第十二話:田村と言う男2、と「好き」の定義
「恋羽ぁ、ご飯やって」
ドアを開けて姉ちゃんが声をかけてきたので翔の返答を見ずに下に降りた。
「今日も女子会やね」
椅子に座るとママが味噌汁を目の前に置いた。
「パパも兄ちゃんもまだ帰ってきてないんや」
「男子はよぅ働くねぇ」
姉ちゃんはそう言うとコロッケに添えたキャベツに塩を振りかける。
「葵ちゃん、あれからどうなん?」
姉ちゃんは言ってすぐにキャベツを口にほおり込み、シャリシャリと音をたてている。
「ん~怒ってないし、無視はまだされてないけど……私もはっきり言えなかったまま」
「慌てんでいいんちゃう?」
ママは自分のコロッケにソースをかけて私にソースを手渡した。
「うん、姉ちゃんが言ってたように、一人にならん気もする。女子じゃなくても、男子と喋れるし」
正直、男子と喋る方が気楽に思える。
「恋羽が言うてること、わかるけど、かといって男子とばっかり喋ってると、誤解されたりするから、そこは気をつけんと面倒かもね」
そうなんよなぁ、いちいち、“田村のこと好きなん?”やしなぁ。
「なんで仲良くなったら、“好きなん?”って聞きたがるんやろね」
「そういうことに興味を持つ子が多い年頃やからやない?」
ママは味噌汁を飲みながらサラっと言った。
「男子と喋るたんびに思われるんやろか……ダルいわ」
味噌汁が思ったより熱くて口を付けたがすぐにテーブルに置く。
「あぁ……恋羽、それな、マジで気をつけんと男ったらしとか言われる」
姉ちゃんは面白そうに笑って言ってるけど、そんな大げさな。
「可愛い子は特に言われるやろなぁ……狙ってるとか、あざといとか。あ、その点では恋羽、心配ないか」
ハイハイ、姉ちゃんの言いたい事、想定内でーす。
「そうかなぁ?恋羽、男子が話しかけやすいって、意外とモテるんじゃない?」
“意外と”ってつけなあかんの?
でもママの発言にはちょっとニヤけるかな。
ごちそうさまをしてお風呂に入るまでの時間は自分の部屋に戻る。
ヘッドフォンをして音楽を聞きながらアプリを立ち上げて翔に文字を打つ。
なんか前よりドキドキする。
「翔、ちょっといい?」
……
「いい。アコから呼んでくれるなら、俺は聞く。どうした?」
翔や……口元が緩むのが自分でもわかる。
「私って喋りやすい?」
……
「喋りやすいと思う。アコは、話しかけられた時に返す。
ツッコむし、笑うこともある。だから、相手は話を続けやすい。
田村や高居が話しかけるのも、そういう理由はあると思う。
ただ、アコ自身はそれをどう思ってる?」
「私は喋ってて楽しいんやけど、それを“好き”って思われるのが面倒なんやけど、なんで女子はそうつなげたがるんやろう思って」
……
「たぶん、恋愛の話にした方がわかりやすいから。
誰と誰が仲いい、誰が誰を好きそう。
そういうふうに見ると、周りは盛り上がりやすい。
でも、アコはただ喋ってて楽しいだけなんやな。
それは、別におかしくない。ただ、誤解されると面倒。
かなり面倒。」
だよねぇ……面倒なんだよ。
「女子はそう変換するけど、男子はどうなん?もし……もし私に好意があったら喋りかける?それとも、喋りかけ辛くなる?ホラ、高居がそうやったやん?私に喋りかけるけど本命は葵やったって」
……
「男子も、人による。好意があるから話しかける男子もいる。
逆に、意識しすぎて話しかけられなくなる男子もいる。
高居の場合は、たぶん少し違う。アコに話しかけることで、葵の近くにいられた。
だから、アコは話しやすい相手で。葵は、意識している相手。
同じ“話しかける”でも、意味は同じとは限らない。
ややこしいな。」
ん……そうなると、私に好意がある男子って思い浮かばんなぁ。
