ゲームルール
ロン毛が自前のソーサリングを取り出した。
生体電気を流して一枚のホログラムを立ち上げる。
こちらからは中身を読めないがカンペだろうなと百春は思った。
「ルールは試合方式。 一本勝負」
「三本じゃないの」
「三本もだなんてやだー。 エーリちゃんの欲しがりさん」
「体力もたないんじゃないのー」
またその他二人が話の腰を折ろうとしている。
連携に難ありどころかまるで息も合っていない。
これなら三人同時でも問題なかっただろう。
彼女は不満を込めて「ハイハイ」とあしらった。
案の定、 ロン毛もやり辛そうに「オイ」とぞんざいな一言を挟んだ。
「説明続けんぞ。 急所部位は面、 小手、 胴、 垂れ。 これらに攻撃が入れば一本。 その場で試合終了だ」
「おっけー」
「試合時間は特に決めなくていいだろ。 デスマッチ方式だ」
「おっけおっけー」
「……余裕あるな」
「せっかくなんだから楽しみたいじゃない」
「ヘヘヘヘヘ。 そうこなくっちゃ」
「けど出し物が尽きたら速攻で終わらすからね」
「なんだと」
凄む坊主頭をロン毛が制止した。
「言うねえエーリちゃん。 じゃ効果判定アリでいくかい?」
「なーにそれ」
「その他の部位も当ててヨシ。 会心命中二回で一本扱いだ」
「それだけでいいの」
「コノヤロ調子に――」
「待て! よーしノックダウン制も入れてやる。 突きに生体電気を乗せる雷突許可とテンカウントの導入。 KOアリアリでいくぞ」
「いーねいーね」
「よくねえ!」
再び腕を引っ張られるロン毛。
だが今度は坊主頭を振り解いた
「落ち着け」
「忘れたのかコイツの電気量をよ!」
「当たらなきゃどうということはネーヨ。 それに――」
「オレ達に一本はいらねえ」
ロン毛の意図を察した鼻ピアスがいやらしく嗤った。
「まだあるわ」
声の方に向くと脚を引き摺る鴛海がいた。
三人組の目が妖しく爛々と輝くのを冬一郎は見た。
瞳孔は開き血走っている。
まるで脳を快楽物質で漬け込んだみたいな。
そんな人間性の異様な変化を感じた。
「話の続き」
百春が両者の間に立った。
ロン毛は「まあいい」と言ってホログラムを読み上げた。
「最後に一つ。 床に書かれた白線、 一辺十メートルの正方形内がバトルフィールドだ。 場外に出たら一本。 即負けだから気をつけな」
「ねーキヨコちゃーん」
鼻ピアスがまた余計な一言。
鴛海をフォーカスに収めて撮影する。
「それだけでいいの」
百春はまた間に立った。
「なに」
「それだけでいいのね」
「顔に似合わず強気だねえ。 気に入ったぜ」
ロン毛の目玉が微かな妖光を放つ。
そんな視線を気にも留めず百春は振り返った。
「危ないから下がっててね」
「やめなさい。 そんなことしなくていいから」
「だーいじょぶ。 まっかせなさーい」
鴛海を見て。
その脚を見て。
百春はウィンクしてみせた。
「ようしアンケ締め切れ。 始めっぞ!」
ロン毛の号令で一気に場が盛り上がった。
まるでお披露目パレードの続きだ。
そういわんばかりな熱の入り様である。
あくまでこれは私闘だというのに。
野次馬達はどこまでもノリが良い。
「はぁ……まったくもう」
「楽しんでやがるなあ。 どいつもこいつも」
鴛海に肩を貸して冬一郎は白線の外に出た。
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