空っぽの花
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檻の中には、花がなかった。
正確には、檻という名前ではない。
保全拘束室。
そう呼ばれている。
安全で、清潔で、必要な管理が行き届いた部屋。
寝台。
薄い毛布。
水差し。
机。
椅子。
高い位置にある細い窓。
それだけ。
花瓶もない。
香もない。
ティーカップもない。
髪を整える櫛もない。
それなのに、マーリンは胸が悪かった。
香りがない場所で、香りに酔うはずがない。
そう思うのに、水差しの金属の匂いだけで喉が反応する。
口元を押さえる。
吐くほどではない。
ただ、身体の奥が静かに拒んでいる。
医師は、魔力消耗と精神的負荷の影響だと言った。
そういうことになっている。
そういうことにしておけば、誰も困らない。
マーリンは寝台の端に座り、手首の制限具を見た。
細い輪。
冷たい輪。
リュールへ伸びようとする糸が、薄い壁に阻まれているようだった。
完全に消えたわけではない。
けれど遠い。
とても遠い。
リュールも。
ミハイルも。
ステラも。
クリスチーナも。
全部、扉の向こう側にある。
「クリス」
呼んでみる。
返事はない。
当然だ。
それでも呼んでしまう。
髪が乱れている。
襟元も少しずれている。
寝台の毛布も、端が落ちかけている。
小さな乱れが、部屋の中にいくつも残っている。
けれど、誰もそれを整えない。
誰も気づかない。
気づいたとしても、記録にはならない。
マーリンは毛布の端をつまみ、膝の上へ引いた。
肩までは届かない。
少し寒い。
寒いと伝える相手もいない。
だから、寒さはただの室温になった。
扉の外で、足音が止まった。
鍵の音。
小さな音。
人を閉じ込める音は、いつも思ったより小さい。
「マーリン=ロイス。聴取を行います」
嬢はつかない。
ロイス家の令嬢でもない。
帝国の希望でもない。
ただの名前。
記録のための名前。
マーリンは立ち上がった。
少しだけ視界が揺れる。
壁に手をつきかけて、やめる。
「歩けますか」
職員が尋ねる。
「大丈夫です」
答える。
すぐに端末へ入力される。
《本人申告:歩行可能》
大丈夫は、こうして記録になる。
嘘ではなく、状態になる。
そのことに、マーリンはもう驚かなかった。
取り調べ室は、拘束室よりもさらに白かった。
机が一つ。
椅子が二つ。
壁に固定された記録端末。
水はない。
花もない。
余計なものがない。
余計なものは、人を人に戻すからだろうか。
マーリンは椅子に座る。
手首の制限具が机の端に触れ、小さく鳴った。
向かいに座る者の名は告げられなかった。
軍の者と、NewEra安全管理部門の者。
それだけで十分だという顔をしている。
「NewEra中核資料およびリュール運用関連データの敵性通信帯への流出について確認します」
NewEra安全管理部門の職員が言う。
「マーリン=ロイス。貴女は、クロード=ロイスの端末からNewEra関連資料を閲覧しましたね」
「はい」
「閲覧には、ブライアン=カーチスライトも同席していましたね」
「はい」
「閲覧後、NewEra関連資料閲覧・接続管理責任確認書に署名しましたね」
「はい」
「この署名は、貴女本人のものですね」
書類が机に置かれる。
複製だった。
本物ではない。
本物はどこかへ行った。
けれど、筆跡は確かにマーリンのものだった。
美しい字。
丁寧な線。
完璧な公爵令嬢の署名。
逃げられないほど、きれいだった。
「私の署名です」
「では、閲覧確認者および一次管理責任者は貴女で間違いありませんね」
「書類上は、そうなるのだと思います」
「書類上ではなく、事実確認です」
「私は、その資料を外部へ移送しておりません」
職員は表情を変えない。
「質問に答えてください。一次管理責任者は貴女ですね」
マーリンは少しだけ黙る。
