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不憫な悪役令嬢は、ドリルで常識を穿つ!   作者: 雪見もち子


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第7話:オーバースペックな伝説の幕開け②

これにて一章の準備編がようやく終わります。




今日から新たな日々の幕が明ける。





歩きやすさを重視したこの焦茶のブーツで重厚な絨毯を踏む日は少し先になるだろう。



玄関の扉前で招集の合図にベルを鳴らし呼びかける。

そこにはーー



「準備はよろしくて? 皆さん」



白い半袖のブラウス(という作業着)に、薔薇色の袖なしの膝下丈のシンプルなクラシカルワンピースドレスを身に纏う。



スカートの上にはカトレア特性の、フリルで縁取られた『防汚・防刃・撥水』機能のついたエプロンドレスを身につける。



旅装束というよりは工房にいる時と何ら変わりのないスタイル(髪型のみ強制イメチェンしたが)



これから共に古代遺跡の調査へと向かう護衛メンバーを出迎える。



「――はい。お嬢様。本日の主菜メインは『爆破』、デザートには『制圧』をご用意しております」



黒い燕尾服をぴしりと着こなし、礼をする。

その立ち姿は紳士然とした完璧を体現した『爆弾魔』でもある『専属執事のクロード』

何処に隠し持っているのか分からないが、お手製の爆弾で敵を殲滅し、周囲を排除するサポーター。



因みに、私の開発した認識阻害の魔道具の眼鏡も、勿論かけているのだが、どこまで効果があるかは不明である。




「メインディッシュを爆弾で制圧するのはおやめなさい!貴方の爆弾で外敵よりも身内わたくしの懐が爆破されますわ!!」




(私が淑女としての品格を保つには、心が平穏を保てる間のみ。つまり、開発予算という私の財源もぜひ大事にしてほしいのだけれど…今は深く考えてはいけませんわね)



「ふふ、お嬢様。ご安心ください。私は兄様とは違い、この『毒香(新作)』と『扇子』、そしてこの『脚』一本で静かに殲滅いたしますわ」



「 静かに殲滅しても、貴女の使う毒の除染費用は安くありませんのよ!?……でも、ええ、頼りにしておりますわ、カトレア」



黒いロング丈のメイド服に身を包むのは『調香師である専属侍女のカトレア』。

手元に持つ香水ボトルにより噴出される甘い毒は扇子により散布されるも、甘い微笑みに見惚れた外敵をその隙に痺れ眠らせ、スカートに隠された健脚で殲滅することも可能である。



(基本的には私のお世話とサポーターである……筈なのですけれど……)



「サポーターにしてはちょっと戦力が高いと思いますけど……そこに突っ込むよりもまず、嬉々とした顔で手元に持つその、私の変な実録本(経典)を広めるのは、おやめなさいっ!」



「あら。うふふ‥…私ったらついうっかりしていましたわ」



私とはまるで違う、豊満な胸元にあるエプロンドレスの内ポケットにしまったようだ。隠す所はそこでいいのか。



ツッコミを入れれば更なるボケを返して来そうで、序盤から体力を非効率に使うべきではないと判断し、私は口を閉じた。



(新興宗教の押し売りという名の『甘い暴力』で、領土全土を洗脳しないよう今から祈るばかりだわ……っ!)



