表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタルブレーカーズ  作者: 源三郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/51

第35章 封鎖軌道

澪標に灯りがともった直後、月の低軌道から砲弾が飛来します。


白い飛翔体が消えたあと、人類が最初に照準を向けたのは人類でした。

しかも相手の狙いは、帰還途中の烈火一号機です。


接近艦を率いるのは、ソコロワ少佐。名乗りを求める彼女に、加藤は名を返しません。


 最初の砲弾は、澪標(みおつくし)ではなく誘導灯を撃った。


 三つのうち、一つが消えた。


 伊藤(いとう)は船外作業中だった。破片が宇宙服の肩を叩き、体が船殻から浮く。命綱が張り、腰を乱暴に引いた。


『識別を送れ』


 接近艦から英語が届いた。機械音ではない。人間の声だった。


『当該施設は国際共同管理下に置かれる。武装を解除し、退去せよ』


 女の声だった。落ち着いていて、どこか疲れていた。


『暫定機構第二派遣隊、ソコロワ少佐。そちらも名乗ってほしい』


 加藤(かとう)は名乗らなかった。


 名乗れば、相手も人間になる。人間は、撃ちにくくなる。


「迎えに来るのが遅いくせに、土地だけは早いな」


 伊藤は切れた灯りへ予備線を繋いだ。


 月の低軌道に、小型艦が二隻いた。地上で残った打ち上げ能力を掻き集めた急造船だ。船腹には、ユニオンランスに参加した国の標章が並んでいる。


 あの頃は同じ敵を見ていた。


 敵が消えた途端、互いを見始めた。


 加藤は帰路へ乗り込んだ。弾薬は地上で使い切っている。右腕の鉄拳と、姿勢制御剤が半分。それだけだった。


奥山(おくやま)。怖いか」


『聞く必要あります?』


「確認だ」


『じゃあ、すごく怖いです。人間相手なのが、一番』


 奥山機が格納口に立った。逃げ道を塞ぐようにではない。いつでも中へ逃げ込める向きだった。


 接近艦から二発目が放たれた。


 加藤は噴かした。


 帰路の脚が船殻を蹴る。鉄の機体が砲弾の横へ飛び、腕で軌道を逸らした。爆発が近すぎて、外装板が剥がれた。


『正気か!』


 相手の声が裏返る。


「こっちは、その検査を何年も前に諦めてる」


 伊藤が直した灯りが、もう一度点いた。


 その光の先に、黒い粒が見えた。


 烈火(れっか)


 まだ遠い。だが、確かにこちらへ来ている。


 接近艦も気づいた。


 二隻の向きが同時に変わる。


 狙いは澪標から、烈火一号機へ移った。


 伊藤の声が低くなった。


『あれは、帰ってくる途中だ』


 加藤は帰路の拳を握った。


「途中のやつを撃つな」


 返事の代わりに、二隻の砲門が開いた。


お読みいただきありがとうございます。


第35章「封鎖軌道」でした。


かつて同じ敵を見ていた国々が、荻野博士の遺産を巡って砲門を開きます。


加藤がソコロワ少佐の名乗りを拒んだのは、相手を人間にしないためでした。名乗れば、撃ちにくくなる。この小さな拒絶が、最終話で返ってきます。


次章では地上へ戻り、黒い信号を読む少女・初が負ってきた傷と、荻野博士との関係を描きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
ブックマーク・評価・感想をいただけると、今後の執筆の大きな励みになります。

メタルブレーカーズ 目次へ戻る

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