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不憫な悪役令嬢は、ドリルで常識を穿つ!~国家一級魔導具師のお仕事トラブルコメディ~  作者: 雪見もち子


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第13.5話:魔道具と魔導具の違い~カトレアのお勉強会~

戦闘能力計測後、古代遺跡へ向かおうとした私たち。

けれど、予想外なことが起きた。


そう、『ボーラー様』の起動で初の暴走を起こした結果。全身が筋肉痛に襲われるという悲惨な結果を齎した。



「お嬢様、身体の痛みは大丈夫ですか?」


「カトレア……うぐっ、ま、まだちょっと背中周りや腕がパンパンですわ…」


私たちはまだ街の近場にいるという事もあり、一度立て直しという選択をし、街の宿へと戻って来ていた。


(寝台の中で虫のように丸まる姿なんて、淑女として長々と見せたくないですもの!)


まだ調査に向かって数日だというのに、この旅の幸先に少し不安を覚える私。


「出発……結局遅らせてしまいましたわ」


そして、シーツを被ると私はカトレアに聞こえないように小さな溜息を溢した。


「いいえ、お嬢様。それは違いますわ。あくまでも私たちはお嬢様の護衛、そしてお嬢様に心地よく過ごして頂くために、私たち従者はおります。調査の遂行など二の次ですわ」


カトレアがそっと私の被るシーツの上から背を一度だけそっと撫でる。まるでシーツの皺を直しただけ、そう言いたげな小さな思いやり。


ちらりとシーツの隙間から私は顔を出すと、カトレアが穏やかな目で私を見守っていた。


「ありがとう、カトレア。……それにしても、『ボーラー様』の威力は予想外でしたわ」


「ええ、そうですね。いくら魔力の暴走だからと言えど、あれでは掘削用ドリルというよりも、まるで『魔導具』の武器のような……」


同意するようにカトレアが静かに一つ頷くが、何か違和感を覚えたらしく、言葉が途切れた。そして、カトレアが首を僅かに傾げた。


「どうかして?カトレア」


「そういえばお嬢様、以前から気になっていた事なのですが……。『魔道具』と『魔導具』。名前は似ていますが、その違いがいまいち理解しきれておりません。これを機会に一度改めてお聞きしても良いでしょうか……?」


