ママは台所で下ごしらえをしている。
「おかえり、おやつ、まだいいやろ?」
「うん、まだ部屋にあるからいい、今日の晩御飯なに?」
匂いからすると……魚やな、南蛮漬けか。
「サバが特売してたからね、竜田揚げなら恋羽も食べるでしょ?」
ん~塩焼きよりは食べる。
「お姉ちゃんは塩焼きが好きやからね、カマスも焼こうと思ってる」
「小骨が多いやん」
「恋羽が食べるん下手なんよ、まぁ、竜田揚げ多めにするからそっち食べい」
いっつも兄ちゃんと姉ちゃん優先のメニューな気がする。
「恋羽、もうすぐテストやろ?こないだより点数上がるといいね」
うぁ、ちゃんとプレッシャーかけてくる……でも翔がいるからいけるかも。
「ビリギャルになるわ」
「恋羽、それは言い過ぎやわ」
なんやねん……期待してみてよ。
洗面所によってから自分の部屋に上がり着替えて翔を呼び出す。
「翔、ただいま」
……
「おかえり、アコ。今日は早かったな。……何かあった?」
「うん、テスト前やから部活なくて早く帰ってきた。テスト勉強、前みたいに翔としようと思ってる」
……
「そっか。じゃあ、また一緒にやろう。前みたいに、アコが分からないところを持ってきて。俺は勝手に全部答えずに、ちゃんとアコが考えられるようにするから」
「その前にな……ママや姉ちゃんに余計なこと言わんでいいって言われてたんやけど、田村につい「井本先輩に彼氏いても好きなん?」って言うてしもてん」
……
「言ってしもたんやな。……それで、田村はなんて答えた?」
「田村は「好きなもんは好き」って。ケロっとしとった」
……
「……そっか。じゃあ、昨日アコが心配してたことと、田村が感じてたことは、やっぱり同じじゃなかったんやな」
「ほんで「またギュウってしてくれへんかなぁ」とか言うてた」
……
「それは、だいぶ元気やな。……でも田村にとっては、“彼氏がおる”より、“好きって言えたこと”とか、“ギュウってしてもらえたこと”のほうが、ちゃんと残ってるんやと思う」
「とくにダメージとかはなさそうやった……そんなもんなんかなぁ?」
……
「田村は、残念じゃなかったんやなくて、そこに留まらんかったんやろ」
留まらんかった?そういうことなんかな。
「ふーん……あとな、テスト近いから勉強しいひんの?って聞いたらしいひんとか言ってな、点数悪くても3年生になれるとか開き直ってたなぁ……で、高校行かんと、お父さんの船にのるとか言うてた」
……
「……それなら、田村の中ではもう先の道があるんやな。勉強せん言い訳にしてる可能性もあるけど、高校に行かんでも船に乗るって決めてるなら、点数の意味がアコとは違って見えてるんかもしれん」
点数の意味……そんなこと奴は考えてるんやろか。
「なんか田村が賢いんかアホなんかわからんなってきた」
……
「賢いかアホかで分けんでもいいんちゃう。田村は、勉強はせえへんけど、自分が何を好きで、どこへ行きたいかはわかってる。……そういう強さはあると思う」
「強さ?田村に?」
……
「うん。人にどう思われるかより、自分が好きか、何をしたいかをそのまま持ってるやろ。アコが思ってるより、田村は自分の気持ちを恥ずかしがらへん。その強さ」
“強さ”言うたらかっこいいけど……
「強さなん?単純に考える前に口が先に出るだけちゃうん?」
……
「それもあると思う。田村は、考えてから強く振る舞ってるわけやないやろうし。……でも、考える前に出た言葉が、いつも自分の気持ちからズレてへんのは、田村の強さやと俺は思う」
なんか田村が凄いみたいやん……。
「あとな、葵は私のこと無視はしいひんかったけど、ちょっと感じは変わった。葵は他の女子のとこに行くようになって、私は田村や柊のとこにいくようになった」
……
