#3 アルケー・エンペイドの科学武装王国パラドクシア加入手続きの記録
「着いたよ。ようこそパラドクシアへ。ちなみに空気の心配はしなくていい、ここの技術を使えば成層圏にだって地上同然の環境を作れる。エベレストよりちょっと高いぐらいの高さなんて地上と何の差もないさ。」
ここにきてしまったからには今までの人生とは一つ区切りをつけないといけないだろうな・・・
今後を考えるためにも俺のことを整理しておくか。
俺の名前はアルケー・エンペイド、永歴20年4月1日生まれギリシャ出身、この世界に永久機関が生まれてから発生し始めたという「過去に否定された学説」や「パラドックス」の力を持つ人間、反証者って呼ばれてる人間だ。
そんな俺は9歳の頃から1年前までセコン・エターナ研究所っていうアメリカの研究所で学生兼研究材料として過ごしていた。
永久機関を生み出した男とその研究チームが科学技術の限界を求めて世界中から分野を問わず研究者を集めて作った無限のエネルギーで空に浮かぶ巨大な科学船団「パラドクシア」ってのがあってそこの予想以上の技術の発展を恐れた世界中のお偉いさんが対抗する永久機関を作るために作った研究機関だ。
今までの法則を超える力、永久機関を生み出すために同じく法則に反する力を持つ反証者の力を研究しようって話らしい。俺の両親は反証者に限り学費無料で生活を前面的に面倒をみて超高等な教育まで施してくれるって話を聞いて俺と一緒にそこに来た。
そこで俺ら一家は平穏に暮らしていた。様々な研究に協力して先生や研究員たちとも仲良くなって毎日が幸せだったんだ。
だが、そんな平穏は突然終わりを迎えた。空からやってきた兵隊は世界でもトップクラスの技術を誇るはずの研究所を簡単に制圧し、永久機関の研究に関わった多くの人間を殺していった。俺は面倒を見てくれていた先生が命と引き換えに逃がしてくれたおかげで生き延びることができたが、その日から毎日のように理解の及ばない技術を持つ兵隊たちに追われる逃亡生活を余儀なくされた。
その元凶、科学武装王国パラドクシアに今から俺は足を踏み入れるんだ。
「物思いにふけってるところ悪いけど!今日は予定が詰まってるからさっさと降りてくれないかなぁ!」
「今までの生活に区切りをつけるんだからちょっとぐらい心を整理したっていいだろ?それにあんたの予定が詰まってようが俺には知ったことじゃない。」
「私もそうだけど君も一緒にやる予定があるんだ。君の生体情報の登録とか君が今から入る教室の案内とか科学武装王国パラドクシアの現況の説明とかするのも私の仕事だからね。君個人の時間は君の部屋が決まってからいっぱいできるから引っ越し初日ぐらいテキパキ動いてくれるとありがたいね。」
・・・・・
『生体情報の登録を確認しました、これより「反証者、アルケー・エンペイド」を科学武装王国パラドクシアの一員として認め、王国の基本的な機能の仕様を許可します。』
そうスピーカーから声が響くと、何やら小さな袋を持ったドローンがやってきてアルケーにそれを渡して去っていった。
「生体情報の登録って生年月日と顔と指紋だけでいいのか?」
「それ以外の情報なんて君が偽ろうと思えばいくらでもできるだろ?私たちがもともと持っている情報と顔、指紋以外の情報はノイズにしかならないんだよ」
「そういうもんか。んでこの袋は何だ?」
「翻訳機とホロコンタクトだ。翻訳機は耳に装着することで回りの声を翻訳してくれる。ホロコンタクトは機能が多いからあとで説明書読むといい。
さっきとった君の生体情報をもとに作られているからつけても違和感はないはずだ。ここでは必需品だからなくしたらちょっと面倒なことになるし、くれぐれも気を付けるように。
まぁ一度つければ勝手に取れることはないし外す必要もないから基本なくさないと思うけどな。
はい鏡。とっととつけて次行くよ。」
「そんな急かすなよ。俺コンタクトなんて贅沢なもんつけるの久しぶりなんだから。」
・・・
「一応チェックね。この名刺の字は読める?」
「読めるが、それがどうしたんだ?」
「さっきヘリで付けてもらった眼鏡と大体は一緒だ。今はこのコンタクトを付けてる人間には文字が翻訳されて見えるから意思疎通は何語でもいいってことがわかってればいい。」
「便利だな。アメリカに住み始めた時はそこそこ苦労したもんでだいぶとありがたく感じるよ」
「そうだろう?天空の技術に感謝するんだな。」
アルケーはムッとした顔になった
「俺がその技術に追いかけられ続けて苦労してたって話を知った上でそれを言っているのか?便利な技術は利用するだけさせてもらうが恩人や家族を殺した奴らの技術に払う感謝なんてないね。」
「そうつんつんしないでくれよ。それにここで生きていくには技術への感謝ってのは重要な心得だ。我々のように技術に命を預ける軍人は特にね。」
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