↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/100

陸浦実武①

 背後から男が声をかけてきた。


 冬一郎にではない。


 鴛海へ向かって親し気に近づいてくる。


「おや、 珍しい。 君が講釈するなんて」


「……ハァ」


 だが、 当の本人は仏頂面となってソッポを向いてしまった。


 どうやら崩れかけてた心の壁がまた厚く復元されたらしい。


 男は苦笑いをして彼女から離れて、 冬一郎を挟むように並んで立った。


「やあ初めまして。 俺の名は――」


「知っていますよ。 有名人」


 横目で会釈をした男の挨拶を冬一郎は遮った。


「どこかで会いましたっけ。 それとも……」


「お察しのとおりです。 スカレポの視聴者なら常連の貴方を知らないはずがない。 それこそモグリでもない限りはね」


「ああ、 やっぱり」


「陸浦実武(むつうらさねたけ)さん。 お会いできて光栄です」


 冬一郎に会釈を返されて陸浦は困ったような顔をした。


「そんなに畏まらないでほしいな。 同じ一アカデミー生じゃないか」


「去年の公式槍術試合で全戦無敗の新人王。 そんな二年生に敬意を表すのは当然ですよ。 どの新入生だって同じように振る舞うと思います」


 陸浦は「弱ったなあ」と頭の後ろを掻いた。


 冬一郎も困らせるのは不本意なのでとある提案をしてみた。


「ではスカレポで通っているあっちの呼び方はどうでしょう」


「いいね。 それで頼むよ」


「わかりました。 ぼくの名前は藪影冬一郎と申します。 以後、 宜しくお願いします。 実武(みぶ)さん」


「ああ、 宜しく。 藪影くん」


「それと改めて宜しく。 鴛海さん」


「ふん……」


 さり気なく気遣ってみたが、 彼女には余計なお世話だったらしい。


 陸浦も「あらら」と残念そうに言った。


 それにしてもと冬一郎は二人の顔を見やる。


 陸浦実武。


 身長178センチ。 体重70キロ。


 これがスカレポで紹介されたフィジカルデータだ。


 しかし実際間近で見ると着痩せするタイプだとわかる。


 なにせ制服の下は鍛え抜かれた筋肉質の体つきなのだ。


 これがすこぶる女性視聴者に評判がいい。


 更に清潔感ある黒い短髪。


 甘いマスクと切れ長な目。


 そして丸眼鏡という追加アイテム。


 挙げ句、 最強の二文字に奢らず品行方正で文武両道。


 彼が出演するだけで配信の席競争率が格段に跳ね上がる。


 現代に甦った唯一無二のスーパースター。


 それが彼なのだ。


 なのに表情が冴えない。


 このまま腫れ物扱いするのもどうだろうか。


 そう思って冬一郎は踏み込んだ質問をしてみた。


「二人は顔見知りなんですね」


「まあ、 うん」


 やはり歯切れの悪い返事だ。


 二人には共通点があるのを冬一郎は知っていた。


 京浜三羽烏(けいひんさんばがらす)。


 カマタ再攻略における要となった三大流派の内の二派。


 それが陸浦流と鴛海流。


 お互いライバル関係ではあるのは間違いない。


 しかし助け合って切磋琢磨する関係だと聞いている。


 顔見知りなのは当然として、 険悪なのは個人同士の問題であろう。


 もしかしたら役割が増えたのかもしれない。


 冬一郎は顔を背けてる彼女に話しかけた。


「もしやと思ってたけど鴛海さんはあの鴛海流の人だったんだね」


「ふん」


 彼女は相変わらずの塩対応。


 でも返事をしてくれただけ良しとしよう。


 二人の素姓がわかれば話は早い。


 うってつけな共通の話題が目の前にあるのだから。


「ぼくは槍術に疎いんです。 できましたら陸浦流と鴛海流、 二つの流派からいろいろと学ばせてほしいのですが」


 返事をしなかった鴛海がぷいと横を向いたままでいる。


 そんな姿を見た彼らは目を合わせ苦笑するしかなかった。


お読みいただき、ありがとうございました。


読者を選ぶ物語だとは思いますが、もし気に入っていただけたなら「ブックマーク」と「↓の評価 ☆☆☆☆☆」をお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。