否定したい。
でも、紙がある。
署名がある。
責任者欄には、マーリン=ロイス。
「……はい」
記録端末の小さな光が点く。
ひとつ。
また、ひとつ。
言葉が保存されていく。
「王国側通信経路と推定される経路への接続が確認されています」
「私は、何もしておりません」
「接続に使用された権限は、閲覧責任者の管理範囲に紐づいています」
「私は、その権限を操作していません」
「証明できますか」
マーリンは答えられなかった。
証明。
どうやって。
檻の中にいる者が、檻の外で作られた記録をどうやって覆すのか。
「していないことを、どう証明すればよろしいのでしょう」
「質問しているのはこちらです」
白い部屋。
白い机。
白い紙。
正しい声。
マーリンは、小さく息を吸った。
喉が少し痛い。
「私は、NewEra中核資料も、リュール運用関連データも、王国側通信経路へ流しておりません」
「動機はありました」
NewEra安全管理部門の職員が別の紙を出す。
学園での発言記録。
ロイス公爵との面談記録。
ブライアンとの会話概要。
クロードの端末閲覧履歴。
ぜんぶ、並べられる。
人の言葉は、紙になると細くなる。
紙の上では、声の震えも、怖さも、迷いも消える。
「貴女はNewEraに疑念を示している」
「疑ったことと、情報を流すことは違います」
「クロード=ロイスの思想に影響を受けた可能性があります」
「お兄様は、戦争を止めようとしていました」
「NewEra計画に否定的だった」
「危うさを見ていたのだと思います」
「貴女も同じですか」
同じ。
その言葉が、胸に刺さる。
兄と同じなら、嬉しいはずだった。
兄は、マーリンをマーリンとして見てくれた人だった。
けれど、ここでは違う。
同じとは、容疑の線を引くための言葉だ。
「私は、知ろうとしただけです」
「NewEraへの反意はありましたか」
「反意ではありません」
「では何ですか」
マーリンは口を開き、閉じた。
怖かった。
そう言えば、感情的と書かれる。
疑問があった。
そう言えば、反意と書かれる。
分からなかった。
そう言えば、判断能力を疑われる。
言葉の出口が、どれも罠だった。
「答えられませんか」
「答えれば、別の意味にされる気がします」
職員のペンが止まる。
「それは、聴取への不信ですか」
マーリンは笑いそうになった。
笑ってはいけない。
笑えば、混乱と書かれるかもしれない。
泣いても同じ。
怒っても同じ。
ならば、何をすればよいのか。
「いいえ」
マーリンは答える。
「慎重に答えているだけです」
また、記録端末が光った。
拘束室へ戻されると、マーリンは寝台に座った。
食事が置かれている。
小さな皿。
固いパン。
薄いスープ。
匂いはほとんどない。
なのに、喉が受け付けない。
水だけを少し飲む。
金属の味がする。
本当に金属の味なのか、そう感じるだけなのかは分からない。
食事には手をつけなかった。
扉の小窓が開く。
「食事を取ってください」
「あとで」
「体調維持に必要です」
「はい」
返事だけは出る。
小窓が閉まる。
ここでは、食べたか食べていないかだけが残る。
なぜ食べられないのかは、記録の外へ落ちる。
マーリンは膝の上で手を重ねる。
爪の形が少し乱れていた。
手袋はない。
隠す相手もいない。
それでも、マーリンは手を丸めた。
見られたくない。
誰に。
分からない。
見られたくないものばかりが増えていく。
「ミーシャ」
声に出す。
返事はない。
「ステラ」
返事はない。
「クリス」
返事はない。
呼べる名前はあるのに、届く名前がない。
それが、一番広い。
檻は狭い。
でも、返事のない部屋は広い。
とても広い。
取り調べは重なっていく。
同じ問い。
少し違う順番。
少し違う声。
「王国側との接触は」
「ありません」
「戦場で王国機を見逃した記録があります」
「救難艇を守る任務でした」
