#2 反証者「アルケー・エンペイド」の保護に関する会話の記録
「もう飛び立ったヘリの中で聞いたところで仕方ない話だっていうのはわかってる。そのうえで聞くが、あんたは俺の味方と思っていいのか?」
もうボロボロになって汚れでかなり白みがかっているジーンズのズボンとフラスコの描かれた変わったTシャツを身に着け、その上に血のシミがいくつかついた白衣を羽織った少年、アルケー・エンペイドは正面に座っている先ほど自分を「ドミニオン兵」と呼ばれる男たちの追跡から守ってくれた人物に問いかけた。
「さっきしてやったことを忘れたのか?」
「恐らく俺は命を救われたんだろうな。でもあんたはあんたで俺があそこで拒否したり暴れたりすれば強制的に連れ去ろうって魂胆だったじゃねぇか。」
「・・・なんのことかな。僕は優しい正義の味方だよ、君の意見を尊重したさ。」
「じゃあなんでヘリの機銃は俺の方を向いてたんだ?」
「そこまで気づかれてたのか。君は若いのになかなか察しがいいんだね。まぁさっきも言ったけど我々は反証者の力を欲しててね、どうしたってパラドクシアに連れていく気ではいたよ。」
「「・・・・・」」
どんな技術を使っているのか、窓を見れば相当な速度で移動しているのがわかるのに全くといっていいほど揺れを感じない機内で少しの沈黙が続いた。
先に重装の人物が口を開いた。
「こういう探り合いの会話はカロリーを使う割に得られるものが少ないな。本題にさっさと入ろう。まず君は私が何者か気になっているんじゃないか?君の中での私は「自分を追い回す奴らから守ってくれたがこいつはこいつで自分を連れ去ろうって魂胆には変わりないし、信用できない」ってところだろう。さっきも言ったが私は君に力を貸してほしい立場にあるからいつまでも怪しいやつって思われるのは本意じゃないんだ。だから礼儀に則って自己紹介から始めることにしようか。」
そういうと重装の人物の付けたヘルメットの前面が開き、見たところ30代半ばぐらいの男が顔を出した。
「私の名前は天野顛真、科学武装王国パラドクシアの中でもアーカイヴという派閥に属している軍人だ。君にこの名刺を渡そう。」
(パラドクシア、、、研究所にいたころ何度も聞いた名前だ。研究者たちは世界に一つしかない永久機関の力で空を飛ぶ、世界中の科学者を集めて創られた決まった土地を持たない王国だと言っていたな。俺の居た『セコン・エターナ研究所』はパラドクシアに対抗するために新たな永久機関を作ることを目的として作られた研究機関だった。)
「名刺をくれるのはありがたいんだがこれは何語だ?俺はギリシャ語と英語しか話せないぞ。」
「そうか、君はホロコンタクトを付けていないんだったね。君用のホロコンタクトは後で作るとして今は話をスムーズに進めるためにもこの眼鏡型デバイスを装着してもらおうか。」
アルケーが渡された眼鏡をかけると、視線を向けた文字が自然と英語に翻訳された。
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世界修復機関-対内乱軍反証者保護第一部隊長
「天野顛真」
誕生日:永誕前31年1月1日
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「そうかこれは世界修復機関って読むわけだな。だがあんたの生まれが永誕前31年ってのはあり得ないだろ。今が永歴35年だからあんたは60代半ばってことになる。だがあんたは高めに見たって40代行くか行かないぐらいかの顔だぞ。」
「それだけパラドクシアの医療技術は進んでるってことさ。君を追っていたドミニオン兵の武器だって君の知ってるものだったことは一回もないだろう?それだけ圧倒的な科学力を持っているんだよ。」
「まてよ、やっぱりドミニオン兵とやらもあんたらパラドクシアの人間なんじゃねぇか!」
「む、余計なこと言ったかな。」
「その発言も含めてな。なんせあんたをふんじばって聞くこと聞く明確な理由ができた上に俺に一つ隠し事をしてたことがわかったんだからな。ここがあんたのヘリの中じゃなきゃ即刻はっ倒してるとこだ。」
「こわいねぇ。実際君にはそれができるかもしれないってことを含めて。まぁ君の聞くことってやつは大体僕があとで話そうと思ってることだろうからあとでゆっくり聞いてくれればいいよ、今は我々世界修復機関とドミニオンはパラドクシア内でも違う派閥で対立関係にあるってことだけ知っておいてくれればいいかな。それにパラドクシアの圧倒的な科学力をもってすれば地上の人間にすぎない君なんてすぐにとらえられてしまうだろう。今は僕のいうことを聞いてた方が君にも特になる。保証するよ。」
「チッ、技術マウントは勘弁だな・・・」
「さて、そろそろパラドクシアが見え始めてもいい頃合いだな君も実際にパラドクシアを眼にすればそれが理解できるだろう。」
舌打ちをしながらも言われた通り窓を覗き込んだアルケーの目に映ったのは、雲を割って空を進む「巨大な陸地の群れ」だった。
圧倒されるアルケーに顛真が言う。
「あれが空に浮かぶ巨大な技術船団、君が居場所を失った原因でありこれから君の居場所となる場所、科学武装王国パラドクシアだ。」
・・・・・
「着いたよ。ようこそパラドクシアへ。ちなみに空気の心配はしなくていい、ここの技術を使えば成層圏にだって地上同然の環境を作れる。エベレストよりちょっと高いぐらいの高さなんて地上と何の差もないさ。」
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