#1 未登録反証者の保護に関する報告
無機質な声が飛び、足音が崩れた夜明け前の街に響く。
「今度こそ奴を捕らえるぞ」
「王権に害をなす反証者なんて、この世にはいらねぇんだからな」
彼らの構えるライフルの銃口で青い火花がわずかに爆ぜる。
ところどころ破けた白衣に身を包んだ少年はその声を聴くと振り返らずに走り出した。
少年は白衣に滲んだ血の匂いに不快感を覚えながらも、初めてこの匂いを知った日のことを思い出す―――
「君の力は世界を変えうる力なんだ、逃げ延びて、そしてこの世界を変えてくれ」
バキッ
その音で少年は過去のこだまから現実へと引き戻された。暗くて足元はよく見えないが、枯れ木の枝を踏みつけてしまったようだ。
「いたぞ!」
いくつもの足音が近づいてくる。
「総員、発砲許可!」
青い火花がほとばしる銃口から放たれた電撃が空間を引き裂き、少年を撃ちぬこうとする。
だが少年が振り向いた瞬間、周囲の家の壁が少し削れ、熱を帯びた石が弾丸のように飛び電撃をかき消して男たちの持つライフルを2丁、正確に打ち抜いた。
少年は見えている敵が攻撃能力を失ったことを確認すると横の家の壁に向かって突撃する。
壁に衝突するかに見えた次の瞬間、少年は眼前の壁を階段の形に変化させながら駆け上っていく。
ライフルを失った2人の兵が素手でとらえようと少年を追うが少年が通り過ぎた後の階段はただの壁に戻り行く手を阻む。
少年は屋根に上るとリーダー格であろう男の顔を確認し、逆側の通路に飛び降りようとした。
だが・・・・
「二人無力化した程度で調子に乗るなよ!」
男がそう叫ぶと男の背後から現れた別の兵が二人、人のものとは思えない速度と跳躍力で少年が乗っている家の屋根の上に飛び乗り二発の電撃を放つ。
放たれた二発の電撃は一直線に迸り、少年の腕を貫いた。
「んぐっ」
少年は痛みでよろけ、屋根から落下した。
さらに悪いことに落下した先は袋小路、能力は落下の痛みと電撃の痺れで集中力がきれて使えない。
2人の兵は華麗な着地で少年の横に降り立つと
「ずいぶん長いこと逃げ回ってくれたな。あんたを捕らえられんから俺らはずいぶん大目玉を食らった。だがそれも今日までだ。」
そう告げて少年をに銃口を向ける。この至近距離で電撃を食らえば最低でも気絶はするだろう。奴らにつかまれば処刑は免れない。少年の脳裏に、走馬灯が流れる―――その時だった。
バラララララ―――。
空から風切り音が鳴り響き、少年と兵たちが強烈な光に照らされ兵に向かって数発の弾丸が放たれる。
兵はギリギリで弾丸を躱わしたが少年から離れることを余儀なくされた。
「そこのドミニオン兵ども!警告する!直ちに撤退せよ!警告する!直ちに撤退せよ!」
声が町に響き渡り、地面に埋まった弾丸からエネルギーの壁のようなものが少年を守るように上に向かって伸びる。
できた壁の上を見ると声の主であろう男が居た。
小型のヘリコプターから垂らされたロープ梯子には先ほどドミニオン兵と呼ばれていた男たちよりも数段頑丈そうな装備に身を包んだ男が掴まっている。
「アーカイヴの重装兵だ!俺らじゃかなわねぇ、逃げるぞ!」
走ってやってきたリーダーがそう言うと男たちは舌打ちをして駆け足で闇夜の中に逃げ去っていった。
梯子が地上10m近くまで下りると、重装の男は見た目にそぐわない華麗な着地を見せる。
「君が例の反証者だね、セコン・エターナ殲滅テロを逃げ延びた数少ない人間だと聞く
名札を確認してもいいかい?・・・『反証者 アルケー・エンペイド』目当ての人間で間違いないようだ。
私と一緒に来てくれないか。我々には反証者の力が必要なんだ。」
少年-アルケー・エンペイドは地上30mほどで停止しているヘリコプターを少しの間睨むと、すこし諦めたような声で答える。
「・・・わかった、あなたについていくよ。」
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