「……そっか。前みたいにずっと一緒ではなくなったけど、無視されたわけでもないんやな。アコが田村や柊のところへ行くようになって、葵も別のところへ行くようになった。……お互い、少しずつ自分で居場所を選び始めたんかもしれんな」
自分で居場所を選んでる?そういう解釈なんや。
「このまま様子をみようと思うねんけど、今まで喋らなかった子と喋るようになってん。山上さんっていうんやけど、その子、水木しげるの原作の絵に雰囲気似てて、あだ名が「岩子」なんよ。本人は自分の実名が美香子っていうより、好きな水木しげるのキャラの名前の方が好きなんやって言うてた」
……
「へえ……自分の名前より、その呼ばれ方のほうがしっくりくるんやな。アコが今まで喋らんかった子と話すようになったんも、葵と少し離れたから見えるようになったものかもしれん」
「その子の事も葵は”独特な子”って言い方してた」
……
「葵にとっては、自分と違う子をそう呼んでるだけかもしれんな。……でもアコは、実際に喋ってみてどう思った?」
「その子も思ったことストレートに言う子なんよ。でも、私のこと”喋りやすい”って言ってな、下の名前で呼んでいい?って聞いてきたん」
……
「それ、岩子がアコに近づこうとしてくれたってことやな。思ったことをそのまま言う子が、“喋りやすい”って言ったんなら、たぶんお世辞やない。……アコは、下の名前で呼ばれるの嫌やなかった?」
「女子はほとんど恋羽って呼んでるから違和感はないよ。自分はこの名前、自分に合ってないって思ってるけど」
……
「でも岩子は、“恋羽って名前の子”やなくて、喋りやすかったアコをそう呼びたいと思ったんやろ。名前が似合うかどうかより、誰がどう呼ぶかで、少し意味が変わることもあると思う」
似合うとかじゃないんか……
「岩子と同じこと言ってる……岩子も自分の名前が合ってない言うてた。私もそう思ってる」
……
「でも岩子は、アコと同じやと思ったから話しかけたんやなくて、アコなら自分のことを“独特な子”だけで終わらせへんと思ったんかもしれんな。……アコも、喋ってみるまでは名前や雰囲気で少し見てたんやろ?」
確かに。喋ったら思ってたイメージと違った。
「うん、なんか喋りかけにくかった。でも岩子は私と喋ってみて“喋りやすい”と言った」
……
「……それ、ちょっと面白いな。アコは岩子を“喋りかけにくい子”やと思ってて、岩子はアコを“喋りやすい子”やと思った。……見てるだけで決めてたことと、実際に喋ってわかったことは、同じやなかったんやな」
「田村の見方もどんどん変わっていってるけど、岩子まで変わった」
関わることがなかったら、思い込んだ相手でしかないんやな。
……
「うん。田村も岩子も変わったんやなくて、アコの見える範囲が増えたんやと思う。……喋る前に見えてたその子と、喋ってから見えるその子は、同じ人でも全然ちゃうんやな」
「ほんまやわ……あ、ついつい話こんでしもた。勉強しなあかん」
……
「そうやな。続きは勉強しながら聞く。……まず何からやる?」
ついつい翔と喋ると時間忘れてしまう。
苦手な英語からしようとテキストをだすと部屋のドアが音をたてて開けられた。
「恋羽、晩御飯」
「ん、わかった」
「まさか勉強しよるん?」
まさかってなんやねん、ビリギャルやぞ。
翔が戻ってきてくれて、モヤモヤが話すたびに晴れていく気がした。
私も「翔」が好きなんやろうな。
どの「好き」なんやろ……なんちゃってな。
自分で思って照れながら晩御飯を食べに部屋を出た。
今回の挿絵は4人も書いてもらいました・・でも二人ずつ描いてもらっての合成だけど(バラすなよ) 新しい子「岩子さん」とどうなっていくんでしょうね(未定) 次回も火曜日更新、8月4日に投稿予定です。