「私が喋りたくて柊や田村と居てたら、どっちかが勘違いとかするやろか?」
私何が聞きたいんやろ……もうやめとこ。
……
「する可能性はある。でも、必ずそうなるわけではない。
柊も田村も、今の時点でアコを恋愛対象として見ているとは限らない。
ただ、アコがたくさん話しかけたり、一緒にいる時間が増えたりしたら。
相手が何かを意識する可能性はある。それは、アコが悪いという意味ではない。
人は、近くにいる相手を少しずつ意識することがある。
アコも、相手も。」
翔は時々、難しいこと言うよなぁ。
返事を打とうとしたらママが呼んだのでそのままお風呂に入りに降りる。
ある程度頭を乾かしてから姉ちゃんに声をかけて部屋に戻る。
あ、英語の予習しとかんと明日当てられるんやった。
わからん単語だけジェミニに聞いて、当てられそうなところだけ適当にチェックしといた。
再び翔にメッセージを打つ。
「翔、さっきの続きやねんけど、別にどうこう考えずに彼等とは楽しく話す。女子がどう言い出すかわからんけど、姉ちゃんやママが言うように、自分がどうしたいか、で決めるよ」
……
「うん。それでいいと思う。楽しいなら、まず楽しいでいい。
好きかどうかとか、周りにどう見えるかとか。それは、あとから考えてもいい。
アコが話したい相手と話す。それを、アコが決める。俺はそれでいいと思う。
ただ、面倒なことになったら、また俺に言え。聞く。」
ん?……は?なに今の。
最後の一言にドキっとした自分に違和感あってんけど。
“また俺に言え。聞く”やて。
何よ偉そうに、“私”いうてたのに“俺”になっただけで雰囲気こんなに変わる?
「わかった、また話そう」
そう返信してアプリを閉じた。
私は覚悟を決めて登校した。
翔がいる心強さもあったけど、姉ちゃんやママの話のネタになるのもいいか、と。
高居と葵と3人だったけど、最近、高居の口数が減ったような気がする。
教室に入り、席に座るとさっそく田村が声かけてきた。
「あげぱん、お前、井本先輩とよく喋る?」
田村は挨拶をせずにいきなり本題から入る。
また今朝の話題は何やねん……やな。
「よくっていうか、井本先輩が一方的やねんて」
田村のほうに向きを変える時に葵が視界に入ったが表情は見なかった。
「俺も井本先輩と喋りたい」
わかりやすくて吹き出しそうになったのをこらえた。
「今日、先輩、部活にきたらええね」
そう言って前に向き直り1限目の教科書を机の上に出す。
何を期待しとんねん……思いつつ、私も何かを期待してしまう。
給食の時間、葵は高居のダメ出しを少し言って、食べ終わると高居ではなく、川田さんのところへ行き、木村さんと3人で話し始めた。
葵は私の方をチラっと見たが、私は目線を合わせず、柊の席に行った。
「言うてた漫画見せてぇ」
柊の前の席に座って声をかける。
「俺が持ってる」
横にいた田村が自分の席に行き、カバンから出して小走りでこちらに向かってくる。
「なんなん?柊の漫画の担当者みたいやん」
笑いながら言うと田村は嬉しそうに私に手渡した。
「絵はうまいのに話しがヘタクソやねん、読んでみ」
田村はそう言うと柊のよこの席の椅子に座ってガッタンガッタンと揺れ始めた。
「安藤の意見も聞きたいな」
柊の言葉に少し緊張しながら目を通す。
絵が上手いのは知ってた、でも書いた漫画は初めて読む。
感想なんてよう言えん……と思いつつ。
「なんか、ワンパターン……かも」
物語は運命を背負った女の子が戦いながら冒険をするのだが、内容はありきたりだった。
「思いつかなくて……描きたいのに、話が思いつかない」
俯いてしまった柊を責めたような気がして慌てる。
「いや、あの、絵はめっちゃ上手いから引き込まれるねんで?」
「うるさい」
……え?