「敵兵を逃がした」
「撃破が目的ではありませんでした」
「撃墜女王と呼ばれながら、敵に情をかけた」
「人を殺したかったわけではありません」
その答えに、職員が顔を上げる。
「つまり、敵国兵への同情があった」
違う。
違うのに。
言葉が、また別の形を取る。
「戦争が嫌いなだけです」
「帝国軍人として不適切な感情ですね」
「私は軍人では」
言いかけて、止まる。
リュールに乗った。
命令を受けた。
戦った。
撃墜した。
撃沈した。
軍人ではないと言えるのか。
令嬢だと言えば逃げに見える。
軍人だと言えば責任になる。
操縦者だと言えば、リュールのデータに結びつく。
どの名前も、マーリンを助けない。
「続けてください」
「……ありません」
「何がありませんか」
「訂正します。今の発言は取り消します」
「記録は残ります」
そう。
取り消しても、残る。
言ったものは残る。
言わなかったものも残る。
署名したものは、もっと残る。
マーリンは、口を閉じた。
「貴女は、自分が帝国に利用されていると感じていますか」
唐突に問われる。
父の言葉が戻る。
帝国の希望として使われた。
疑う象徴は害になる。
「……分かりません」
「分からない?」
「感じたことを言えば、感情的だと書かれるのでしょう」
「質問に答えてください」
「はい」
マーリンは微笑む。
身体に染みついた微笑み。
「私は、帝国のために必要な役割を果たしてきたつもりです」
模範解答だった。
自分でも分かる。
職員も分かったのだろう。
「つもり、ですか」
そこを拾われる。
「帝国への忠誠に揺らぎがある?」
「ありません」
「NewEraへの疑念は?」
「疑問はあります」
「疑問と疑念の違いは?」
マーリンは答えられない。
似ている。
違う。
でも、ここでは違いなど意味がない。
「言葉にするのが難しいです」
「判断が難しい状態ですか」
「違います」
「では、説明してください」
白い壁。
白い机。
白い紙。
マーリンは、その白さの中で、自分の言葉がどんどん薄くなっていくのを感じた。
説明すればするほど、意味が削られる。
削られて、整えられて、別の形になる。
まるで花びらを一枚ずつ外されていくようだった。
希望の花。
そんな名前をつけられたことがあった。
今は、その花びらが証拠品のように並べられている。
一枚ずつ。
これは疑念。
これは反意。
これは同情。
これは隠匿。
これは敵国流出の動機。
花は、ばらばらになると花ではない。
ただの破片だ。
「説明を」
職員が促す。
マーリンは、机の上の紙を見た。
紙は待っている。
マーリンが何を言っても、受け入れる顔をしている。
そして、別の意味に変える。
「……説明できません」
「理由は」
「私の言葉が、ここでは私のものではなくなるからです」
記録端末が光った。
また、ひとつ。
拘束室へ戻るたび、マーリンは少しずつ整わなくなった。
髪が崩れる。
襟が曲がる。
手袋はない。
爪も乾いている。
それでも、誰も直さない。
直す必要がないから。
容疑者の髪は、少し乱れていても問題ない。
保全拘束対象者の襟は、曲がっていても記録に影響しない。
マーリンは、鏡のない部屋で自分の姿を想像する。
きっと、ひどい顔をしている。
いいえ。
もしかすると、まだ綺麗に見えるのかもしれない。
それが怖い。
崩れているのに、崩れていないように見える。
泣いていないから。
叫んでいないから。
歩けるから。
答えられるから。
大丈夫と口にしてしまうから。
外側だけは、まだ役に立つ。
中身が空になっていても、外側は使える。
それが、帝国にはちょうどよいのかもしれなかった。
扉の小窓が開く。
「ブライアン様から連絡は」
マーリンは尋ねる。
「回答できません」
「アリソンは」
「回答できません」
「お父様は」
「回答できません」
全部、同じ。
回答できません。
それは、何もないという答えより、少しだけ残酷だった。
