↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不憫な悪役令嬢は、ドリルで常識を穿つ!~国家一級魔導具師のお仕事トラブルコメディ~  作者: 雪見もち子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/70

【幼少期編】第3話:十四歳、擬態の淑女と平和の翼

今では、誰もが扱える生活に役立つ『魔道具』と、専門職が扱う高度な道具『魔導具』が、この国の暮らしを支えている。


その両方を開発できる技術者には、『国家一級魔導具師』の資格が必要だった。


だから、私は日々、勉強を積み重ねていた。



――リトニア家の令嬢は、少しおかしい。


十四歳の頃の私は、そんな噂話を耳にした。けれど、私は紅茶のカップを握りしめながら聞き流していた。


当時は母の教え通り「淑女」として振る舞おうと必死だった。人と話す時は失礼がないか、怖がられないか。


令嬢としての仮面を被るようにと、絶えずシミュレーションを繰り返していた。


「エヴリン様。どうやら庭園の噴水の調子が悪いようでして……」


馴染みのない侍女の声に静かに頷き、私は庭園へ向かう。


(淑女らしく、穏やかに)


歩き方や姿勢。そして表情にも強く意識をする。


(お母様が仰っていた通りにすれば、少なくとも悪印象にはならない筈ですわ)


それでも、私の悪い癖……強張る表情と、緊張を誤魔化すような指先の落ち着きのなさは変わらずにいた。



庭園に集まるのは、顔馴染みのない使用人たち。私はその輪に入るように歩を進め、彼らの傍に辿り着いた。


そこにあったのは、勢い良く飛び出る噴水の異常な水圧。それを見つめる彼らは、私にとっては好都合であった。


声をかける前に、私は深く息を吸う。


「――あの、少しよろしいかしら」


驚かさないようにと静かに声をかけた、その瞬間。全員の視線が私に集まった。


緊張が走り、空気が強張る。それが分かってしまうから、余計に息苦しい……けれど。


――カチッ、カチ、カチ……


(……ああ、やっぱりズレてるわ)


不規則に響く音が、私の耳に入ると息詰まりも消えて行った。


そして、私の思考はその異音を確認すると、途端に切り替わる。


――構造を解析するように検分をし、脳裏に数式を並べ立てる。そして、修正の手順を再確認し、淡々と作業を行い始めた。


「ねえ…ちょっと、お嬢様のドレス……」


ドレスの裾についた泥跳ね。水浸しになるグローブ。けれど――。


「……聞いた通り、ちょっと変わり者だよな」


周囲の視線も、淑女としての品格も、最早どうでも良くなっていた。


(バルブの締め付けが甘いですわ。一体誰がこんな杜撰な管理を……ああ、ここをこうして、この回路を――!)


気づけば噴水は元通りに……いや、以前より高く美しく、予想よりも水を勢いよく噴き上げていた。


「……え」


「こんなに、水圧高かったか……?」


呆然とする使用人たち。


それを見て、私ははたと我に返る――が、時既に遅し。


(――ああ、またやり過ぎてしまいましたわ……)


淑女としての「擬態かめん」は、不具合という「現実」の前ではあまりにも脆かった。


結局、私は諦念と自覚に再び胸を詰まらせることとなる。


「エヴリンお嬢様……あの……」


「……調整、し直しますわ」


「お願いします……」


その後、改めて淑女としての振る舞いを叩き込まれた。母親からの愛情は感じる、けれど、私の至らなさが身に染みてほんの少し苦い思い出となった。



――そして同年の冬。

私は十四歳という若さで、『国家一級魔導具師』となった。


必要だったのは知識だけではない。開発した魔導具そのものが試験対象だった。


その評価の後押しとなったのは、私の努力の結晶――制式名称「トッピーちゃん8号式」、通称『ピーちゃん8号』だった。


彼女は手紙だけでなく、人と人を繋ぐ配達員へと進化した。


事故率ゼロに近い精度を誇る彼女は、今や世界中を飛び回り、人々の思いを運んでいる。


そうして私の技術は、平和を象徴とするものとして認められた。


これが私の誇りであり、ささやかな祈りを込めた『魔道伝書鳩』であった。


しかし、この『魔道具』の役目はそれだけではなかった。


――リトニア家は、軍事開発には決して加担してはならない。


私たちは「世界を変えてしまう異質な技術」を悪意に取り込ませないよう、王家と「制約」を交わしている。


これは私たち一家の常識であり、信念であり、矜持でもあった。


技術を愛する者が世界を壊さないための決定的な一線ライン 。私はこの技術力で、国に認められたのだ。



――そうして私は、十六歳になった。


世間からは『悪役令嬢』と呼ばれながらも、『国家一級魔導具師』として、今日も工具を手に取るのですわ。

【活動報告 / 後書き用】

定期更新:水・金 18時


【※調査団のパトロンになりませんか?】

「面白い」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

ぜひブックマークや【星】での評価をお願いしますわ!


作者のモチベーションという名の魔力は、皆様の評価でチャージされます。

どうかエヴリンたちの物語を応援してください!


ご意見・ご感想も、ドリルを止めてお待ちしております。


※本作は作者の妄想・パッション・ロマンで構築されています。

多少のご都合主義は、技術屋の愛嬌としてご理解いただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。