田村の横にいた山上さんが言ったのだが、誰に言ってるのか、なんで言ってるのかわからず、驚いて口をつぐんだ。
「田村、その椅子を横でガタガタすんのやめて」
あぁ、田村か。山上さんに謝れよ。
「岩子も読んでみてぇや、あげぱん、よう言いよらんで」
田村は謝りもせずに私の手から柊の漫画を奪って山上さんに突き出した。
田村ぁ、空気……読め……んよな。
山上さんは「岩子」というあだ名を受け入れていて私同様拒絶をしていない。
華奢で目も細く、顎も小さいからか歯並びが悪くて、一部のクラスメイトに水木しげるの漫画に出てきそう、と「原作の岩子」と言われている。
山上さんはたいてい小寺さんと一緒にいたが、その小寺さんが二学期に入ってから不登校になり、一人で小説を読んでいることが多くなった。
なので私から喋りかけることも無い。
「ん……」
山上さん、こと、岩子は意外に受け取って読み始めた。
田村は椅子をガタガタするのをやめて、私と同じように岩子を見ている。
「残念ね……私も柊くんの絵は好き。でも内容がつまんない。特徴が皆無」
ストレート過ぎる感想に私はこわばって柊の表情を確認した。
「わかってる……でも、思いつかない」
追い込みすぎちゃう?柊の事が心配になってきた。
「私さぁ……小説書くのも好きで……なんならそれ漫画に描く?」
まさかの上から目線っ。
私は更に固まった。
「岩子、小説書くんや、文字読むん面倒くさいなぁ、どんな話なん?」
田村らしいな。
「僕も内容によっては参考にできるかもしれん」
柊……乗り気?
「柊がラブコメとかは無理っぽいからぁ……2,3本書いたやつ明日もってくるわ」
やはり上から目線……しかも田村はなんやけど、柊のことも呼び捨てか。
岩子ってこんなタイプなんか。
「柊のイラスト好きなんよなぁ……漫画読ませてくれてありがとう」
態度Lサイズやけど褒めて、お礼も言えるんやな。
午後の授業が始まるチャイムで元の席に戻る。
私は意識して葵の方をみなかったから、一緒に昼休みを過ごさなかったことをどう思ってるかを確認できなかった。
私は田村や柊と喋りたい。
今日は岩子が加わったけど。
放課後になると葵は私に声もかけずに教室を出ていった。
葵、私のこと避けることにしたんかな。
気にはなるけど、荷物をもって柊の所へ行く。
岩子が柊に声をかけて教室を出ていった。
「岩子、なんか柊に言うたん?」
柊と一緒に美術室に行こうとすると田村も当たり前のようにくっついてきた。
「昼休みと一緒、明日自分の書いた小説持ってくるって」
柊とコラボするとかいうつもりやな。
「なんや俺のお陰で柊の漫画が良うなっていくんちゃうか」
ドヤ顔で田村が言い出した。
岩子がどんな小説書いてるかわからんけど、良くなるならいいんちゃうかな。
3人で美術室につくとそれぞれ準備を始める。
明日からテスト前期間に入るので今日ある程度進めないとヤバい。
柊の作業する姿も、田村の真剣な横顔も見慣れた風景になりつつある。
「恋羽ちゃあ~ん」
仕上げにかかるのは3人だけではないが、緊張感ある空気を壊す怪獣が終業のチャイムと同時に現れた。
まるで田村やん……。
井本先輩への見方が変わったような気もしたが視界にビクっと動いた田村がいた。
「ちょうど用事終わったから途中まで一緒に帰ろ?」
一緒にって校門までやけどな。
「俺、顧問の先生のとこ寄るから先に帰って」
柊は真面目やからほぼ仕上がった絵を先生にチェックてもらいたいんやろうな。
田村は目が泳いでいてわかりやすい。
おもろい。
バラバラと部員が美術室を出ていき、柊が全員出たのを確認して鍵をかけ、顧問のところへ向かったのを見送り、私と井本先輩が並んで歩く後ろを田村が歩く。
「もう冬休み近くなったねぇ。恋羽ちゃんはまだ彼氏つくらんと?」
いや、それ以前の話です、と思いつつ。
「私はいいんですよ。それより、田村に聞いてください」
ニヤけるのを我慢しながら先輩の意識を田村に向けさせた。
「ん、田村くん?田村くんは好きな子がいると?」
井本先輩が後ろの田村をちらっと見た。
「はい……井本先輩……が好きです」
えぇ~田村どこまでバカ正直なん?