どこかに答えがある。
けれど、マーリンには渡されない。
「そうですか」
マーリンは頷く。
頷ける。
まだ、頷けてしまう。
そのことが、少しずつ自分を遠くする。
取り調べ室へ連れて行かれる途中、廊下の壁に帝国軍広報の表示が流れていた。
たまたまだったのか。
わざとだったのか。
分からない。
そこに、リュールの映像があった。
白い機体。
Nep-001Pt Lueur。
かつて、マーリンの糸に反応した子。
白いスラスターを引き、戦場を裂く姿。
だが、表示された文字は違っていた。
《帝国試作機リュール》
《NewEra戦術統合試験成果》
《有人機運用から次世代自律戦術へ》
マーリンの名前はなかった。
撃墜女王の名もない。
ただ、リュールだけがいた。
美しい兵器として。
帝国の成果として。
マーリンは立ち止まりかけた。
軍人が促す。
「進んでください」
「……はい」
リュール。
あの子は、マーリンが乗らなければ動かなかった。
少なくとも、あの時は。
けれど、映像の中では違う。
リュールは最初から帝国の成果だったように映っている。
マーリンの震えも、吐き気も、魔力切れも、ステラの声も、何も映らない。
戦果だけが残る。
戦果は、持ち主を変えられる。
痛みは、持ち主を変えられないのに。
それだけは、ずっとマーリンの中に残る。
ずるい。
そう思った。
子どもみたいな感想だった。
でも、本当にそう思った。
ずるい。
ひどい。
返して。
そのどれも、声にはならなかった。
取り調べが終わる頃には、マーリンは何を聞かれているのか、時々遠く感じるようになった。
眠れていない。
食べられていない。
水の味だけが、口に残る。
椅子に座っているだけで、背中が痛い。
けれど、医師の確認では支障なし。
本人申告、異常なし。
大丈夫と言ったから。
自分で。
自分の口で。
「マーリン=ロイス」
呼ばれる。
「はい」
「貴女は、自分がフルール・デスポワールと呼ばれていたことを認識していますか」
その問いだけ、少し違っていた。
マーリンは瞬きをする。
「はい」
「帝国の希望として扱われていた」
「そう呼ばれていました」
「撃墜女王とも呼ばれた」
「王国側の呼び名です」
「帝国内でも使用されています」
「そうですか」
他人事のような声になった。
自分のことなのに。
「希望の花。撃墜女王。ロイス家令嬢。リュール操縦者。カーチスライト家婚約者」
職員は、一つずつ並べる。
「貴女は、その立場を利用してNewEra中核資料へ接近したのではありませんか」
違う。
違うはずだった。
クロードの部屋へ行ったのは、兄を知りたかったから。
NewEraを見たのは、何が自分を囲んでいるのか知りたかったから。
けれど、そう言えばまた感情になる。
兄への執着。
婚約者への不信。
父への反抗。
帝国への疑念。
どれも、容疑の材料になる。
「違います」
「では、何のために?」
何のため。
マーリンは、答えを探す。
守りたかった。
知りたかった。
間違えたくなかった。
人を消す正しさが怖かった。
ステラを失った戦場で、自分も間違えたから。
ミハイルを失ってから、正しさの形が分からなくなったから。
クロードの言葉が、唯一の灯りのように見えたから。
多すぎる。
多すぎて、言葉にならない。
「答えられません」
職員が記録する。
答えられない。
それも、ひとつの答えになる。
「では確認します。貴女は現在、自分を何者だと認識していますか」
質問の意味が、すぐには届かなかった。
何者。
マーリンは、机の上を見る。
白い紙。
そこに、いくつもの名前が並んでいる。
フルール・デスポワール。
撃墜女王。
ロイス家令嬢。
リュール操縦者。
婚約者。
容疑者。
どれも、誰かがつけた名前だった。
どれも、マーリンを使うための名前だった。
希望として使うため。
戦果として使うため。
家として使うため。