「サポーターではなく、私のような前衛の護衛騎士ならばお嬢様の活躍をさらに広めることは即日可能かと。

ええ、お嬢様の素晴らしい感性バグ技術力はかいりょくならば、

人類が到達していない、その奥地にもお嬢様の名を知らしめられるかと」



「どんなバグですの!?と、ともかく、遺跡の破壊については是非抑え気味にしてくださいましっ!今月の開発費用はもうカツカツですのよ……っ!」



覇者のオーラを放つ『最強騎士のレオン』は、いつも遠征時に着る深い黒革のロングジャケット姿だ。

装備である肩当てと手甲には、耐久性と軽量化の魔回路を施してある代物。



こうした魔回路を持つ魔導具に関しては、うちの使用人達にしか支給されることのない一品。



自衛のための必需品なのだし、王家には事前に通達済みだ。制約にも抵触はしないからこその装備品。



「貴方のその新調した武器……大剣の『無骨』が一体どんな破壊力を見せてくれるのか、胃痛の加速が止まりそうにありませんわ……」



「はははっ」と軽く笑い流すレオンをじっとりと睨みつけつつ、魔導回路を搭載してある大剣の『無骨』に視線を向ける。



背のジョイントに固定してあるので装備している当人の威圧感が更に増しているのは標準装備デフォルトだ。



「……出来ればその剣を抜くことがないことを祈っていますわ……」



「だが、この歩く災害であるレオンがこの調査団一の前衛だ。実力だけは認めるところはある。お嬢にとっては、戦闘面では誰よりも頼りになるだろ?」



『精巧なスナイパーのカイル』、彼はの炭黒のハイカラージャケットはいつも通りだ。

ジャケットの中には複雑なベルトやサスペンダーをちらりと覗かせ、更には複数のポーチが装備されている。

これで弾切れの心配もないだろう。



これらの装備品も勿論、我が家の魔回路は組み込んである。



「あら、珍しいですわね。今日はメカニカルグローブを、装着していますのね。それに、その首元のゴーグルって確か、魔導二輪用のゴーグルではなかったかしら?」



「ああ、奥様に護衛とは別に操縦士として指名されたからな。……本来ならこうして常に表で護衛に着くことはないんだが、契約も改めて組み直した。

……規律通りに行動する」



背丈はクロードよりやや低く、横幅もレオンのようには厚くないが、無駄なく鍛えた肉体は、全長1.2mのソリッド狙撃銃『アズライール』を背負うにも苦はないというように涼しげな顔つき。



それに彼は常日頃から心がけている信条である『規律ルール』を尊重するタイプだ。



(こうして見るとカイルが一番普通な気がしてきましたわ。なんというか、安定安心の王道感ありますわよね)



そして最後に、『魔力膨大な従僕のノア』はいつもと変わらず無表情で、右目にかけられたモノクルの奥のヘーゼルブルーは無機質ながらも凪いでいた。旅立ち前の緊張もないようである。



黒いベストに白い長袖のシャツ、そして黒い半ズボンから除く足は華奢で、身長も私より10cmほど低い、最年少の調査団員である。



焦茶の斜めがけバッグには、彼の武器であり私の盾である。私の身を守る為の護衛兼、お母様への報告係が主な仕事である。



空から伝書魔道鳩、私の青い鳥がノアの肩へと止まり、その足に括り付けられた手紙を確認した。



「……報告、魔導車の最終点検完了、定刻通りです」



かくして、「令嬢の旅路」には似つかわしくない物騒な面々が揃い踏みしていた。



「私の護衛、もとい、『リトニア調査団』のメンバーは全員揃いましたわね」



「そろそろ出発の時刻になります。……お嬢様、最終確認を」



「ええ、そうね、それじゃあいつもの『アレ』……行きますわよ」



そして、左手にはウエストポーチに入らなかった大切な道具の入った工具箱を手にし、最終確認に収納に便利なポケットの中を指差し確認する。



「レンチよし。軍手よし。ハンマーよし。そして……ドリル、よし!!」



「――さあ、『リトニア調査団』の爆走開始ですわ! 私たちの戦いはここからですわよ!いざ、伝説の始まりですわ!!」



言い放つと同時に、玄関の扉がカトレアとクロードにより開かれる。



後光差す朝日を浴びながら、私は高らかに声を上げ、これぞ悪役令嬢の嗜みと言わんばかりの、高飛車にして優雅な三段活用の笑いで締める。



「……あら。

なんだか、これで物語が完結してしまいそうな不吉なセリフを吐いた気がするけれど……まあ、深く気にしても仕方ありませんわね」



こうして、前日譚プロローグは最高に騒がしく幕を閉じ、私たちの爆走の旅が幕を開けたのである。




ーーーーーーー

ノアの観測記録(Log-007B)


【対象】: 玄関前にて「リトニア調査団」の完全武装・集結を確認。


【観測】: 爆弾、毒香、大剣、狙撃銃。……依然として、お嬢様のドリルが最大の「バグ(物理)」として異彩を放っています。


【補足】: 三段活用の高笑いを確認。お嬢様の羞恥心が「自暴自棄」という名の燃料に置換され、出力が12,000回転に到達した模様。



……爆走、開始。

【活動報告 / 後書き用】


次回より、水・金を固定で18時投稿になります。



【※調査団のパトロンになりませんか?】

「面白い」「続きが気になる!」と思ってくださった皆様、ぜひブックマークや【星】での評価をお願いしますわ!作者のモチベーションという名の魔力は、皆様の評価でチャージされます。どうかエヴリンたちの物語を応援してください!

ご意見・ご感想も、ドリルを止めてお待ちしております。



(※この物語は作者の妄想・パッション・ロマンにて世界観や魔導具が構築されております。多少のご都合主義は、技術屋の愛嬌としてご理解いただけますと幸いです!)

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