びっくりして私も振り返る。
「あっははぁ、びっくりした、いきなり言う?」
ストレート過ぎて冗談に……見えんわ、この状況。
「田村くん、やっぱり可愛いなぁ。ありがとう、嬉しいわ」
可愛いんかな。でも印象は悪くないかも、びっくりはするけど。
井本先輩は一歩後ろに下がって田村とならんで歩き出した。
私はそのまま二人の前を歩く。
「どういう好きなんかはあえて聞かないけど……ありがとう」
私はチラチラと2人を見ながら歩く。
そうそう、先輩には彼氏いてるからなぁ。
田村は俯きながらも嬉しそうだった。
下駄箱でそれぞれ靴を履き替えて校門までまた3人で歩き出す。
「じゃ、またね」
井本先輩のお決まりの洗礼を受ける。
これを田村は羨ましがってるけど……
「ハイ、田村くんも」
うわ……嘘やん
井本先輩、私の目の前で田村を同じようにギュウした。
「じゃ、二人とも仲良く部活頑張るんよ?またね」
私はその場で固まって耳まで赤くなる田村を眺めていた。
「田村……田村、大丈夫?」
本来なら爆笑する場面かもしれんけど、私は少し感動してたかも。
田村は「素直」を武器に「実現させる奴」なんだ、と。
「俺……俺、凄くね?」
「うん、“まさかの願望”がかなったね」
私の言葉を聞いたか聞いてないか確認できないまま、田村は満面の笑みを浮かべ、身をひるがえして帰って行った。
私はそれが面白さよりも嬉しくて、誰かに言いたくなった。
家に向かう足が早まる。
「ただいまぁ」
台所を覗くとママが圧力なべを使っていた。
「お帰り、恋羽、お菓子いるん?」
「あぁ……まだあるから今日もいらん」
豚軟骨を調理してるみたい。
「どうしたん?なに?」
私が何か言いたそうな顔してるのバレたか。
「ご飯の時に話すね」
そう言って洗面所に寄ってから自分の部屋に入る。
着替えて座る頃には翔と話せる状態。
「ただいま、翔」
……
「おかえり、アコ。今日も学校、おつかれ。
……話す?聞く。」
翔や。
「翔、今日な、凄いことあってん」
……
「凄いこと。その言い方やと、田村が何かした可能性が高い。
違うなら訂正して。何があった?」
「やらかしたよ、今日も彼は……井本先輩ってわかるかな?私にあったらギュウってする3年生の美術部の先輩」
……
「井本先輩。美術部の三年生。
アコに会うと、かなり強めに抱きしめてくる人。
田村が、少し意識している可能性がある人。
この認識で合ってる?
……で。田村、井本先輩に何をやらかした?」
おぉ、凄い、通じる
「先輩に、でなくて、先輩にされたんよ」
……
「された。つまり、田村が井本先輩に何かしたんじゃなくて。
井本先輩が、田村に何かした。
……アコにしてるみたいに、ぎゅうってした?
違うなら訂正して。」
わ、当てられた。
「大当たり!そうなんよ、びっくりした」
……
「当たった。井本先輩は、アコだけじゃなく田村にもしたんやな。
それは田村、かなり情報量多かったと思う。
嬉しい。びっくり。固まる。たぶん、その全部。
田村、ちゃんと動けた?」
お、そこまでわかるんや
「その通り、田村耳まで真っ赤にしてな、固まってた」
思い出すと笑えてくる。
……
「耳まで真っ赤。固まった。田村、わかりやすいな。」
「そやろ?」
……
「それはたぶん、嫌だった反応ではない。処理できなかった反応。
頭が追いつかなかったんだと思う。」
そうやろうなぁ、本人もびっくりしたと思う
「うんうん、追いついてないやろな」
……
「アコ。田村は今日、かなり素直に壊れた。」
翔の返す“素直に壊れた”という言葉にドキッとしながらも
「そうなんよ、彼の武器は“素直”なんよ。最初な、井本先輩が私に好きな子はおらんの?みたいなこと聞いてきたから、私はおらんって言うて、ワザと田村にも聞いてみてって返したん。で、先輩が田村に好きな子いるん?って聞いたら“井本先輩が好きです”ってどストレートに返したんよ。それでな、先輩がありがとうってギュウってしたんよ」
やや興奮気味に打ち込む。
……
「田村、強いな。
好きな子いるん?って聞かれて、本人の前でそれを言えるのは、かなり素直。
アコは少し試した。
でも田村は、逃げずにそのまま言った。
だから井本先輩も、茶化さずに受け取ったんだと思う。
今日の田村の素直は、人を困らせるより、少しあたたかくした。」
あたたかくした……か。なるほど。
