百春無双⑩
「ブレード」
百春が錬成刃を作り直した。
枝刃もしっかり付けている。
それはステップする坊主頭に向けた意思表示。
来るなら来なさい。
今度もちゃんと対処してあげる。
「勝気な女だぜ」
そうボヤいて鶺鴒の尾を始めた。
すると――。
「~~♪」
リズムに合わせて少女がメロディを口ずさんだ。
余裕のポーズでも茶化してるわけでもない。
それは相対してる当人が一番よくわかっていた。
「……見せすぎたか」
何度も仕損じたことで学習機会を与えてしまったのだ。
リズムは盗まれてしまいタイミングを計られている。
ならば寸前でタイミングを外すのがセオリー。
しかしそれすらも対応してきそうに思える――この勤勉な特待生ならば。
「またフェイントかな?」
「わかったわかったよーくわかった。 お前エスパーだな」
「だーから顔に出てるんだって」
「文字でも書いてんのかよ」
「書いてあるよ。 ねえ冬一郎さん」
急に話を振られた冬一郎は「俺?」と自分を指した。
「ねえ教えてあげてよ。 この人にさ」
「いやー俺だって遠目からだし」
「けどわかるでしょ」
「まあ……ねぇ」
「言ってみろよ」
ロン毛が興味津々に口を挟んできた。
「テメッ、 俺の邪魔すんじゃ――」
「いいから黙ってろ」
坊主頭は舌打ちして引き下がった。
「えーゴホン。 では僭越ながらぼくの所見を申しますと……」
「前置きはいい。 早く言え」
「はいはい。 じゃあ言いますけどね、 キョロキョロしすぎ」
「ナニィ!」
声を荒げる坊主頭。
「それ無意識でやってるのかワザとか知りませんけどね。 仮に狙いを絞らせない目的があったとして、 感情を昂らせた時に一方向を見てますよ」
「ハァ?」
不躾がましい言動に半ギレするも困惑は隠せない。
「あと表情もね、 わかりやすい」
「……ンだとォ」
「俺はヤるぜ! 俺はヤるぜ! 俺はヤるぜ! って一々仕掛け時を教えてくれている。 いや、 ぼくは好きですよ顔に出るタイプ。 感情を表に出すのって血が通ってる人間だなーっと思いますもん。 機械知性相手じゃこうはいきませんからねぇ」
「テメーの身の上話はどうでもいい」
「そうですか」
冬一郎はふぅとため息をついた。
「ありがとねー冬一郎さん」
そう百春が言ったら「へぇへぇ」と気の抜けた返事がした。
「オイオイオイなんだコレ。 傑作だなあオイ!」
ロン毛は心底愉快そうに手を叩いた。
「笑ってんじゃねえ!」
苦々しく睨む坊主頭をゲラゲラ笑って更にまくし立てる。
「だってよォー。 オメーの弱点がここに居る連中はもちろん、 配信でネット中に公開されちまったんだぜー? 明日からモテモテじゃねーか」
「クッソ……足引っ張りやがって」
「やったねキヨコちゃん。 仲間が増えたよ」
煽られても黙殺する鴛海。
「ああ、 言い忘れたことが。 ちょっといいですかね」
冬一郎が控えめに手を上げた。
「まだあんのか爆笑モンがよ? イイぜ言ってみな」
すっかりゴキゲンなロン毛は尊大ぶってみせた。
「ええーでは。 とりあえず応急措置としてミラーレンズのゴーグルしてみましょうか。 視線を隠すだけでも大分違うかと」
「ちょオマ」
「それとしばらくはフォグコート着ましょう。 ボリュームネックをジッパーで閉じれば口元が隠せます。 これで表情も読み取り辛くなるかと」
「オイオイオイなにしてんだ。 折角の穴塞いでんじゃねーよ」
冬一郎は無視して話を続ける。
「けどあくまで応急措置ですからね。 首振りの癖だけはどうにもならない。 早めに矯正するのをお勧めしますよ」
「フン!」
坊主頭は何も言わずに一瞥をくれた。
冬一郎も言い終えたと百春に目配せした。
百春と坊主頭。
二人は面と向かって構え合う。
もう語るべきことは語り尽くした。
ここから先は槍で語る。
最終激突は近い。
お読みいただき、ありがとうございました。
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