閑話:王子の策略、あるいは兄の泣き言(王子視点)
3話を分割しました。こちらは閑話へ移動です。
エヴリン達が帰宅した後の王太子達の視点。
ーーパタン
重厚な扉が閉まった室内で、アルフレートがふっと仮面を外したように深い息を吐いた。
窮屈な正装の首元を緩め、背もたれへと重心を預ける。
「……行ったか」
「ふふ、お疲れ様でした、アルフレート様」
「ああ、やっぱりあの子は単純明快というか、何というか……」
「巷で流行の小説では、ああいう子は『チョロいん』と呼ばれるらしいですわよ」
アルフレートの口元が自然と緩み、柔らかな苦笑が漏れた。脳裏をよぎるのは、親友から送られてきた
「仕様書並みの分厚い手紙」の内容だ。
『うちの妹はまだ外の世界に出ようとしない』だの、『現場作業員には小さな親方と呼ばれている』だの。
極めつけは『俺の目が黒いうちは、変な男に嫁に出すのは許さん』という、妹思い(シスコン)の優しき心が暴走した筆跡――。
「……あいつもあいつだ。『工房に引もり、友人も出来なくて心配だ』と、あれだけの魔導具師が、手紙で泣き言を寄越してくるなんてね。
……だから、少しだけ“きっかけ”を用意してやったが――」
アルフレートは、わずかに肩をすくめた。
「……あの様子じゃ、きっと何も気づいていないだろうな」
「ふふ、アルフレート様。それを世間では『お節介』と呼びますのよ。
……ですが、あの子があのまま工房の中で開発に勤しむだけでは、心までは成長しませんものね。
いずれ毒蛇のような貴族に、その才能を食い物にされるのが関の山ですわ」
「そのための経験だ。古代遺跡なんて“餌”を置いておけば、あの子は自分から飛び込んでくる。
……結局のところ、ヴィンスも私も、彼女の技術を、予算や派閥なんて下らん理由で腐らせたくないだけなのだがな」
学生時代からあの鉄仮面は変わらず、今も表面上はその表情筋が鍛えられている様子はなかった。
しかし、久々に見た親友の顔は、思ったよりも元気そうであることに、アルフレートは密かに安堵していた。
その親友の面影を思い返すアルフレートの顔に、王族ではない「一人の青年」としての表情が浮かぶ。
フローラもまた、そんな彼に寄り添う一人の女性として、柔らかな微笑みを返した。
「……さあ、エヴリン様。私たちの可愛い技術者(妹分)さん。
国家予算という名の檻の中で、思う存分その翼を広げてご覧なさい」
慈愛に満ちた、だがどこか楽しげな彼女の言葉に、アルフレートは、何も言わずにその言葉を受け止めた。
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(※この物語は作者の妄想・パッション・ロマンにて世界観や魔導具が構築されております。多少のご都合主義は、技術屋の愛嬌としてご理解いただけますと幸いです!)




