第二十八話 道化師の災難
まったく予想していなかった展開となりました。
留学へやってきた美男の王子様は、宮廷道化師に恋をしてしまったようです。
ライモ様はさっとダニエル様の後ろに隠れて、周囲に助けを求める視線を向けました。
「失礼、いきなり情熱的な想いをぶつけてしまいました。これが私の悪いところ……恋の衝動がおさえきれないのです」
ユーグリット王子は物憂げながら、視線はライモ様に釘付けです。
「お待ちしておりましたよ、ユーグリット王子。我がアステールへようこそ。ここでは気楽にお過ごしください」
アイラ女王が登場しました。
真っ赤なドレスに金の王冠、いつもより目元のお化粧が濃くて……怖いです、アイラ女王。先ほどのユーグリット王子からライモ様への告白を耳になさっていたとすれば、嫉妬深い女王様はお怒りなのでは?
「これはこれは、お出迎えありがとうございます、アイラ女王。馬車から街を楽しく拝見しました。ここは噂通りの素晴らしい国です!」
ユーグリット王子が大声で言って、女王に礼をしました。
「留学に来てくださって嬉しく思います。こちらは我が夫です、ユーグリット王子」
アイラ女王がダニエルさんの後ろにいるライモ様の手を引いて、肩を抱いて言いました。
「なんと!? ああ、白薔薇のライモ君に、私は片思いということですね……せめてお友達にはなりたいです。しかしなんとまぁ、美男美女のご夫婦でしょう」
ユーグリット王子が笑顔で拍手をしました。
「……友達ぐらいなら」
ぽつりとライモ様がつぶやき、アイラ女王がその顔をじろじろと見ました。
「…………少しの交流だけよ」
アイラ女王がライモ様に呟きました。
「さて、少しお休みになってから、城の案内をいたしましょう」
アイラ女王がユーグリット王子を客室へと導いていきました。
「びっくりしたぁ……なんだよ、白薔薇って。そりゃあ僕は男女ともにモテるけど、あんな圧の強い、癖のある告白は初めてだよ」
ユーグリット王子の姿が見えなくなってから、ライモ様が愚痴りました。
「…………王子が三回も破談したのは、相手があの情熱に耐えられなかったからじゃないか。まったく、よそから変人が来た。ミーナ、忙しくなりそうだな」
ダニエル様がため息をつきました。
「はい……悪い人ではないですけど、びっくりしますね」
「はーっははは、これも一興だろう! ユーグリット、面白い男だ!」
オー様が大きな声を発しながらやってきました。
「確かにライモは白薔薇のように美しい。ミーナ、ユーグリット王子の言葉を書き残してくれ!」
「は、はい……」
「や、やめてよ! 恥ずかしい。もうやだ、黒い服に着替える!」
走り出したライモ様に、ダニエルさんがついていきます。
次に客間に来たライモ様は、黒のシャツにズボンというとても地味な服装でしたが、ユーグリット王子は、
「白薔薇のライモ君、君は有名大学を卒業したらしいね! ご教授願いたい!」
と熱烈なアプローチをし、
「ライモは忙しいです」
と、アイラ女王に牽制されました。




