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不憫な悪役令嬢は、ドリルで常識を穿つ!~国家一級魔導具師のお仕事トラブルコメディ~  作者: 雪見もち子


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第1話:悪役令嬢は、淑女の嗜みにスパナを隠す①

(R8.4.16)新規エピを交えてのリメイクを行なっております。




淑女としての品格、技術者としての矜持。


それが私にはとても大切なものだった。


私はリトニア家子爵令嬢として恥ずかしくないよう、淑女教育もきちんと受けてきた。


世間の評価も、礼節に関してはそれなりに上手くやっているだろう。


そして、私には一つだけ特殊な肩書きがあった。


『国家一級魔導具師』。


それは、国家最高峰の資格所持者しか持ちえない称号。


それが私の存在証明であり、私自身の最大の誇りであった。



私の生まれたアリステリア共和国は、大陸の端に位置する小国。その中にあるこの機械仕掛けの街、「クロフト街」は我がリトニア家の領地であった。


晴天の空を、煙突から上がる白い煙が雲のように浮かぶ。


街のあちこちで、国防の要である『魔導具』が配置され、淡い光を放ち稼働していた。


魔術の存在するこの世界では、魔術を技術として扱う『魔導工学』が発展している。


そして、足元では生活基盤インフラを支える『魔道具』の配管が静かに駆動音を立てている。錆びた鉄パイプや歯車がギィギィと鳴る。


クロフト街ではこうした魔道具の開発が今日も盛んに行われている。


その技術力によって、アリステリア共和国は他国よりも発展していた。


(この国の生まれで誇らしい事ですわ。そして何より……ロマンが溢れていますもの!)


そして、私の生家であるリトニア家は、この国一番の魔道具専門の生産・開発工房を持つ技術者職人一家。


(ああっ、本当に私は恵まれていますわね!)


私は気分良く、そして堂々と胸を張り街中を歩いていく。


すると――。


――ゴーン、ゴーン……。


「……あら?」


鐘の音が街中に響く。


私は高く聳える時計塔――クロフト街の中心にある、共和国の技術を詰め込んだ巨大な「心臓シンボル」へと視線を上げた。


「もうこんな時間ですのね。……早く買い物を済ませないと、開発に遅れが出てしまいますわ!」


民家の立ち並ぶエリアを足早に歩きながら、私は目的のある商店街エリアにある店へと向かって行った。



商店街の一角。その中でも古びた商品が立ち並ぶ区画へ足を踏み入れる。


「お嬢! スパナ型の苺味飴、新作できたんだ。これもってけよ!」


「あら、このフォルムはとてもよく再現されていて可愛いですわね。実用品にも向くかしら? ありがとう。早速いただくわ」


ポケットの中にある愛用するスパナを服の上から撫でつつ、私は飴を受け取った。


「見て見てお嬢様! この煤汚れに特化した『超魔落ちさん』の素晴らしさ! 頑固な油汚れもこれで真っ白よ!」


「まあ、本当に見事ね。私もよく汚しますから『超魔落ちさん』にはお世話になっていますの。また買いに行かせますわね」


毎日飽きもせず魔道具開発に勤しむ私の作業着は、いつだって油や煤汚れの染みが出来ていた。


気さくに話しかける商人たちに、私は手を振り帰路を歩く。


幼き頃からこの街で育って来たからこそ、この街にいる人達は私に気さくに声をかけてくる。


(そう、会話ができるのは、古くから馴染みのあるこの街だけ)


この街から一歩外に出れば私への評価は一変し、『変わり者の子爵令嬢』。


そして『悪役令嬢』だと囁かれる存在となっていた。


――ガリッ。


商人の青年にもらった庶民的な味の飴を齧る音が口内に響く。


それと同時にふわりと鼻腔を擽るのは、口内の甘さではなく、香ばしく焼けた小麦の食欲唆る匂い。


私はふと足を止め、店の前で立ち止まった。


「こんな所にパン屋なんてありましたのね」


下町らしい、少し歪な形をした商品。普段食卓に上がる事のない、様々な商品に視線を向ける。


「美味しそうですわね……」


途端に私の意識は食に支配されかけた。だが、その前にガラスに反射する色──。


目の前のルビー色の瞳と視線がかち合った。


「……」


勝気に吊り上がった鋭い目元。


腰下まで届くシャンパンゴールドのツインテール。


愛らしい花より、棘を持つ薔薇が似合う容姿。


悪役令嬢そのものな顔つき。


「……こんな見た目だから、友達が居ないのかしらね。それとも、変わり者な技術者だから?」


独り言を呟く。だが返ってくるのは街並みの喧騒だけ。


店の中にいるのは、寄り添いながら商品を眺める若いカップル。同世代の友人同士の姿。


その外側には、魔道具の部品の入った買い物袋を持ち、ポツンと一人佇む私。


(……まるで、世界から置いていかれたみたいですわね)


肩を落としながら、私はそっと店の前から立ち去る。


わたしの本性は、ただの『魔道具』に夢中な変わり者。けれど、中身はその辺にいる普通の女の子と何ら変わりませんわ)


けれど、その時ふと浮かんだのは、幼い頃に起きた違和感と世間との認識のズレ。


(……ああ。あの頃はまだ子供らしい、淡い思いや期待がありましたわね)


――それは、今から十年前の記憶。


私の甘い口内が、ほろ苦く変わって行った。



―――――


観測日記:(Log-001A)


【対象】:エヴリン・リトニア(16歳)

    リトニア家子爵令嬢の三女 。

    『国家魔導具師一級』の称号所持者。


【状況】:領地巡回(という名のスパナ飴回収)中 。


【観測】:友人関係値……真空ゼロ


【警告】:十年前の記憶への侵入アクセスを開始。……記録します。


【活動報告 / 後書き用】

定期更新:水・金 18時


【※調査団のパトロンになりませんか?】

「面白い」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

ぜひブックマークや【星】での評価をお願いしますわ!


作者のモチベーションという名の魔力は、皆様の評価でチャージされます。

どうかエヴリンたちの物語を応援してください!


ご意見・ご感想も、ドリルを止めてお待ちしております。


※本作は作者の妄想・パッション・ロマンで構築されています。

多少のご都合主義は、技術屋の愛嬌としてご理解いただけますと幸いです。

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