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不憫な悪役令嬢は、ドリルで常識を穿つ! 〜国家一級魔導具師が、古代遺跡を調査しますわ!〜  作者: 雪見もち子


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第19話:人間ハンマーの覚醒②

「それでお嬢、どうするんだ?この大きさじゃ、何人がかりでも開く気がしないんだが」



カイルが、愛銃を肩に担ぎ、呆れたように巨大な扉を見上げる。だが、私の瞳には、ノアが見せた覚悟に応える「矜持ほのお」が灯っていた。



「……いいえ。重さの問題ならばレオンがいけますわ」



レオンのコートには、魔導回路を組み込んだ魔力出力を一時的に増加させる機能がついている。それを使えば開く可能性は高い。



「それよりも問題は、あの扉の不具合……。魔力は充塡されても、魔道回路の詰まりで扉が開きませんわ」



しかし一番の問題は、魔力を循環させるその機能が一部停止していた。試しに押してみたが、やはり反応はなかった。



この詰まりが解消されない限り、扉は開く事がないだろう。



「ノアが魔力を削って補充してくれたんですもの。私も、全力で応えなければ相棒失格ですね」



私は意を決したように、ノアを運び戻ってきたレオンへと振り返る。そして、ぐっと胸を張り、巨躯のレオンへと真っ直ぐ視線を合わせるように顔を上げた。



「レオン。私の黒歴史……あの『究極最終物理解決型(ファイナル・アルティメット・フォーメーション)』を解放する時が来ましたわ」



ぴくり、レオンの眉が僅かに跳ねる。



「……、“私専用の特注品”である魔導ハンマーを、『巨大化スケールアップ』させますわよ!!!」



フンッ、と小さく鼻を鳴らす。両腕を組み、胸を張り、不敵に笑う。非力故の虚勢のポーズだ。



(そう、たかが一度の失敗に、心が折れてはならないわ)



ーー過信するのではなく、自信を持つだけ。



ノアが私を信じて作業する、それに応えて直す、作業手順はいつもと同じ。試行回数をただ増やし、成果を示す。それが出来なくて『魔導調律師チューナー』と名乗るは恥。



(そんなの、私の『矜持プライド』が聞いて呆れますわ!!)



「 ……フッ、ついにその『封印』を解かれますか……」



レオンの顔にそっと歓喜が浮かぶ。それは数年前、私が過去にやらかした悲劇のうちの一つ。過去の私の失敗作ガラクタと共に封印されし記憶。



ーーだが、今ここで私はその封印を解くと決めたのだ。



(恐れることは、何もありませんわ!!)



「クロード、例のベルトを……っ!!」



「畏まりました。お嬢様」



クロードが音もなく歩み寄り、私の腰へ重く太いベルトをガシャリと巻き付ける。



ーー『全身硬くナール』の試作品、第一号。それは、ガラクタの中でもある一点に特化した魔道具の一つ。



「これで、私の身体を硬化させますわ!!そして、私は『巨大ハンマー』の取っ手になりますわ!!」



ぽかんと口を開ける周り。そして、訝しげに、不安そうに私を見る護衛たち。



「百聞は一見に如かず――行きますわよ!!」



覚悟を決めるように、私はエプロンドレスのポケットから魔導軍手を取り出し嵌める。



工具箱の中から出された、『魔導ハンマー』を受け取り、両手で柄を握ったまま、頭上へと真っ直ぐ向けた。



「『メガ巨大化スケールアップモード』、展開ですわっ!!!」



――ブォォォォンッ!!