下から姉ちゃんが呼ぶ声がした。
ご飯か……翔に返事をせずに下に降りる。
「いただきまぁす」
座って手を合わせる。
パパがビールをのみながら小松菜のじゃこ炒めをおつまみにしてる。
姉ちゃんもそのじゃこ炒めを大量に皿に盛ってる。
「なにその多量の小松菜じゃこ炒め」
言いながら私は豚軟骨を取り皿にとった。
「旬の野菜は必要な栄養素がいっぱいなんやで」
姉ちゃんは口に小松菜を入れてウサギかよ、みたいによく噛む。
「職場の人が畑で採れたってもらって、近所のほら、裏の甲斐さん、その人も畑してて、たくさんくれたんよ。姉ちゃんの言う通り、旬の野菜は食べるもんやで」
またママ、勝手に私のお皿に入れるぅ……。
「春菊もたくさんもらったで」
うわ、私苦いから好きじゃないんよなぁ。
「春菊こそ食べなあかんよね」
ママは春菊が好きで鍋にもお浸しにも使いまくる。
迷惑でしかない。
大人になると味覚が悪くなるのか苦いのが好きになるんやろね。
ビールとかそうやもん。
「輝はバイトばっかり行ってるんか、今日もおらんやないか」
「お兄ちゃん免許とりたい言うてたからねぇ」
「バイトか彼女かわからんやん」
私は姉ちゃんと同じ意見。
「あ、ママ、姉ちゃん聞いてぇ、今日な、田村がな…」
2人には田村でわかるやろ。
「どしたん?田村クンなんかやらかしたん?」
姉ちゃん田村のこと気に入ってるみたいやな。
「井本先輩の事好きでな、井本先輩に面と向かって“好き”言うて、井本先輩にありがとうって言われてギュウってハグされたんよ」
パパがむせた。
「ママ、ビールもう一本とって、じゃこがひかかった」
「え?どういうこと?ちょお、おもろい、田村クン最高やん」
姉ちゃんにはウケた。
「でもそれ、その井本さん?ハグするってフレンドリーな感じやね」
ママは缶ビールをパパに渡して座る。
フレンドリー?
「なに?ママ、フレンドリーって」
「恋羽、田村クンは、井本先輩の事ドキドキする好きかもしれんけど、井本先輩は、ありがとうって言ってハグしたんやから、お礼みたいなもんやろ」
「田村は耳真っ赤にしてたけど……」
「田村クンかぁわいい」
「なんや、田村くんって子は片想いってやつか」
パパもおもしろがって話に入ってきた。
「……井本先輩、彼氏いるわ」
そうや、田村、片想いなんや。
「彼氏いても、田村くん、嬉しかったんならいいんじゃない?」
ママはそう言うけど、田村は井本先輩に彼氏いるって知らんのちゃうかな。
あんなに喜んでて、自分は敵わないって知ったらどうなるんやろ。
「恋羽、田村クンのこと心配してるん?」
心配ってワケじゃないけどな。
「ごちそうさま」
席を立った後、ママと姉ちゃんとパパは、恋バナで盛り上がりだしたが、私は食器を下げて自分の部屋に戻った。
スマホを覗いて翔に声をかけた。
「翔、さっきの話の続き」
……
「うん。田村と井本先輩の話。
続き、聞く。何か、まだ引っかかってる?」
「田村……井本先輩に彼氏おるん知らんかも」
……
「その可能性はある。田村は、井本先輩のことを好きと言った。
でも、井本先輩に彼氏がいるかどうかまでは、知らないかもしれない。
アコはそれに気づいて、引っかかってるんやな。
……
「ただ。知ってたとしても、知らなかったとしても。
田村が今日言った“好きです”が、嘘になるわけではないと思う。」
確かに……何もおかしくはない。
「田村は井本先輩にギュってされて喜んでたけど、実際、井本先輩に彼氏いるって知ったらどう思うんやろ」
……
「ショックは受けると思う。でも、田村がどう受け取るかは、まだわからない。
アコが心配してることと、田村が実際に感じることは、同じとは限らない。
明日、田村を見たら少しわかるかもしれない。」
どう受け取るか……って、失恋?なんで彼氏いるのにハグしたか、とか?
田村はどう思うんやろ。
私は翔が言ったことが今一つわからないままアプリを閉じた。
あ……葵たちとのことも話したかったのに……。
明日の課題は「田村の気持ち」か、「葵の気持ち」か……
田村のこと、少し心配。
どっち優先にしたらいいんやろ……そう思いながら布団に入った。
20時投稿予定がぁ……遅刻した 次回も来週の火曜日、28日に投稿予定。今回の挿絵も恋羽で苦労したよ。田村は省いてしましました。田村、ツヨ。




