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不憫な悪役令嬢は、ドリルで常識を穿つ! 〜国家一級魔導具師の技術チートコメディ〜【10万文字突破】  作者: 雪見もち子


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第3話:国家予算という名の甘い蜜①

3話長すぎたので分割しました。

内容は変更ありません。


(R8.4.17)


王宮の離れには春の訪れを告げる庭園。



優しい新緑の豊かな香りが漂う落ち着いた空間。どこか親しみを感じさせつつも高潔さを失わない、計算し尽くされた美がそこにはある。



穏やかながらに整えられた庭園に囲まれたゲストハウス。その中に、二人の若き指導者と、私たち一家の五人が揃っていた。



(久々に来ますけれど、やっぱり空気が違いますわね……)



ピリッと肌を刺すような気配と緊張感に、私は思わず固唾を飲む。



父に対面するようにソファに腰掛けているのが、次期国王たる王太子アルフレート殿下。



(「我が国の光」……今日も理想を詰めた、完璧な『仮面』を被っていますわね)



斬新な施策を成功させ、圧巻の実力で群衆の口を沈黙させた実力者。だが、口達者で悉く私たち一家を振り回す、無茶振り王子でもあった。



(あの仮面の裏では、一体何を考えているのか、私の理屈では到底計り知れないわ……)



その隣で、ピンクブロンドを靡かせる王太子妃フローラ様。



(公爵令嬢としての格の違いを感じる事はあっても、普通に話す分には、お淑やかなご令嬢、なのだけれど……)



内側では熾烈な饒舌を、外側からは冷徹な交渉を。そうして二人がまとめ上げる。公私共に隙のない存在、アステリア共和国での最強のカップル



事実、社交界では「内政のアルフレート」、「外政のフローラ」とまで謳われている。国内の古いしがらみを一掃した王太子と、そんな彼に寄り添うのが次期王太子妃。



(……そう考えるとあの王子には、確かにピッタリだわ)



そんな二人の対面には、「国家一級魔導具師」という肩書きを持つ子爵家である私たち。



(粗悪な魔石と、高品質な魔石……。私たちと比べようがない程の雲泥の差。……粗相は出来ませんわ)



――カチャリ。



アルフレート殿下が手にしたティーカップを受け皿に置いた。その音はまるで精密な時計の歯車が噛み合った、正常ただしさを示す音。



「……さて、リトニア卿、ヴィンセント、そして……エヴリン嬢。君達を呼んだのは他でもない。『国家一級魔導具師』としての、腕を見込んでのことだ」



殿下は、鋭い眼差しを私に向けた。



「君も知っているだろうが、旧世代では『出力信仰』が強く根付いていた。それを私が廃し、実力による資格制度を敷いた。……こうして魔力数値の多寡が、人間の価値を決める時代は終わりを告げた」



かつては出力7以上の『英雄級』が崇められ、出力4以下の『技師級』は無能と切り捨てられた忌まわしき古き制度かちかん。だが、今や魔力はただの「個人の適性」だ。



魔力回路システムを持たない私たちが、知恵と執念で『奇跡』を再現するために組み上げた外付けの代用品――それこそが、私の愛する魔導具。殿下は、それを国家の基盤に据えたのだわ)



「あの日、保守的な貴族共はこう言った。『魔力4の無能に何ができる』と。……それを黙らせたのは、君のような変人がもぎ取った一級の称号だ。私の『法律システム』を、君の『技術じょうねつ』が証明したのだよ」



(出たわね、王子の殺し文句! 恩を売りつつ、自分の正しさを補強するために、私を使い倒そうとするその傲慢さ……やっぱり、気に入らないですわ!!)



「……恐れ入りますわ、殿下。私が今こうして、平穏に……ええ、『平穏かつ平凡に』過ごせておりますのも、全ては殿下の、『合理的で冷徹な』改革のおかげですもの」



「皮肉が上手くなったな、エヴリン嬢」



腹腹黒王子の隣で、フローラ様が楽しそうに扇で口元を隠した。



しかし、彼女の瞳は、私のポケットから覗くスパナの光を確実に見抜いている。悪戯な色が浮かぶ瞳に、私は内心冷や汗を流していた。



「……さて、前置きはこの程度にして。……実は君たち一家に、『特命』があってね」



アルフレート殿下は組んだ指の上に顎を乗せ、楽しげに目を細めた。――いつもの無茶振り前の、典型的なポーズだ。



「目的地は、北の果て。不落の要塞のさらに深層……。君たちが『古代都市のシギル』と呼んでいる、あの周辺」



聞き覚えのある地名。王太子殿下は言葉を続けた。



「そこには失われた超古代技術の結晶。『古代魔導人形アーティファクト・ドール』の部品が眠っている”らしい”という、不確定ながら有力者による情報が入った」



古代魔導人形アーティファクト・ドール』。その名を聞いた父が眉をひそめて繰り返した。



「殿下、失礼ながら……。シギルは我が国でも幾度となく調査隊を派遣した場所です。空振りの代名詞のような石の廃墟。歴代の専門家が見逃したものを、我々に見つけろとおっしゃるのですか?」



「その通りだ、リトニア卿。……専門家は教科書通りのものしか探さないからね。だが、陛下が仰るには――君達のご先祖様が『正体不明の金属塊』を拾っていたそうじゃないか」



父と殿下の交わされる応対。私は怪訝に思いながら、静かに待つ。



「今は先代夫妻が『手頃な漬物石』として重宝しているソレのことだよ」



その瞬間、



ーーブツン。



私の思考は現実から強制遮断ログアウトした。



(……待って。今、殿下の口からとんでもない、冒涜ぼうげんが、聞こえてきませんでしたこと!?)



脳内では、殿下の言葉から導き出された最悪の光景が鮮明に再生される。



実家の地下倉庫、薄暗い隅っこで、あろうことかその『伝説の遺物』を、何かの樽をねじ伏せる重しにしている姿が。



(おじい様……! 貴重なオーパーツを『漬物石』に使っていらっしゃいましたの!?いくらなんでも用途が違いすぎますわっ!!)



表情筋が限界を迎え、口端がピクピクと吊り上がる。



ショックと興奮で想定外の現実に私は酷く混乱していた。



ーーーーーーーー


ノアの観測記録:(Log-003A)


【観測】: 王太子の「特命」により、実家の地下に眠る「漬物石」が超古代の遺物であると発覚。


【分析】: 歴史的オーパーツを樽の重石にしていた先代への批判と、技術者の興奮が脳内でショート(短絡)。


【結果】: 淑女としての仮面が剥がれかけ、思考回路が現実から強制遮断ログアウト


……本日も安定のオーバークロックを記録。観測を継続します。


【活動報告 / 後書き用】

定期更新日は水・金の18時です。



【※調査団のパトロンになりませんか?】

「面白い」「続きが気になる!」と思ってくださった皆様、ぜひブックマークや【星】での評価をお願いしますわ!作者のモチベーションという名の魔力は、皆様の評価でチャージされます。どうかエヴリンたちの物語を応援してください!

ご意見・ご感想も、ドリルを止めてお待ちしております。


(※この物語は作者の妄想・パッション・ロマンにて世界観や魔導具が構築されております。多少のご都合主義は、技術屋の愛嬌としてご理解いただけますと幸いです!)

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