ありったけの魔力を流し込む。私の魔力を吸ったハンマーは、やがて巨大化し、私の腕に過大な負担をかける。



「そして、『全身硬くナール』の同時起動ですわ!!さあ!私の身体を硬直させなさい!!」



ベルトの魔回路がギリィと限界を示すような異音を告げる。グングンと吸われていく魔力。



「レオン! 私の身体を『取っグリップ』にして、扉に私達の力を見せつけてやりなさいっ!!」



淑女教育で鍛えた『直立不動の姿勢』を維持したまま、私の肉体は究極の一本の「剛性軸」へと変化した。



「……お嬢様……貴女の覚悟、このレオンがしかと承りました。私の全てを賭け、演算の果て。『この世の絶対的な真理ルール』を証明してみせましょう。……では、失礼して」」



瞳に闘志を浮かべ、普段は静かに研ぎ澄まされているレオンの気配がガラリと変化する。



――それは「守る側」の人間が、決して見せるべきではない類の圧。絶対的な『不動の覇気オーラ』。



「行きますよ、お嬢様。どうか、しっかりと意識をお持ち下さいね」



洞窟内の空気が一瞬にして凍りつき、背筋が震える。



彼にとっては「お遊び」の延長そのもの。だが、その出力は常人の想像を絶し、この場を支配していた。



(ヒィッ、煽り過ぎましたわ!! レオンの制御は、やっぱり信用出来ませんわ……っ!?)



萎縮し折れそうになる私の心ーーけれど!



(ここで引いたら、リトニアの名が泣きますわ! )



私はなけなしの意地を振り絞り、レオンの覇気オーラを受け止める。



(私の設計に対する、絶対的な『自負ロジック』は、本物っ!!!)



キツく吊り上がるルビーの瞳には、怯えを押し殺した「決意」の炎を宿す。レオンは優雅な所作で“私自身”を担ぎ上げ、その底知れぬ身体能力で一気に振り抜いた。



「穿ちなさい、私のドリル――ではなく! 巨大ハンマー!! 物理で叩けば直りますわぁぁああ――っ!!」



――ドッガァァァァァァァンッ!!!!



乙女心という恥を捨て、ノアの献身への感謝と、レオンへの幾許かの恐怖を胸に、技術者としての怒りのままに絶叫を上げる。



(グリップ部分の)私という「人間ハンマー」が、扉のど真ん中へと、巨大なハンマーヘッドごと迷いなく叩き込まれる。



――理論も手順も無視した、最短距離の調律『再構築リ・デザイン』。私の『理屈』で工程を弾いた。



直後、凄まじいほどの衝撃波がこの空間に拡散する。扉の奥底で眠っていた『魔回路の不具合バグ』。



強い衝撃を受け、強制的に「正解」へと弾き飛んだ。



「や、やりましたわ……」



レオンに振り抜かれた私の身は、ハンマーごと静かに地へと下ろされた。私の一言で空気は戻る。しかし、誰もすぐには言葉を発せなかった。



誰もが信じられない、その衝撃的な光景に脳が処理が出来なかったのだ。



「……あいつら、マジでバグり散らかしてるでしょ」



光を完全に消した目のフェリクスが、思わず呟く。この世の真理じごくを見たというように、盛大に引き攣った笑いを浮かべ、周りも賛同するように頷く。カイルは片手で目元を覆い「それ以上は見ないでおいてやれ……」と、天を仰いだ。



そして、私たちは、ついにその深淵の扉を開く――はずだった。




ーーーーーーー

観測記録(Log-019B)


【観測】 隔壁開放のためリトニア式最終解決策「人間ハンマー」を執行。


【分析】 お嬢様の「品格」を犠牲に、レオンの覇気と物理衝撃で回路を強制同期(破壊)した。


【結果】 扉は開いたが、カイル・フェリクスの精神に致命的なデバフを確認。観測終了。



物理的干渉による『事象の書き換え』に類似する挙動を検知。 ……当該事象、記録のみ行います。

【活動報告 / 後書き用】

定期更新日は水・金の18時です。



【※調査団のパトロンになりませんか?】

「面白い」「続きが気になる!」と思ってくださった皆様、

ぜひブックマークや【星】での評価をお願いしますわ!

作者のモチベーションという名の魔力は、皆様の評価でチャージされます。

どうかエヴリンたちの物語を応援してください!

ご意見・ご感想も、ドリルを止めてお待ちしております。


(※この物語は作者の妄想・パッション・ロマンにて世界観や魔導具が構築されております。

多少のご都合主義は、技術屋の愛嬌としてご理解いただけますと幸いです!)

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