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双槍談義

「ちょっといい?」


 パッと右手を上げた百春は「提案がある」と言った。


「なんだよ」


「順番はわたしが決めていいでしょ」


「どーぞどーぞ」


 三人組はあっさりと了承した。


 どこか楽しんでいる様子すらある。


「まさか告白タイムが始まるなんてなあ」


「おいおい聞いてねえよー。 何て答えりゃいいんだ」


「もっとアピールしときゃよかったぜ」


 彼女はゲタゲタ笑う男の顔を順番に見やって一人を指差した。


「決めた。 撮影者のあなたは最後にしてあげる」


「フラれてやんの。 ケケケ」


「最初は……そこの手下その2!」


「なんだと!」


 馬鹿にした声で笑っていた坊主頭が怒りで真っ赤になった。


「クックック。 ご指名なんて羨ましいぜ手下その2」


 お返しとばかりに鼻ピアスが皮肉な顔つきをする。


「うるせ。 オレがその2ならオメーはその1だ」


「正解!」


「てんめぇ……」


 思いがけない百春の追い打ち。


 皮肉顔が青筋を立てて引き攣っていく。


「……いい気になってるのも今の内だぜ」


 そう言ってご指名の坊主頭は前に出ようとしだ。


 しかし肩を掴まれて止められる。


 さっきからコレだ。


 ずっと自分の思い通り(ペース)にならない。


 これ以上俺を腹立たせるな。


 邪魔だとばかりに腕を払いのけたら、 今度は自分自身が突き飛ばされた。


 小さな身体は尻もちをついてしまう。


「何しやがる!」


「俺にやらせろ」


 皮肉顔を更に険しくして鼻ピアスが前に出た。


「フザケんな! コノヤロ」


「あのニコニコしててスカしてるところが気に入らねえ。 だろ?」


「……ああ」


「だからよ。 ベストショット決めて配信を盛り上げてやる」


「ヘヘッ。 そりゃーいい」


 坊主頭の首に腕を廻したロン毛は楽し気だった。


 まるで悪だくみでも分かち合うかのように。


 おかげですっかり毒気が抜けてしまった。


 もう四の五の言う気分じゃない。


 たった一つだけむっつり顔は言った。


「ヘマすんじゃねーぞ」


「誰に言ってやがる」


 鼻ピアスは自信ありげに答えた。


 だが百春は即座に指摘する。


「あれ? その1さんは最後だよ」


「悪ィな。 さっきのはナシだ。 一番手は俺」


「ふーん。 まーいいけどね。 全員畳むし」


「言ってろ」


 余裕綽々な鼻ピアスはフォグコートを脱いだ。


 シャツの第一ボタンを外している。


 ネクタイをせず胸元を開けたまま。


 裾は出っ放し。


 ズボンを本来より下の位置に穿いている腰パン。


 どこまでも忠実に樹崩した制服姿。


 旧時代の情報が記録されたアーカイブでしか見たことない。


 さすがレアイベントだと百春は満足げにうなずいた。


 鼻ピアスは分解していたマジックスピアを組み立てていく。


 そして出来上がった得物を冬一郎は不思議そうに眺めた。


「俺が見てきたのよりだいぶ短いな」


 マジックスピアには性能面での等級を表す「グレード」がある。


 鼻ピアスのは一般的な二等級。


 スタンダードタイプ。


 それは特に問題ない。


 冬一郎が気になったのは形状イコール戦術を区別する「フォーム」だ。


 鼻ピアスが持つスピアは短い。


 とにかく短い。


 同じくらいの身長なので比較も容易だ。


 自分の持つ同タイプの直風より短い。


 そしてより短い百春のヒルマキタイプの更に下をいく。


 槍の利点であるリーチを捨ててるようなフォームだ。


 端を持った柄の長さが床までしかない。


 きっと八〇から一〇〇センチしか無いだろう。


「あれが近代槍術なのよ」


 鴛海が小声で言った。


「うーん……決めた。 冬一郎さん」


 百春がこちらに駆け寄ってきた。


「なんだ」


「冬一郎さんの貸して」


「……いいのか? 今日は直風だぞ」


「修理仕立てで悪いけどお願い」


「お前がいいなら構わないさ」


 二人はマジックスピアを交換した。


 直風には新たに百春をユーザー登録済み。


 特に問題なく遣えるはずである。


「……どういう風の吹き回しだ」


「グレードを合わせてあげるの」


 そう言って百春は機嫌よく中央へ戻っていった。


 「なるほどね」と納得した冬一郎の横で、 鴛海は眉をひそめた。


「ねえ。 彼女は大丈夫なの」


「ああ。 一言の言い訳も許さないらしい」


「それって」


「本気(マジ)で畳む気だ」


お読みいただき、ありがとうございました。


読者を選ぶ物語だとは思いますが、もし気に入っていただけたなら「ブックマーク」と「↓の評価 ☆☆☆☆☆」をお願いします。


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