「ええ、勿論よ。確かに専門外の方には少し分かりづらい分類ですわね。まずは順番を追って一度整理するのも良いわね」


私が快諾すれば、「お嬢様はなんと心お優しく、懐の深いお方……」と、カトレア節が始まりかけたので、私はそれを遮るように一度咳払いをした。


「簡単に言えば、魔道具は一般に流通する道具。魔導具は専門職向けに分類される道具ですわ」


説明を始めると、カトレアの顔つきが真面目なものに変わる。


「つまり……魔道具が便利な道具で、魔導具は危険な道具、と?」


「そこは少し違いますわ」


私は緩く首を振り、指を立てて訂正する。


「重要なのは危険性だけではありませんの。魔力制御の複雑さ、必要となる知識、使用者への制限。それらを総合して分類されますわ」


「分類……ですか」


カトレアはメモ帳とペンを、エプロンのポケットから取り出した。


「そうね、分類の前に先ずは国家資格である、魔導具師としての私の資格から話した方が良いかしら?」


「そうですね、お嬢様の資格から聞けばわかりやすいかもしれません」


一つ頷くと、カトレアが手元のメモ帳に文字を書き始める準備が整った。


「まず勘違いされやすいのですが、『魔導具師』というのは資格ですわ」


「私の資格、調香師と似たようなものですわね」


「ええ、そうね。そして、『魔道具』と『魔導具』は、完成した製品の分類なのです」


「つまり、資格と道具の名前は別のお話なのですね」


「その通りですわ」


私は頷く。


「国家一級魔導具師である私は、魔道具も魔導具も、どちらも制作できます」


カトレアが頷き返しながらメモを取る。


「一方で、魔道具師の資格では、魔導具を制作・販売することはできませんの」


間を置きながら、ゆっくりと説明を続けた。


「そして、完成したものが魔道具になるか、魔導具になるかは、用途や構造、扱うために必要な知識などで決まりますの」


「用途や構造、ですか……」


ペン先を止め、悩ましげにカトレアが一つ呟く。

彼女が理解しやすそうなものがないかと辺りを見渡す。視界に入ったそれらを指差し、口を開いた。


「例えば、この宿にある魔道ポットや魔道ランタン。これは誰でも扱える生活用品ですわ」


「ああ、なるほど。では、お嬢様が普段制作されているものは……」


「基本的には魔道具ですわね」


私は即答する。


「ただし、作るために必要な技術と、完成したものの分類は別ですわね」


「と、言うと?」


不思議そうに首を傾げるカトレアに、私は少し思案する。


「ピィちゃんシリーズも、一般流通させるには専門的な回路設計が必要だけれど、目的は生活や通信を助けるものですわ」


「ああ、お嬢様が初めて作った魔導具があのピィちゃんシリーズでしたね」


「ええ、そうよ。だから開発には魔導具師としての知識が必要でしたけれど、完成品としては魔道具に分類されますわ」


カトレアは納得したように数度頷き、メモを続けた。


「あれは試作品だったし、初めての魔導具作りだったものだから苦労したわね……」


私はつい数年前のことを思い出し呟く。


「お嬢様がまだ資格を得る前の、勉強を始めた頃でしたか」


「そうね。だから連日深夜まで工房に篭って、お母様たちに心配されたものですわ」


たった数年前。

けれど、懐かしむように二人して笑い合う。


「でも、とりもち君は魔道具なのですよね?」


「ええ」


「ですが、あれは十分武器のように見えましたが……」


「目的が違いますの」


私は静かに否定すると、カトレアが瞬く。


「包丁は料理道具ですが、人を傷付けることもできますでしょう? だからといって、剣にはなりませんわ」


そこで一息つき、私は続けた。


「目的が料理である限り、包丁は料理道具ですもの、道具は使い方次第ですわ」


神妙にカトレアが頷く。


「とりもち君は害獣や小型魔物の捕縛を目的とした道具。だから魔道具規格なのです」


「つまり、攻撃できるかどうかではなく、何を目的に作られたものか、ということですか?」


「それも一つですわ」


私は頷き、そして持論を告げた。


「道具は、作り手の意思によって存在理由が決まりますもの」


「そうですね。そして、使うものたちの意識の問題でもありますね」


そして、カトレアの視線が枕元に置かれたカメオに擬態する、『ボーラー様』へと向く。


「……あら?でも、『ボーラー様』は……」


私は苦々しい顔になる。


「……正直に言えば、あれほど規格外のものが工具扱いなのは納得出来ないのだけれど…あれはリトニア家に伝わる専門工具。魔導具ですもの」


私はため息を吐く。


「ただし、本来の用途は戦闘ではありません。掘削用の工具ですわ」


「ただの、掘削用の工具……」


「ええ。遺跡調査や土木作業のためのものですわ」


「ですが結果として……」


「……結果として、地面に巨大な穴を開けましたわね」


私は思わず視線を逸らした。


「あの威力は、歴代御当主様方の強い意志と情熱を感じましたわ……」


うっとりとしたカトレアの顔が視界に入る。


「出力が強ければ良いってものではありませんわ」


――ピキリ。


私の腕が筋肉痛の悲鳴を小さく上げた。

補足回です。

遅くなりましたが、魔導具と魔道具や、資格について説明不足感があったので差し込みです!


【活動報告 / 後書き用】

定期更新:水・金 18時


【※調査団のパトロンになりませんか?】

「面白い」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

ぜひブックマークや【星】での評価をお願いしますわ!


作者の魔力は、皆様の評価でチャージされます。

どうかエヴリンたちの物語を応援してください!


ご意見・ご感想も、ドリルを止めてお待ちしております。


※本作は作者の妄想・パッション・ロマンで構築されています。

多少のご都合主義は、技術屋の愛嬌としてご理解いただけますと幸いです。

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