第35話:再集結、あるいは絆の
ーー昼食も終わった、午後のこと。
一部では休暇中だった護衛たちを含め、私は招集の合図を出した。
集まるのは定番の食卓。
久方ぶりに揃う顔触れを見つめ、私は緊張の面持ちを浮かべていた。
「お嬢、今回の招集の用件は一体なんだ?」
「えっと……その……」
(やはり、全員へ伝えるのはちょっと緊張しますわね……)
私は椅子に座ったまま、ちらりと視線を上げ、真面目な顔つきをしたカイルを見た。
「……まさか、王城で何かトラブルが……?それとも、あの古代魔導人形に何か不具合でも……」
その横から顔を出したクロードが、物憂げな顔つきで静かに問う。
「ち、違いますわ!ま、まあトラブルと言えば、トラブルなのですけれど……」
私の手元にある、紅茶の入ったカップを持つ指先に力が入った。
「……おや、お嬢様。随分と顔が悪……いえ、顔色が悪いようですが、何かありましたか?」
心配そうに見つめる瞳。優しげな声色……だが。
「今とんでもない言い間違えしようとしてませんでしたこと!?」
レオンの言葉で怒りが沸騰した。
「……こほん!えーっと、皆様に、実はその……リトニア調査団としての報告とあると言いますか……」
言い淀み要領を得ない私の言葉に、護衛たちは不思議そうな顔付きで私を伺う。
そんな中で一人だけ、明らかに空気感の違う者がいた。そう、フェリクスだった。
「おい、フェリクス、どうしたんだ?腹でも痛いのか?」
「……そうかもね」
カイルとフェリクスが言葉を交わしていた。
だが、フェリクスの瞳は『今度は何をやからしたんだ』と言いたげな、呆れた色が浮かんでいた。
「……ちゃんと話しますわ。ですから、どうか驚かずに、そして出来たら呆れずに聞いて欲しいのですけれど……」
言い淀む私の口調を察してか、各々がどこか不安げに、または不審な顔つきで私を見やる。
「……嫌な予感しかしないが、まずは話を聞いてからだ」
カイルが腕を組み、一言放った。言葉はぶっきらぼうながらも、その目には僅かな心配の色が乗せられていた。
そして視線をしっかりと合わせ、一度頷き返される。
(そう、ですわね。私も、もっとちゃんと向き合うべきですわ!)
不安がる私の背を押すような感覚に静かに安堵する。
こうして私は、促されるようにして秘匿事項以外を共有した。
◇
「という訳で……正式にあの王子から、王命として『リトニア調査団』の継続を下されましたわ……」
予想よりも悪い結果となった訳ではない。だが、それでも気乗りしないのは、確かにあるだろう。
元々私とて、工房に籠って開発を日夜進めるのが楽しい技術者だ。各々好きなように働くのがいいと思うのだが。
「王家の無茶振りで私の旅はまだ終わらないし、開発予算もお母様に握られてしまったわ……」
「ああ、お嬢様……何とお労しい……やはりあの時、王城を爆破しておけば……」
憂い顔のカトレアが、お代わりの紅茶を注ぎながら静かに呟く。
「カトレア!王城の爆破計画はお止めなさいな!!前にもこのやり取りしましたわよね?!」
「どうぞご心配なく。例の出版物のように、夜闇の中でも対人戦であれば私とて暗躍出来ますので」
「クロード!貴方は執事でしょう!それに、あれは創作物ではなかったの!?」
物騒な専属従者の兄妹達はやはり放置出来ない。
「先日の扉が破壊出来なかったのもありますが、ゴーレム戦であのように剣が壊れてしまいましたからね。次こそは扉ごと無駄なく討伐してみせましょう」
物騒な発言をさらに過激化させる方向性に向かうレオンの発言に、私は思いきり顔を向けた。
「貴方はどうして物理的災害の方向へ行こうとしますの!?」
「ああ、それと武器の新調助かりました。お陰でこうして現場に即座に復帰出来ます」
私の鋭い言葉を
「え、ええ。構いませんわよ。……予算も通った事ですし」
私にも開発費の予算を回して欲しい。
「やる気はあんまり出ないけど、まあ、付き合いますか……」
「フェリクス……!貴方、なんだかんだ言いながらやっぱり良いお方ーー」
「放置して屋敷ごと俺の職場無くなるのも困るし」
「そっちの心配ですの!?」
天邪鬼なのだろうか。だが常識人ではあるのだ。
「落ち着け、お嬢。規律を乱さないように俺も見張っておいてやるから……」
「カイル……。貴方、今回の調査で胃がとうとう悲鳴を上げたって聞きましたわよ……?」
「……気にするな」
最早この調査団の中でも随一の苦労人だろう、後で胃薬の手配を追加でしようと思う。
「話がまとまったようで何よりです。僕も引き続き、お嬢様つきの従僕として付き添います」
「ノア、貴方も本当にありがとう。これからも助手として頼りにしていますわ」
傍に立つノアの無機質な、しかし凪いだ声色に安心感を覚え、頷く。
そして、私は一人一人の顔を視界に映す。
自信に満ちるレオンの笑み、胃を抑えて苦悩するカイルに、呆れたような顔をするフェリクス。
何事かを告げるクロードと、経典にペンを滑らすカトレアの微笑みーー。
(彼らは私の護衛……けれど、彼らは私を守るだけのただの護衛ではなく、私が守るべき大切な人たちですわ)
胸の内にそっと広がる穏やかな温もり。
隣のノアは何も言わずにただ隣に佇み、私を見つめる。
「さあ、支度を始めますわよ!!大切なものはくれぐれも忘れないように、しっかりと準備してくださいまし!!」
各自旅へと向け準備を進める為に、解散の号令を告げた。
【活動報告 / 後書き用】
明日完結です!
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※本作は作者の妄想・パッション・ロマンで構築されています。
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