兵器として使うため。
婚姻として使うため。
罪として使うため。
では、マーリンは。
ミハイルが呼んだマーリンは。
クリスチーナが守ろうとしたお嬢様は。
ステラが呼んだマーリン様は。
どこに行ったのか。
「分かりません」
声が出た。
小さく。
正しい令嬢の声ではなかった。
撃墜女王の声でもなかった。
ただ、疲れた少女の声だった。
「分からない?」
「はい」
「混乱していますか」
その言葉に、マーリンは笑った。
今度は、止められなかった。
小さな笑い。
すぐに消える笑い。
「そう書きたいのですね」
職員の表情が動く。
マーリンは、もう微笑まなかった。
「私は、希望の花ではありません」
言うと、胸の奥が少しだけ空いた。
痛いほど空いた。
「撃墜女王でもありません」
手首の制限具が冷たい。
「ロイス家の器でも、NewEraの証拠でも、婚約の駒でもありません」
言葉が続く。
止める人はいない。
「では、何ですか」
職員が問う。
マーリンは答えようとした。
マーリンです。
そう言えばいい。
たったそれだけ。
けれど、自分の口からは出なかった。
呼んでくれる人のいない名前は、こんなにも遠い。
「……何も」
声が落ちる。
「何も、残っていないわ」
部屋が静かになった。
記録端末の光だけが点く。
マーリンは、その光を見ていた。
ああ。
これも記録される。
何も残っていない。
それさえも、帝国の紙になる。
もう、どうでもよかった。
拘束室に戻ると、マーリンは寝台に座らなかった。
床に座った。
冷たい。
でも、寝台より落ち着いた。
これ以上落ちる場所が少ないからかもしれない。
髪が頬にかかる。
払おうとして、やめる。
乱れたままでいい。
襟も曲がったままでいい。
爪も割れたままでいい。
大丈夫と言わなくてもいい。
大丈夫ではないと言ってくれる人がいないなら、どちらでも同じだ。
水差しの横に、薄い影が落ちている。
高い窓から入る光だった。
花の形には見えない。
ただの線。
冷たい線。
マーリンは、それを見つめる。
帝国は、希望の花が好きだった。
咲いている間だけ。
戦果を落とす間だけ。
美しく笑う間だけ。
疑わない間だけ。
花が根を持ち、土を選び、陽の向きを疑い始めたら。
それはもう、花ではない。
管理すべきもの。
切り落とすべきもの。
枯れたことにすべきもの。
「空っぽね」
声に出した。
誰にも届かない声だった。
泣けなかった。
泣くには、まだ自分が自分でなければならない気がした。
怒れなかった。
怒るには、まだ守りたいものが近くになければならない気がした。
笑えなかった。
笑うには、少しだけ嘘をつく力が必要だった。
その力も、もう残っていない。
マーリンは膝を抱えた。
フルール・デスポワールは、もういない。
撃墜女王も、ここにはいない。
ロイス家の令嬢も、きっと別の部屋で書類の中にいる。
婚約者は手続きの向こうにいる。
リュールの操縦者は、制限具の向こうにいる。
残ったのは、名前を呼ばれても返事の仕方が分からない少女だけだった。
白い部屋の中で。
花のない檻の中で。
マーリンは、静かに折れた。
音はしなかった。
折れるものが、もう外には残っていなかったから。
それでも、帝国は折れた音を聞かない。
記録端末は、泣かなかった涙を拾わない。
白い壁は、膝を抱えた姿を意味に変えない。
ただ、次の聴取予定だけが決まる。
次の確認事項。
次の署名の効力。
次の所有権の整理。
次に奪われるもの。
リュール。
撃墜数。
戦果。
帝国の英雄として飾られていた、マーリンの外側。
空っぽになった花から、まだ使える花びらだけが選ばれていく。
白い部屋の外で。
正しい手順で。
誰の声も届かない場所で。
ここまでお読みいただき有り難うございました。
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