↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不憫な悪役令嬢は、ドリルで常識を穿つ!~国家一級魔導具師のお仕事トラブルコメディ~  作者: 雪見もち子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/70

第27話:反省の過負荷②

――宿の一室。


フェリクスによる正論で私たちは、一時解散した後のこと。

私は変わらず安静を最優先に、ただじっとこの苦悶を耐え忍んでいた。


古代遺跡での代償。


それは、工房に引きこもり気味だった私の肉体へと大きな損害を与えていたのだった。



「……いッ!?たたっ!!ああー……無理、本当に無理ですわ……っ!!関節という関節に、痛みが走っていますわ……!!」


声を上げる事でなんとか意識を逸らし、痛みを誤魔化す。


私の独り言が煩かったのか、隣室からガタリ、と大きな物音が聞こえた。


その直後――。


――バーン!


勢いよく扉が開いた。


隣室にいたカトレアとクロードだった。


「お嬢様、失礼いたします。……さあ、こちらに。全身余すところなく、この特製魔導湿布で包容パッキングさせていただきますわ」



「あ、あの、カトレア? そこまでお世話は別にいらな……」


「「いけませんわ(いけません)!!!」」


二人の怒号に近い拒絶の声。


私は「ヒィッ」と情けなくも短い悲鳴を上げる。


だが、そんな私の反応などお構いなしに2人の侍従が挟み込むように囲う。


「フェリクスに言われ、我々は深く反省いたしました。お嬢様の情熱を優先させるあまり、危険な戦場に立たせてしまった不徳。……今後は指一本動かすことも許しません」


至極真面目な顔つきでクロードが、濡れたタオルを絞りながらキッパリと言い切った。


「ああ、いっそこのまま、お嬢様をどこか安全な地下室にでも閉じ込めてしまえば、二度とこんな危険には及ばない。そう、それが真の護衛……執事としての完璧な立ち回り」


だが次第と光を失いかけた仄暗い目を向け、ぶつぶつと呟くきだした。


「クロード! 怖い! 顔が怖いですわよ!!それに思想が強すぎですわ!!その極端な思考は今すぐおやめなさい!!」


私は身震いしながらも必死に静止の声を上げた。すると、今度は足元へ不意に重さが増した。


「お嬢様、動いてはいけません!ああ、可哀想なお嬢様。私が悪かったのです。もっと強くお止めしていれば、こんな重症を負うことなんて無かったのです……!「


カトレアが私の膝に顔を埋め嘆き出す。


「ただの筋肉痛と疲労ですわ!それと、貴方たちの反応が過剰過ぎますのよ!」


侍従の暴走によって、私の叫び声が上がる。


その声が部屋を突き抜けたのだろうか、天の助けと言わんばかりのタイミングで、扉が勢い良く開いた。


「おい。いい加減にしとけ、お前ら!お嬢がビビりすぎて、筋肉痛が悪化するだろうが!」


扉を蹴破らんばかりの勢いで入ってきたのは、カイルだった。


彼は呆れ顔で二人を引き離すと、サイドテーブルへとトレイを置く。ほくほくと暖かな湯気の立つ皿、どこか懐かしさを感じる甘みの立つ素朴な匂い。


「ほら、これ食べろ。フェリクスが『余り物で作った』って言ってた粥だ。……ちゃんと食べて、早く治せよ」


侍従二人の背を押すカイルは去り際に、一瞬だけ足を止め、背中を向けたまま呟いた。


「……次は、ちゃんと守ってやるから」


――パタン。


賑やかだった部屋に戻る静寂。


優しい出汁の香りが室内に漂い始める。


「…………」


一人になった私はスプーンを手にする。


「私、こんなに皆に心配をかけていたのね……」


友達のいない私でも、流石に理解できる。


レオンの強引なあの目覚ましの意図。

カトレアとクロードの重くも彼らなりの誠意。

カイルやフェリクスの現実を見せる言葉。


そして、姿は見えなくとも私の心を静かに支えてくれるノア。


これは家族と同じ――。


「――いいえ。それとはまた違いますわね」


友情でもなく、ただの護衛と従者なのではなく。

新たな絆の形であると、そう感じた。


(……今回は、ちゃんと大人しく過ごして早く回復しますわ!)


そして元気な姿を見せる。これがきっと彼らを安心させる為に、私が出来る事。


「さ、気を取り直してまずは食事から……」


温かな湯気が立ち込める皿の乗ったトレイごと膝の上に載せる。そして、スプーンでそっと掬う。


「あいたた、んぐぅっ!それでも、やっぱりこの痛みは無理ですわ!!!」


肘を曲げた途端に襲いかかる筋肉痛に、私は嘆きの声を上げ静かに涙した。



―――――――――


ノアの観測記録:(Log-027B)


【観測】 古代遺跡調査後の重度筋肉痛に伴う、護衛たちの過剰な反応を記録。


【分析】 侍従兄妹の過剰反応を計測。しかし、カイルにより後に反省した模様。その後、お嬢様の精神安定値が一時的に上昇。


【結論】 お嬢は「安静」を誓約。しかし、肉体的な「不具合」の前では、根性論では乗り越えられなかった様子。


……お嬢様、その叫び声は隣の隣の部屋まで貫通しています。観測を継続。


【次回予告】

『第27話:再起の儀式③』

お嬢「ドリルで穿ってハンマーで叩き直しますわ!!」


【活動報告 / 後書き用】

定期更新:水・金 18時


【※調査団のパトロンになりませんか?】

「面白い」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

ぜひブックマークや【星】での評価をお願いしますわ!


作者の魔力は、皆様の評価でチャージされます。

どうかエヴリンたちの物語を応援してください!


ご意見・ご感想も、ドリルを止めてお待ちしております。


※本作は作者の妄想・パッション・ロマンで構築されています。

多少のご都合主義は、技術屋の愛嬌としてご理解いただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。